軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1071話 人外の戦いと挫けない心

そうして再び始まった、白銀の君と竜騎士五人&中位ドラゴン達の模擬戦。

三十分程続いた後、白銀の君達が他の全員を引き連れてライト達のもとに下りてきた。どうやら今日竜騎士&中位ドラゴン達の訓練はこれにて終了のようだ。

「よう、白銀、お疲れー」

「白銀さん、おかえりなさい!」

『レオニスにライト、いらっしゃい。挨拶が遅れてすみませんでしたね』

「いえいえ、今日は竜騎士さん達の特訓が最優先ですし!……あ、白銀さん、お疲れさまのエクスポをどうぞ!」

『まぁまぁ、ライトは気が利く子ですねぇ』

挨拶を交わした後、ライトはすぐにアイテムリュックからエクスポーションを何本も取り出し始めた。

そんなライトの気遣いに、白銀の君の顔も思わず綻ぶ。

ちなみに白銀の君の後ろでは、中位ドラゴン達が完全にへばって仰向けに倒れ込んでいる。そして息の上がった四頭がだらしなく開けたままの口に、レオニスが問答無用でエクスポーションを口の中に放り込んでいた。

白銀の君は前屈みになり、手のひらをライトの前の地面に置く。

その手のひらの上に、五十本のエクスポーションを出し終えたライトが白銀の君に声をかける。

「エクスポーションを五十本出しました、どうぞ召し上がれ!」

『ありがとう。ちょうど喉が乾いてきたところです』

ライトからエクスポーション五十本を受け取った白銀の君。

早速とばかりに、手のひらのエクスポーションの山をザラザラザラー……と口の中に放り込んだ。

パリン、バキン、モクモク、ゴッキュン…………竜族達がエクスポーションを噛み砕き飲み込む音が、そこかしこで響き渡り聞こえてくる。

『ああ、美味しかった……ひと心地つきました、ありがとう、ライト。これでもう一回は戦えます』

「どういたしまして!…………って、これからまだ戦うんですか?」

『もちろん。もう一人、稽古をつけてやらねばならない者がおりますからね』

ぷはー☆とばかりに満足気にエクスポーションを飲み干した白銀の君。

その回復効果を得たからか、まだもう一戦やると言うではないか。

今ここにいる者達の中で、白銀の君と存分にやり合えそうなのは唯一人。

白銀の君は後ろの方をクルッ!と振り返り、レオニスに声をかけた。

『レオニス、次は貴方の番ですよ』

「ン? 何だ、今日の訓練はもう終わりじゃねぇのか?」

『貴方もせっかくここに来たのだから、私と一戦手合わせしていくべきでしょう?』

「ンー、まぁなぁ……白銀が疲れてないってんなら受けてもいいが」

『ええ、全く問題ありません』

シレッとした顔でレオニスを誘う白銀の君。

竜の女王から直々のお誘いとあっては、レオニスも断る訳にはいかない。

早速レオニスは自身に各種強化魔法をかけながら、空間魔法陣を開いてアークエーテルをクイッ、と一気に飲み干した。

「……よし、待たせたな。じゃ、行くとするか」

『そうこなくてはね』

承諾の返事をするよりさっさと戦闘準備を整えるレオニスに、白銀の君も口の端を上げてニヤリ……と笑う。

普段は冷静沈着で、特にユグドラグスの前では非常にお淑やかな白銀の君。そんな彼女もやはり竜族だけあって、脳筋寄りの戦闘狂な一端が垣間見える。

そんなレオニス達に、ライトが慌てて声をかける。

「あッ、レオ兄ちゃん達、戦うならなるべくここから離れたところの上空でお願いね!休憩中のこっちにまで火や氷が降り注いだら困るから!」

「はいよー。ライトは皆とゆっくり休んでろよー」

「うん!レオ兄ちゃんも白銀さんも、どっちも頑張ってねー!」

ライトの懇願を了承しつつ、腕を上げて肩を回したり腰を左右に回して捻るレオニス。準備体操もバッチリである。

準備万端整えたレオニス。白銀の君が飛び立つのとほぼ同時に、双方無言のまま勢いよく飛び出していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

レオニスと白銀の君が飛び立っていってから、早三十分。

はるか遠い上空では、レオニスと白銀の君が未だに熱戦を繰り広げていた。

「白銀!そろそろ疲れてきてんじゃねぇかー!?」

『笑止!この程度で音を上げる私ではないわ!』

「ならもっと火力上げてもいいんだな!?」

『望むところ!私の承諾など得ずさっさと全力で来い!』

こんな会話が時折交わされているのだが、遠く離れた場所にいるライト達には届かない。

実際レオニス達が戦っている場所とライト達のいる場所は、距離にして1km以上離れている。

そこはもう野営地の範疇ではなく、そこからだいぶ離れた山地である。

だが、二者の激突ぶりは遠目にもよく見える。

時折発生する極太の炎の柱や豪雨のような雷、極大ビーム状の水流等々、尋常ではない応酬を見ながら中位ドラゴン達が呟く。

「ナァ……アイツ、何デマダ生キテンノ?」

「白銀ノ君モ、カナリ全力、出シテルヨナ?」

「アレ、 絶(ゼ) ッ 対(テ) ェーニ、人族ジャネェヨナ……」

「アア……白銀ノ君ト戦ッテ、スグニ潰サレナイ、コレダケデモ、十分奇跡ダトイウノニ……」

半ば茫然自失の中位ドラゴン達。ほげー……とした間抜けな顔で、全員空を見上げてレオニス達の戦いを眺めている。

全員口にこそ出さないが、皆心の中では『レオニスニ勝ツノハ、当分無理ソウダ……』と感じているようだ。

そしてそれは竜騎士達も同じようで、中位ドラゴン達同様はるか彼方にいるレオニス達の戦いをぼーっ……と見ている。

「いつ見ても、レオニス卿の戦いは凄まじいなぁ……」

「あれ、我々竜騎士団が全員総出でかかっても勝てないヤツですよねぇ……」

「毎回思うのだが……レオニス卿は、本当に我らと同じ人族なのか?」

「「「………………多分?」」」

白銀の君を単身で相手にしても引けを取らないレオニスに、竜騎士達は茫然を通り越してもはや『人族ではないのでは?』という、実に失敬な疑惑まで持ち上がっている。

しかし、そんな超絶不敬な会話をしていても、その横にいるライトが怒り出したり抗議をすることはない。

何故ならば、彼らがそう思うのも当然だよなー……とライトも思うからだ。

実際に彼の戦闘場面を見ていると、その実力が如何に桁違いであるかを嫌という程思い知る。

もちろん皆レオニスの金剛級冒険者という肩書を知っている。

だがそれは『百聞は一見に如かず』という諺通り、その実力を目の当たりにする前と後では受ける衝撃度が天地の差なのだ。

とはいえ、彼らも竜騎士。

竜騎士とは選ばれし者のみが就けるジョブであり、その力で人々を守る使命がある。

隣の芝生の青さを羨むばかりではいられない。

ディランは上空の戦いを見上げつつ、キッ!と強い眼差しで呟く。

「我々も、レオニス卿に負けてはおれんな」

「ですね!我らは我らで、集団で戦うというスタイルですし」

「そうそう。個の力も大事だが、集団の力は鍛えれば鍛える程に無限に広がるからな」

「一人より二人、二人より三人、五人、十人、ですね!」

竜騎士団団長であるディランの力強い言葉に、部下の竜騎士達も己を鼓舞するように応える。

自分以上に前向きな部下達の姿勢に、ディランも小さく微笑みながら頷いた。

「うむ。レオニス殿と我らでは、使う力も担う役割も違うからな。比べても仕方あるまい」

「我らは我らにしかできないことを極めましょう!」

「そのためには、このシュマルリ山脈での修行も継続していかなければなりませんね!」

「……よし、明日から薬草採取担当の人員を増やすか」

はるか高みにいる強者を前に、決して腐ることなく邁進する竜騎士達。

そんな彼らのポジティブな姿を見て、ライトは笑顔になりながら心の中では『頑張って!』と声援を送っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

それからしばらくして、レオニスと白銀の君がライト達のもとに戻ってきた。

両者ともかなり煤けて汚れた格好だが、その顔は実にスッキリとしている。双方全力で戦ったことによるストレス発散効果か。

「ただいまー」

「レオ兄ちゃん、白銀さん、おかえりなさーい!」

「あー、腹減った。時間もちょうどいいし、皆でおやつにするか」

「賛成ー!」

ライトは早速アイテムリュックから敷物を取り出し、様々なスイーツを次々と敷物の上に置いていく。

ちなみにレオニスは、ライトがおやつの準備をしている間に白銀の君に労いのエクスポーション五十本を与えていた。

『ンー……このエクスポーションというものは、何度食しても美味ですねぇ……』

「そりゃ良かった。……あ、そうだ、そういや白銀に一つ聞いておきたいことがあるんだが」

『ン? 何ですか?』

目を細めて美味しそうにエクスポーションを食べる白銀の君に、レオニスが別件の話を切り出す。

「俺達がこないだ行ったばかりの、冥界樹のランガのことなんだが」

『ああ、我が君の一番上の兄君ですね。ランガ様がどうかなさいましたか?』

「いや、ランガのところにはまだ神樹族用の転移門を作ってねぇよな?」

『ええ、近々お邪魔したいとは思っているのですが……如何せん、地底世界ということで私が出向けるかどうか分からず……』

レオニスが切り出した別件とは、冥界樹ユグドランガの近くに設置する転移門のことだった。

海樹を除く他の三ヶ所、天空樹ユグドラエル、大神樹ユグドラシア、神樹ユグドラツィは既に転移門を設置してある。

残るは冥界樹ユグドランガ一ヶ所。これをどうするか、レオニスは話し合っておきたかったのだ。

「そしたら、俺達といっしょにランガのところに行かないか? 俺達は既にランガのところを訪れたから、地底の地理に疎い白銀を案内してやることもできるし」

『本当ですか!?』

「ああ。それに、白銀もランガと話したいだろ?」

『それはもちろん!』

レオニスの言葉に、白銀の君は思わず食いつくようにズズイッ!と前に出る。

白銀の君から見た冥界樹ユグドランガは、敬愛して止まない 我が君(ユグドラグス) の兄。彼に会うのは白銀の君にとってもこの上ない光栄なことなのだ。

一も二もなく乗り気で答える白銀の君に、レオニスは笑いながら早速話を進める。

ライトが用意した敷物の前にどっかりと座り、各種スイーツをもっしゃもっしゃと食べながら今度はライトに話しかけた。

「そしたらライト、お前も行くか?」

「もちろん!」

「明日はどうだ?」

「あー、えーとねぇ、明日はラウルといっしょにセンチネルの町に行く約束をしてるから……明後日以降でもいい?」

「了解。じゃ、年内の明後日以降のどこかの日に、皆で行くか」

「ヤッター!」

ユグドランガのいる地底世界に、再び行けることになったのを大喜びするライト。

十二月の初日に訪れた地底世界。地の底にいるはずなのに、壁一面が星降るような光景に包まれていた素晴らしさは、ライトにとっても記憶に新しい。

しかも今度は白銀の君もともに行くとなれば、ライトが歓喜するのも当然である。

その後ライト達は、美味しいおやつに舌鼓を打ちながらのんびりとしたひと時を過ごしていた。