軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1068話 冬休み直前の昼下がり

皆で楽しいクリスマスイブを過ごした翌日。

クリスマス当日にして、ラグーン学園二学期最終日である。

前日に続き、今日も教室の子供達はウッキウキで待機している。冬休みは何をするか、どこに行くかなどの話で盛り上がる。

ちなみにイヴリンとジョゼは去年と同じく家で寝正月、ハリエットもまた父の故郷プロステスで年末年始を過ごすという。

一方リリィも、去年と同じく家業の宿屋の手伝いをすることはするのだが、一日中ではなくお昼の前後に少しだけ手伝えばいいことになったのだとか。

リリィが嬉しそうな顔でそうなった経緯を説明する。

「ラグナ神殿で倒れたばかりなんだから、そんなにたくさんお手伝いしなくてもいいって、パパもママも言ってくれたの」

「そうよねぇ。イグニスほど酷くはなかったけど、リリィちゃんだって私達と同じくラグナ神殿で気を失っちゃったもんねぇ」

「そそそ。だからね、無理しちゃダメだし、今年の冬休みは何もお手伝いしなくていいって言われたんだー」

「そうなんだー。でも、お昼のお手伝いだけはするの?」

不思議そうに尋ねたライトに、リリィが得意気に答える。

「うん。だってほら、うちの宿屋って人気だからさ、今年もたくさんのお客さんが来るの。てゆか、既にもう毎日満室だし」

「リリィちゃんのおうちの向日葵亭って、本当に人気高いもんねぇ」

「そそそ。だからね、お昼ご飯の時だけお手伝いする!って、私の方から言ったの。パパとママが働き過ぎで倒れちゃ困るもん!」

「リリィちゃんは、本当に偉いですわ」

いつものリリィなら、冬休みにお手伝いしなくていいとなったら飛び上がって喜びそうなものだ。

だが、宿屋を営む向日葵亭にとって年末年始は稼ぎ時であり、それこそ戦場にも等しい多忙さを極めるだろう。

もちろんリリィとてそれは知っていて、その上で自分の体調を気遣って優先してくれる父母の優しさが嬉しかったのだ。

父母を助けて家業を支えるリリィの健気な姿に、ハリエットが感動している。

友達に手放しで褒められたことに、リリィは照れ臭そうな顔で「そ、そうかな?」と呟いている。

ちなみに今回、ライトだけは冬休みの予定を聞かれなかった。

聞いたところで奇想天外な行き先しか出てこないことを、もうイヴリン達も十分に理解しているのだ。

そしてライトの方も、そんな級友達の気遣い?をありがたく思う。

その後担任のフレデリクが教室に入ってきて、終業式その他諸々を終えて解散となった。

ライト達も校舎前でそれぞれ手を大きく振りながら、それぞれ帰途に就く。

ライトもラグナロッツァの屋敷に帰り、ラウルと二人で昼ご飯を食べていた。

「ライトももう冬休みかー。ついこないだ、冬休みとか言ってマキシの里帰りに付き合った気がするのに。あれからもう一年経ったのか」

「だねー。去年の今頃は、家出して里を飛び出したマキシ君についていって、八咫烏の里に三人で行ってたよねー」

「てことは、シアちゃんと友達になって一年になるってことか。ホント、月日が経つのは早いもんだなぁ」

「ホントホント」

ライトが冬休みに入ったことで、話題は自然と去年の冬休みの振り返りになるライトとラウル。

今年は2年生で、サイサクス世界における二度目の冬休みだけど。去年の初めての冬休みは、すっごく忙しかったなぁ……とライトは内心で思い返す。

マキシの里帰りのために、八咫烏の里の最寄りの巌流滝まで翼竜籠に乗って出かけたり、ラグナ教プロステス支部調査のためにプロステスまででかけたり、他にもスライム飼育場見学したり、八咫烏の里のユグドラシアやその妹ユグドラツィと仲良くなったのも去年の冬休みの間のことだった。

今年はそこまで忙しくなるかどうかは定かではないが、またいろんな出会いがあればいいな、とライトは密かに思う。

ライトとラウルがそんな和やかな会話を交わしていると、ふとラウルの食事の手が止まった。

「ン?……ご主人様が帰ってきたな」

「レオ兄ちゃんが帰ってきたの? お昼ご飯を食べに帰ってきたのかな?」

「かもな。……ま、そうであってもなくてもそのうちこっちに来るだろ」

主人の帰宅を察知したにも拘わらず、出迎えに行くでもなくそのまま昼食を食べ続けるラウル。

相変わらず壮絶に緩い主従関係だが、ラウルだけでなくレオニスもそこら辺は全くキニシナイ!な性格なので、全然問題はない。

そしてラウルの言った通り、しばらくしてレオニスが食堂に入ってきた。

「あ、レオ兄ちゃん!おかえりー!」

「おう、ただいまー。ライトももうラグーン学園終わって帰ってきてたんか」

「うん。今日は二学期の終業式で、明日から冬休みだよー」

「そうか、冬休みの宿題は早めに済ませとけよー」

「もちろん!……てゆか、レオ兄ちゃんは今日のお仕事はもうないの? それともお昼ご飯食べに帰ってきただけ?」

食堂に入ってきたレオニス、ライトの横の席にドカッ!と座る。

ライトの向かい側にいたラウルが空間魔法陣を開き、レオニス用のハンバーガーとピザ、そしておしぼりを取り出してサッ!とレオニスの前に出す。

さすがは万能執事、急遽帰宅した主人の昼食を十秒もしないうちに出せる有能ぶりである。

迅速に出された昼食に、レオニスは「お、ありがとよ」といいつつおしぼりで手を拭きながらライトの質問に答える。

「昼飯食いに来たのもあるんだが、午後からシュマルリ山脈に行くんだ」

「ラグスさんや白銀さんに会いに行くの?」

「いンや、今日は竜騎士達の修行に付き合わされるっつーか……邪竜の島の討滅戦も間近だから、竜騎士達も最終仕上げに入っているらしいんだ」

「あー、そういえばそうだね」

レオニスの話に、ライトと頷きながら得心する。

レオニスが竜騎士達とともに参戦する、邪竜の島の討滅戦。決行日はまだ確定していないが、アクシーディア公国生誕祭のすぐ後という話にはなっている。

その上竜騎士達には、絶対に忘れてはならない重要な案件が他にも控えている。

それは『竜騎士達はアクシーディア公国生誕祭の飛行ショーも担当している』ということだ。

竜騎士団の飛行ショーは、公国生誕祭の目玉にして名物の催し物。竜騎士団の威光を国内外に知らしめるためにも、決して疎かにはできない。

当然飛行ショーの訓練もしなければならないし、そのせいで生誕祭直前までかなり忙しくなるから、討滅戦に向けた訓練も今のうちにガッツリこなしておこう!という訳である。

竜騎士団の修行と聞いては、ライトも黙ってはいられない。

ライトは身を乗り出しつつ、鼻息荒くレオニスに問いかけた。

「ねぇ、レオ兄ちゃん、ぼくも見学についていっていい!?」

「おう、いいぞ。つーか、ライトならそう言うと思って昼飯ついでに誘うつもりで帰ってきたんだ」

「ヤッター!ありがとう、レオ兄ちゃん!」

レオニスから快諾を得たライト、両手を上げて大喜びしている。

ライトが喜びそうなことを持ちかけてくれるレオニスに、ライトはただただ感謝しかない。

破顔するライトに、レオニスも微笑みながらライトに声をかける。

「そしたら俺が昼飯を食っているうちに、ライトは出かける支度をしてきな」

「うん!マントに着替えてアイテムリュックも持ってくるね!」

「慌てなくていいぞー」

「はーい!ラウル、ごちそうさまでした!」

「おう、ライトも気をつけてお出かけしてこいよー」

「はーい!」

ライトは食べ終えた食器を流しに運び、後をラウルに託す。

タタタッ!と軽やかな足取りで食堂を飛び出していくライトに、レオニスはピザを食べながら、ラウルは自分の食器を下ろしながら、それぞれに笑って見守っていた。