軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1067話 皆へのクリスマスプレゼント

ラグナロッツァ孤児院の引っ越しも無事終えた、翌月曜日。

この日は十二月二十四日。待ちに待ったクリスマスイブである。

ライトも級友達に買ったクリスマスプレゼントを持ち、いつもよりウキウキ気分でラグーン学園に登校している。

ラグーン学園に到着し、2年A組の教室に入るライト。

教室の中は、ライト同様ウキウキとした空気に包まれていた。

教室のそこかしこで、楽しげに会話をしているクラスメイト達。ところどころでプレゼント交換をしている様子も窺える。

勉学のため以外の物を教室に持ち込むのは、本来ならよろしくないことなのだが。余程大きくて邪魔になるようなものでなければ、プレゼント交換くらいはお目溢しで黙認されていた。

仲良し同士の子供達が、キャッキャウフフしている図というのは実に和やかで癒やされる。

ライトもほっこりしながら自分の席に向かうと、そこにはイヴリン、リリィ、ジョゼ、ハリエットがいた。

「あッ、ライト君!おっはよー!」

「おはおはー!」

「皆、おはよう!今日は皆早いね?」

「うん!だって今日はクリスマスイブだもん!」

「楽しみ過ぎて、いつもより早起きしちゃった!」

「「ねーーー♪」」

いつものように、ライトと朝の挨拶を交わすイヴリン達。

今日のライトは、いつもの登校時間より十分くらい早く到着したのだが。イヴリン達もそれを上回る早さで登校していたらしい。

女の子達の花咲くような笑顔に、如何に今日のクリスマスという日を心から楽しみにしていたかがよく分かる。

そんな彼女達に、ライトも早速応えるべく鞄からプレゼントを取り出した。

「ぼくからも、皆にプレゼントがあるんだー」

「え、ホント!?」

「ライト君、リリィ達にプレゼントくれるの!?」

「うん、皆にはいつも仲良くしてもらってるしね」

「ヤッター!」

ライトからプレゼントをもらえると知ったイヴリンとリリィ、飛び上がって喜んでいる。

ちなみにジョゼはニコニコ笑顔、ハリエットは「まぁ、私は皆さんに何も用意してませんのに……」と戸惑いつつも、頬を赤らめるあたり嬉しさが隠せないようだ。

ライトが一人一人にプレゼントを手渡していく。

「イヴリンちゃんにはこれ、リリィちゃんはこっち」

「「ありがとう!」」

「ジョゼ君にはこれ、ハリエットさんはこれね!」

「ありがとう♪」

「ありがとうございます!」

ライトのプレゼントに、皆口々に礼を言う。

ちなみにプレゼントのラッピングの小袋の柄は全部違っていて、イヴリンは花柄、リリィはハート柄、ジョゼは星柄、ハリエットは桜柄。

ライトが特に細かく指定した訳ではないのだが、プレゼントを選んだ際に「これは男の子に」「他の三つは女の子に」とロレンツォに伝えたので、きっとロレンツォが気を利かせて柄選びもしてくれたのだろう。

「うわぁー、袋もとっても可愛い柄ね!」

「ねえねぇ、ライト君、開けて中を見てもいい?」

「もちろんいいよー」

ライトのプレゼントを受け取ったイヴリン達、ライトの許可を得て早速プレゼントを開け始めた。

可愛い小袋から出てきたのは、羽根飾りのペン。

ジョゼのものだけが真っ白の羽根で、女子三人には淡い桜色の羽根。その淡い桜色もそれぞれ色合いが違っていて、ほんのりとしたグラデーションが可愛らしい逸品揃いだ。

「うわぁ……こんな綺麗な羽根ペン、見たことない……」

「リリィも初めて!」

「僕のだけ真っ白なんだね……うん、すっごく格好いいね!」

「本当に素晴らしい羽根ペンですね……ライトさん、これ、すごくお高いのでは……?」

イヴリン達がうっとりと羽根ペンに見入る中、ハリエットだけが心配そうにライトに問いかける。

ライトがプレゼントした羽根飾りのペンは、由緒正しいウォーベック伯爵家の令嬢であるハリエットの目から見てもかなり価値の高いものに映るらしい。

心配そうに尋ねるハリエットに、ライトは慌てながら答える。

「え、そんなことないよ? ハリエットさん、これはそんな高いものじゃないから心配しないで?」

「でも……これ程の品なら、貴族御用達になっていてもおかしくないと思うのですが……」

「そ、そうなの? そこら辺はぼくもよく分かんないし、一個200Gのお手頃価格だったから皆に買ってきたんだけど……」

「え!? これが200Gですか!?」

羽根飾りのペンの値段を聞いたハリエットの顔が驚愕に染まる。

ハリエットの見立てでは、一個1000Gは下らない、と考えていたのに、その半分どころか五分の一だとは夢にも思わなかったのだ。

思いがけない答えに、ハリエットがズイッ!とライトに迫りながらさらに尋ねる。

「ライトさん、この品をどこでお買い求めになられたのですか!?」

「え? えーとね、ツェリザークにあるルティエンス商会って名前のお店だよ」

「ツェリザークですか……ツェリザークはお父様の故郷プロステスの姉妹都市ですし、いつか行けると思います。その時には是非とも立ち寄ることにしますわ!」

「……え? ハリエットさん、ルティエンス商会に行きたいの?」

「ええ!こんなに素晴らしい品を、そのような破格の値段で売っているお店ならば、是非とも私も一度訪ねてみたいですわ!」

自分もルティエンス商会に行きたい!と言い出したハリエットに、ライトは呆気にとられている。

確かにライトもルティエンス商会は大好きな店だし、品揃えの豊富さや面白さは他の追随を許さないオンリーワンだと思う。

だが、ハリエットのような女の子が喜ぶような店か?と問われれば、甚だ疑問を抱かざるを得ないのも事実。

特に壁一面を覆い尽くすお面の群れ、あれは正直に言ってホラー以外の何物でもない。

あれをハリエットさんが見たら、あまりの怖さに卒倒しちゃうんじゃね?とライトは内心で思う。

なので、さり気なく止めに入ることにした。

「ぁー、えーっとねぇ……ルティエンス商会って、面白い品がたくさんある雑貨屋さん、なんだけど……あまり女の子向きのお店じゃないかなー……」

「まぁ、そうなのですか?」

「うん……ぼくはもう慣れちゃったから全然平気なんだけど、それでも初めてお店に入った時はすんげー怖かった……」

「こ、怖いお店なんですか……?」

ゴニョゴニョと口篭るライトに、ハリエットもつられて怯えだす。

だがそれもほんの数秒のことで、ハリエットは頭を横にブンブン!と振りながら決意を新たにする。

「で、でも!そのお店は、ライトさんが何度もお買い物をしている、行きつけのお店なんですよね!?」

「う、うん。店主のロレンツォさんもすっごく良い人だし、うちのラウルもルティエンス商会でちょくちょく買い物してるよ」

「なら大丈夫です!ライトさんが信用するお店ならば、私も信用できます!」

「そ、そう? そう言ってもらえると、何だかぼくも嬉しいな……」

勇気を奮う健気なハリエットに、ライトは何だか嬉しくなってくる。

ライトが信頼する店ならば信頼できる、というハリエットの言葉。

それはライトという個人に絶大な信頼を寄せている、ということだ。

ここまで信用してもらえるなら、ハリエットの望みを叶えてやるのが 漢(おとこ) というもの。

ライトはパッ!と顔を上げてハリエットの目を見つめながら、彼女の手を握りしめる。

「……じゃあ、もしハリエットさんが将来ツェリザークに行く用事ができたら、その時はぼくがルティエンス商会に案内してあげるよ!」

「!!!!!」

ライトの思わぬ申し出に、ハリエットの顔はボフンッ!という爆発音が聞こえてきそうなくらいに赤く染まる。

その言葉はデートのお誘いにしか聞こえない上に、同時に手まで握られたら――― 初(うぶ) なハリエットが赤くなるのも致し方ない。

心臓が爆発しそうなくらいにバクバクと脈打つハリエット。呂律の回らない口で必死に取り繕う。

「……そそそその日がくるのを、たたた楽しみにして、いま、す、わ……」

「うん!いつかいっしょにルティエンス商会に行こうね!」

「……は、はいぃぃぃ……」

気丈に振る舞うハリエットに、ライトは悪気なく追討ちをかける。

もちろんライトには、デートのお誘いなどというつもりは微塵もない。ただ単に、自分の好きな店を案内してあげよう!という親切心である。

この朴念仁っぷりは誰に似たのだろう。やはり最も身近な存在であるレオニスとラウルの朴念仁オーラが移ったのか。

気恥ずかしさで声が消え入りそうなハリエットに、ニコニコ笑顔のライト。

ラグーン学園2年A組の教室は、今日も穏やかな時間が流れていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その日の夜の、ラグナロッツァの屋敷でのライト達。

クリスマスチキンにピザやパスタ、クリスマスケーキ等々、それはもうたくさんのクリスマス仕様の豪華な晩御飯を食べ終えた後、皆でのんびりと食後の珈琲やデザートなどを楽しんでいた。

そんな中で、口火を切ったのはマキシだった。

「僕、皆さんにクリスマスプレゼントを用意したんです!」

「お、俺達に何かくれるのか?」

「はい!気に入ってもらえるといいんですが……」

レオニスの問いかけに、マキシははにかみながら空間魔法陣を開く。

中から四つの小箱を取り出したマキシ。どれも微妙にサイズが違ってる。

マキシはレオニス、ラウル、ライトの順に一つづつ小箱を渡す。最後の一つはマキシの膝にいるフォル用らしい。

皆早速箱を開けて中身を取り出す。

ライトには紫色の海樹の枝を使ったカフスボタン、レオニスには緑色の海樹の枝を使ったタイピン。ラウルにはフォルを模したフェルト製のマスコット、フォルにはフォルの前脚サイズに合わせた腕輪をマキシ自らフォルの右脚につけた。

「おおお……これ、イアさんの枝の稀少な色のところを使ってくれたの?」

「はい。カイさんやセイさんが作ったものに比べたら、僕のなんてまだまだですけど……でも、心を込めて作りました」

照れ臭そうに笑うマキシに、ライト達が嬉しそうに声をかける。

「ありがとう!マキシ君が作ったアクセサリー、本当に嬉しい!」

「ああ、俺も神樹の枝のアクセサリーはカフスボタンを作ってもらうことが多いから、タイピンでもらえるのは本当にありがたい」

「おおお……待ちに待ったフォルのマスコットじゃないか!ありがとうな、マキシ!」

レオニスが言うように、神樹の枝を使った加工品はいつもライトがタイピンで、レオニスはカフスボタンにしてもらっていた。

だが、カフスボタンはボタン穴に付けるものであり、つけられる数に限りがある。その点タイピンならば、ぶっちゃけネクタイ以外の場所でも噛ませて装着することができる。

一方ライトにとっても、カフスボタンは初めてもらうもの。マントの襟にボタン穴の一つも作ればすぐに装着できる。

いつもと逆の仕様でのプレゼントは、ライトもレオニスもとても喜んでいた。

だが、この中で最も狂喜乱舞しているのはラウル。

マキシがラウルに渡したフォルのマスコットは、かつてライトの誕生日にマキシが作ってプレゼントしていたものだ。

手のひらサイズの可愛らしいフォルマスコットを見て、ラウルがマキシに「マキシ!俺にもこれと同じものを作ってくれ!」と鼻息荒く迫ったのは、ライトもレオニスも覚えている。

もちろんマキシもそのことを覚えていて、今回のクリスマスプレゼントという形で約束を果たしたのだ。

フォルの抜け毛で作ったフェルトで作られた、フォルのマスコット。

ラウルは己の手のひらに乗せながら「……可愛いなぁ……」と嬉しそうに呟きつつずっと眺めている。

さすがフォル教信者第一号、フォルへの愛は尽きることがないらしい。

当のフォルは、腕輪をプレゼントされたお礼なのか、マキシの肩に乗りスリスリと頬ずりしていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「マキシ君の次は、ぼくからのプレゼントね!」

「おお、ライトからもプレゼントがあるのか?」

「うん!」

マキシからのプレゼントをもらった後、今度は自分だ!とばかりにライトが名乗りを上げる。

ライトは席の後ろに置いておいたアイテムリュックを取り寄せて、膝の上に乗せてプレゼントを取り出す。

「はい、レオ兄ちゃん!」

「おう、ありがとーぅ」

「はい、これはラウルね!」

「ありがとう」

「こっちはマキシ君の!」

「ありがとうございます!」

テキパキと皆にプレゼントを配るライト。

レオニスのは小さな小袋、ラウルのはどっしりとした長方形の小箱、マキシには長細い小箱。

三人とも早速袋や箱を開けて、中身を取り出した。

「これは……銀碧狼の毛か?」

「うん!フェネぴょんに作ったお守りのブレスレットと同じものだよ!……って、レオ兄ちゃんの赤いジャケットには似合わないかもだけど……」

レオニスへのプレゼントは、銀碧狼の抜け毛で作った毛糸で編み上げたミサンガ式のブレスレット。

いや、実はライトとしても『レオニスの深紅のロングジャケットに、銀碧狼の白い糸じゃ色的に合わないかも……?』と迷いに迷ったのだが。

レオニスは魔法も多用するし、各種魔力効果が高い銀碧狼の毛で作ったものをどうしても身に着けてもらいたかったのだ。

ちょっとだけ躊躇いがちなライトに、レオニスはニカッ!と笑いながらライトの頭をくしゃくしゃと撫でる。

「そんなことないさ。あのフェネセンだって太鼓判を押したアイテムだ、効果は保証されてるも同然だ」

「それはそうなんだけど……」

「それに、これは俺のために作ってくれたんだろう?」

「うん……」

「だったらこれに勝るプレゼントはないさ。ありがとうな」

「……うん!」

レオニスの言葉に、俯きがちだったライトの顔が明るいものに変わっていく。

その横で、ラウルが最高級砥石をじっ……と眺めている。

「ライト……俺のこの砥石は、ただの砥石じゃないな?」

「あ、うん、それはルティエンス商会で買ってきたんだ。ロレンツォさんイチ押しの砥石なんだって!」

「だろうな……俺が今まで使ってきた砥石がゴミ屑に思えてくるわ」

「え、そんなに???」

恍惚とした眼差しで最高級砥石を眺めるラウルに、ライトとレオニスは半分びっくり、半分ドン引きしている。

三人が最高級砥石を見ても、せいぜい『あー、ちょっとキラキラして見える綺麗な砥石だなー』程度にしか思わないのだが、ラウルは違う。

彼の調理器具に対する審美眼は、そんじょそこらの鑑定師では到底及びもつかない。

そのラウルのお眼鏡に叶った最高級砥石。さすがはルティエンス商会店主ロレンツォが推すだけのことはある。

そして、そんなラウルの横でマキシも何やらうっとりしている。

ライトからプレゼントされた鑿に感激しているようだ。

「ライト君……これ、彫金用の鑿、ですよね……?」

「あ、うん、これもルティエンス商会で見つけたものなんだー。オリハルコンゴーレムの脛で作られた、珍しい逸品なんだって!」

「ありがとうございます……僕はまだ専用道具も持てない見習いですが、いつかこの鑿を使って極上のアクセサリーを作りたいです!」

細長い小箱に入れられた鑿を見たマキシが、瞳を潤ませながら感激している。

超一流のアクセサリー工房でもあるアイギスに勤めるマキシ。

アイギスに入ってからもうすぐ一年が経とうとしているが、まだ一年未満の者に専用の鑿を持たせる程アイギスは甘くない。

まだまだ見習いの身分に甘んじなければならないマキシだが、ライトからマイ鑿をもらったことでモチベーションは爆上がりしたようだ。

そんなマキシに、ラウルが優しい声で語りかける。

「マキシ、良いものもらえて良かったな」

「うん……ラウルもライト君から素敵なものをもらえて良かったね」

「ああ。この恩はまた美味いものを作り続けていくことで返していくとしよう」

「そうだね、それがラウルにできる一番の恩返しだね」

ライトからの想像以上に素晴らしい贈り物に、喜び合うラウルとマキシ。

二人が喜ぶ姿を見て、ライトも大満足したのだった。