軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1058話 クリスマスプレゼント探し

氷の洞窟を出て、アル達母子とも別れたライト達。

二人はツェリザークの街に向かった。

「ぼくはルティエンス商会に行くけど、ラウルはどうするー?」

「そうだな、俺は氷蟹の殻処理依頼でもこなしてひと稼ぎしてくるわ」

「うん、ぼくもルティエンス商会で皆にあげるクリスマスプレゼントをゆっくり見たいから、ラウルがそうしてくれるとぼくも助かる!」

「何度考えても分からんのだが……あの店に、本当にクリスマスプレゼントになりそうなもんなんか売ってるのか……?」

ライトの本日のお目当てはルティエンス商会。

プレゼント探しももちろん本当にするつもりなのだが、真の目的はエクストラクエストで出てきた『神威鋼』のことをロレンツォに聞くことである。

それら諸々の目的を達するには、少なくとも一時間くらいは中でゆっくり過ごす必要がある。その間ラウルが殻処理依頼で出かけていてくれれば、ライトとしてもロレンツォと心置きなく話せて都合が良いのだ。

そしてライトの変わらぬ言い分に、ラウルはどうしても理解できないらしく首を傾げている。

しかし、自分が冒険者の仕事をしている間にライトが安全な場所で過ごしてくれることは、ラウルにとってもありがたいことだ。

ライトのクリスマスプレゼントが、果たしてルティエンス商会で見つけられるかどうかの是非はともかく、ひとまず安心して殻処理依頼に専念できることは間違いない。

そんな話をしつつ、二人はルティエンス商会の前まで辿り着いた。

ライトとラウルが店の中に入ると、相変わらず客一人いない静かな空間が二人を出迎える。

そして程なくして、店の奥から人が出てきた。ルティエンス商会の店主、ロレンツォである。

「いらっしゃいませ。……おや、ライトさんにラウルさんではありませんか。ようこそお越しくださいました」

「ロレンツォさん、こんにちは!お久しぶりです!」

「よう、店主。元気そうで何よりだ」

ライト達を見たロレンツォが、小さく微笑みながら迎え入れた。

二人がルティエンス商会を訪ねるのは、氷の洞窟で玄武が誕生した日の午後に立ち寄って以来だ。

店の中は相変わらず胡散臭い品がたくさん並べられているが、ライト達は何度も訪ねているうちにすっかり慣れてしまった。

「店主、俺は今から少し出かけるが、うちの小さなご主人様はここでクリスマスプレゼントを探したいそうだから、相手してやってくれるか?」

「もちろんですとも。クリスマスプレゼントの購入とは、実に光栄なお役目……不肖ロレンツォ、そのご期待に添うべく全身全霊全力でお勤めさせていただきます!」

天高く掲げた拳にグッと力を込めて握りしめながら、高らかに宣言するロレンツォ。その姿はまるで、どこぞの覇王もしくは拳王を彷彿とさせる世紀末的オーラを感じさせる。

普段物静かなロレンツォにしては実に珍しい姿だが、ライトのクリスマスプレゼントを買う店として選ばれたことが余程嬉しかったのだろう。

実際のところ、そうした目的でルティエンス商会を訪ねてきたのはライトが史上初かもしれない。

いつになく張り切るロレンツォに、ラウルが小さく笑いながら声をかける。

「よろしくな。じゃ、ライト、俺がここにまた来るまでゆっくりと買い物しててな」

「うん!ラウルも殻処理のお仕事頑張ってねー!」

ライトをロレンツォに託したラウル、殻処理依頼の仕事をこなすべくルティエンス商会を出ていった。

ラウルを見送ったライトは、早速ロレンツォに話しかけた。

「ロレンツォさん、クリスマスプレゼント向けの商品って何がありますか?」

「そうですねぇ……まずはどなたに贈るかを聞いてもよろしいですか?」

「えーっと、レオ兄ちゃんのはアレで作るからいいとして……まずはラウルとマキシ君、そして同級生の子達四人にもクリスマスプレゼントをあげたいんです!」

プレゼントをあげる相手の詳細を、まずはライトから聞き出したロレンツォ。

贈る相手の年齢や性別によって、嗜好や勧めるものの方向性も大きく変わるからだ。

その後マキシや同級生四人の詳細も聞いたロレンツォが、しばし考えながら店内のあちこちを移動している。

そうしていくつかアイテムを集めて、ライトのもとに持ってきた。

「同級生の子には、こちらの羽根飾りのペンは如何でしょう? 男女どちらにも使える実用品ですし、贈り物としてもとても喜ばれる逸品ですよ」

「あ、結構可愛いですね……これは何の鳥の羽根ですか?」

「これは、かの伝説の鳥『チラミバード』の風切羽でございます」

「チラミバード……イベントで出てくる アレ(・・) ですか……」

「ええ、 アレ(・・) です」

まずロレンツォが勧めてきたのは、白くて綺麗な羽根飾りのペンである。

羽根の色は、ほんのりとした桜色のものもあれば真っ白なものもあり、どれもとても綺麗だ。

男女兼用ということで、桜色のものは女の子達に、純白のものは男の子にあげれば喜ばれそうだ。

また、ペンということで実用性もあり、プレゼントにもってこいである。

そしてこの羽根飾りのもとである『チラミバード』を、ライトは知っている。

それはBCOの期間限定イベントでちょくちょく出てくる、BCOではお馴染みの鳥系モンスターだ。

その名の通り『横目で敵をチラ見してくる』という、実に胡散臭い仕草をするモンスター。だから『チラミバード』、実に安直かつ分かりやすい名前である。

そしてチラミバードは期間限定イベント用のモンスターなので、出没する特定の地域というのは存在しない。

特定地域の固有魔物ではないのに、一体どこからこんなものを仕入れてくるんだろう?

不思議に思ったライトは、素直にロレンツォに問うた。

「チラミバードの羽根飾りがあるということは、このサイサクス世界にもチラミバードがいるってことですよね?」

「もちろんでございます」

「チラミバードって、どこで遭遇できるんですか? アレって、期間限定イベントでしか出てこなかったと思うんですが……」

「フフフ……それは企業秘密にございますよ」

「ぇー……そんなぁ……」

ライトの質問に、いたずらっぽく笑うロレンツォ。

企業秘密という名目で、のらりくらりと答えをはぐらかすロレンツォに、ライトはがっかりしている。

だが、ロレンツォの言うことも分からなくもない。商売人にとって品物の仕入れルートは重要な生命線であり、軽々に明かせるものではない。

しょんぼりとしているライトに、ロレンツォが小さく笑いつつ話しかける。

「……でしたら、特別にヒントを一つ差し上げましょう」

「え!? ホントですか!?」

「ええ、本当ですとも。このチラミバードに限らず、特定地域を持たない魔物達はどこにいるかというとですね……」

「……(ゴクリ)……」

ヒントをくれるというロレンツォの言葉に、ライトは固唾を呑みながら次の言葉を待つ。

「このサイサクス世界には、BCOでは一度も出てこなかった町や村が存在します。そうした、いわば『 BCO(向こう側) では語られることのない地域』に、期間限定で出ていた魔物達がいることも多いのです」

「………………」

人差し指を立てつつ解説するロレンツォの言葉に、ライトがしばし無言で考え込む。

確かにBCOの冒険者ストーリーに出てくる街は、全部合わせても二十ヶ所にも満たない。

だが、この広大なサイサクス世界にはそれ以上の数の町や村が存在する。

ライトもサイサクス世界の地図を何度か見たことがあるが、ラグナロッツァやディーノ村、プロステスにツェリザークといったライトがよく知る街以外にも、見覚えのない地名がいくつもあった。

ロレンツォに言わせれば、そういう見覚えのない地名の街や村にこそ、その周辺に期間限定の魔物が潜んでいるのだという。

ライトはロレンツォの言葉に納得していた。

確かにそれは少し考えれば分かることで、ライトの知らない街や村の周辺にだって魔物の脅威は厳然として存在する。

その魔物達の席を、期間限定イベントのモンスター達にあてがえばデータ作成コストも抑えられて万々歳♪……という訳である。

「ロレンツォさん、教えてくれてありがとうございます!」

「どういたしまして」

大きな声で礼を言うライトに、ロレンツォもニッコリと微笑む。

ロレンツォはBCOのNPCの一人であり、この世界の秘密を知る数少ない人物。

彼もまたライトが言うところの『BCO仲間』であり、唯一の勇者候補生であるライトに対してある種の特殊な思いを抱いている。

そう、ヴァレリア程直接的かつ強い権限こそないが、ロレンツォもまたライトの力になりたい―――そう思っているからこそ、あんな重大なヒントをライトにくれたのだ。

そして、ロレンツォから重大なヒントをもらったライトも、内心で胸踊る思いに駆られる。

これから先、もしライトが聞き覚えのない地名の場所に出かけたとしても、行った先でBCO由来のモンスターを発見できるかもしれない。

そしてそのモンスターは、期間限定イベントでしか遭遇できない特別なものかもしれない。このことは、ライトの胸を踊ら冒険心を滾らせるのに十分だった。

「今見せてもらった、このチラミバードの羽根飾りのペンも、四つ欲しいです!…………って、お値段は一個おいくらですか?」

「そうですねぇ……他ならぬライトさんですので、一個200Gで如何でしょうか?」

「良かった!それなら四つ買えます!」

「お買い上げありがとうございます」

ロレンツォが告げた『一個200G』というお手頃価格に、心から安堵するライト。

もしここで、ラウルが買い付けた金色杓子のように『一個ウン万G!』とか言われたら、とてもじゃないがプレゼントになどできないところだ。

しかし、そこはロレンツォも商売人。ライトが気後れして買えないような品は決して勧めないし、最初から出してこないのである。

羽根飾りのペンを四つ買う!と嬉しそうに言うライトに、ロレンツォは微笑みながら声をかける。

「ではもう一つ、特別サービスとしてラッピングも無料にて承りましょう」

「ホントですか!? ありがとうございます!」

「では、四つともラッピングして参りますので、少々お待ちくださいね」

「分かりました!」

羽根飾りのペンを持って、再び店の奥に入っていくロレンツォ。

ロレンツォの心ばかりのサービスを嬉しく思いながら、ライトは他にもラウルやマキシのためのクリスマスプレゼントを探して、店の品々をのんびりと見て回っていた。