軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1033話 黄大河への移動方法

カタポレンの家の自室から転職神殿に移動したライト。

そこにはテーブルとセットの椅子に着いて、のんびりと談話するミーア達がいた。

『あ、ライトさん。ようこそいらっしゃいました』

『主様、こんにちは!』

『パパ様、いらっしゃい!』

ミーアがいち早くライトの訪問に気づき、ミーナとルディもミーアの声で振り返り破顔する。

相変わらず満面の笑みでライトを迎え入れてくれるミーア達。

この三人の明るい笑顔が、ライトにとって何より嬉しい活力源でもあった。

「ミーアさん、ミーナ、ルディ、こんにちは!」

『今ちょうど、皆でライトさんのお話をしていたところなんですよ』

「え、ぼくの話ですか? 一体どんな噂をしてたんですか?」

『主様のお友達が無事回復なされて、本当に良かったなーってお話です!』

「あ、イグニス君のこと?」

『はい!昨日ヴァレリアさんが来て、僕達にもラグナ神殿での事件?のことを詳しく教えてくださったんです!』

「ヴァレリアさんが……?」

ミーナやルディの話によると、昨日の昼にヴァレリアがここに来てミーア達にも分かるように事件の経緯と概要を話していってくれたらしい。

確かに一昨日の時点では、ライトはもちろんヴァレリアも想定外のことに慌てふためいていて、ミーア達へのフォローなどする余裕は全くなかった。

そのことに思い至ったヴァレリアが、ミーア達のためにわざわざ解説役を買って出てくれたのだ。

『私は職業システム以外のことは、殆ど分かりませんが……それでも、同じBCOのNPCである鍛冶屋のイグニスさん?が助かって、本当に良かったと思っています』

「はい……これも全て皆のおかげです。転職神殿というこの場所があったからこそ、ぼくはヴァレリアさんに相談することができました。ミーアさん、ミーナ、ルディ、本当にありがとう」

ミーアの心からの労いの言葉に、ライトはミーア達に礼を言いつつ頭を下げる。

もしライトがヴァレリアに会えていなかったら、イグニスの危機の真相に気づいても何の手立てを講じることもできずにいたことだろう。

そしてヴァレリアとの出会いをもたらしてくれたのは、この転職神殿である。

ライトがBCOの職業システムを求めて、この転職神殿を探し当てることができたからこそ今のライトがあり、引いてはイグニスの中に眠る破壊神イグニスをも救うことができたのだ。

そのことに、ライトは心から感謝している。

改めて礼を言うライトに、ミーナもルディも慌ててライトに駆け寄る。

『そそそそんな!私達が主様をお慕いするのは当然のことです!だって主様は、私達の生みの親ですもの!』

『そうですよ!僕達はパパ様がいてくださったからこそ、この世界に生まれることができたんですから!』

『ええ、二人の言う通りですよ。私の方こそ、ライトさんには感謝しかありません。ここで一人で暮らすのが当たり前だった私に、こんなにも可愛い妹と弟を授けてくださったんですもの』

ライトのことを使い魔の主として慕うミーナやルディだけでなく、転職神殿専属巫女のミーアまでもがライトに感謝を伝える。

BCOの中の巫女ミーアも一人きりだったが、それでもこのサイサクス世界ほど孤独ではなかっただろう。転職マラソンを繰り返せる 勇者候補生(ユーザー) が、ひっきりなしに転職神殿を訪れていただろうから。

だが、このサイサクス世界にはライト以外の勇者候補生は存在しない。いや、もしかしたらライトがその存在を知らないだけかもしれないが、少なくともこの転職神殿を訪れるのはライトだけだ。

彼女はこのサイサクス世界で、一体どれ程の長い間一人で過ごしてきたのだろう。ライトがそこら辺のことをミーアに聞いたことは一度もないが、きっと想像を絶する長さだろうことは容易に想像できる。

だが、ミーアのそんな長い孤独は終わりを告げた。

ライトが持ち込んだ使い魔の卵、その孵化により力天使のミーナと黄金龍のルディがこの転職神殿に住まうようになったのだ。

新たに生まれたミーナとルディは、エルフ風巫女のミーアとは種族どころか担う役割も全く違うが、今ではミーアにとってなくてはならない家族。

そしてそれはミーナとルディにとっても同じことで、姉と慕うミーアは本当の主であるライトと同じくらいに大切な存在となっていた。

ライトのことを常に思い遣ってくれる、転職神殿の仲間達。

BCOで繋がった仲間なので、レオニスやラウルなどの埒内の者達には絶対に紹介することなどできないし、きっとそれはライトの生涯を通して変わることはないだろう。

だが、ライトのそうした寂しい気持ちなんかより、ミーア達の笑顔が保たれることの方がずっと重要だ。

この転職神殿を包む平和で長閑な時間が、ずっとずっと続いていってほしいな―――そう願うライトだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『ところで主様、今日は何か特別な御用がおありですか?』

「あ、そうそう!今日はルディに、黄大河に連れていってもらいたいと思ってきたんだ!」

『黄大河、ですか?』

「うん。今やっているクエストイベントのお題の一つで、黄大河の水が大量に必要なものがあるんだよね」

ミーナに今日の転職神殿訪問の目的を問われたライトが、その理由を明かす。

黄大河とは、ラグナロッツァ近郊に流れる大きな川だ。

そして今ライトが急ピッチで推し進めている濃縮マキシマスポーション作り、その中の材料の一つであるアンチドートキャンディの原材料に『黄大河の原水』がある。

ちなみに、これまでマキシマスポーション作りに使った黄大河の原水は、翼竜牧場のシグニスの協力を得て黄大河の原水を入手していた。

翼竜牧場とは今でも付き合いがあり、週に一度はラウルにビッグワームの大顎を引き取りに行ってもらっている。

その際に、毎回シグニスが黄大河の原水を詰めた瓶を十本くれるのだ。

これは、以前ライトがシグニスに黄大河の原水入手を依頼した時から続いている。

実際シグニスも、相棒の翼竜プテラナの休憩で黄大河の中洲に立ち寄るらしい。そしてその都度シグニスは、毎回ライトへの手土産として水を汲んでいて、もはやその習慣がすっかり身についているという。

ライトにとっては、実にありがたいことである。

だが、今回ばかりはその量では到底追いつかない。

アンチドート1000個分の作成に必要な黄大河の原水は3000個。

そしてライト愛用の木製バケツ一杯は、黄大河の原水約50個分に相当する。

つまり、木製バケツ60杯分以上の水を確保しておく必要があった。

故にライトは、ルディの力を借りて黄大河に直々に出かけることにしたのである。

するとここで、ミーナとの話を聞いていたルディも話に加わってきた。

『パパ様、その黄大河というのはこの近くにあるんですか?』

「ううん、このディーノ村からはかなり遠いんだよね。だから、北レンドルーに登録してあるマッピングポイントから移動しようと思ってるんだ」

『ああ、パパ様の使うマッピングスキルの出番という訳ですね!』

「そそそ、そゆことー」

ルディの質問に、ライトはマッピングスキルで登録済みの北レンドルー地方からの移動を提示した。

このディーノ村の山奥から黄大河は壮絶に遠く、ここから行くよりは北レンドルー地方から移動する方がまだマシだからだ。

それでも小一時間は空を飛んでもらわねばならないだろうが、帰りは同じくマッピングスキルで転職神殿に一瞬で帰還できる。

ライトの計画を把握できたルディは、パァッ!と明るい顔でライトを促した。

『そしたらパパ様、早速行きましょう!』

「うん!……あ、ミーナはミーアさんといっしょにお留守番しててくれる?」

『もちろんです!ルディがいれば、主様の安全は万全ですから!ね、ルディ?』

『はい!ミーナ姉様も、ミーア姉様とともにここで待っててくださいね!』

早く行こう!とお出かけを促すルディに、ライトが少し慌てたようにミーナに留守番を頼む。

もちろんミーナがそれを断ることなどない。ルディが護衛を兼ねればライトの身の安全は保証されたも同然だし、その分ミーナはミーアとともにいられる。

そう、ミーナもルディもミーアをなるべく一人きりにしたくないのだ。

そんな弟妹達の心遣いを、ミーアが分からないはずはない。

ミーアもまた微笑みながら、ライトに話しかける。

『ライトさんなら大丈夫だとは思いますが……気をつけてお出かけしてきてくださいね?』

「はい、ありがとうございます!夕方になるまでには帰ってきます!じゃ、行こうか、ルディ!」

『はい!』

ライトとルディは転職神殿内のマッピング地点に立ち、ライトは左手でルディの身体を触りながら右手でマイページを開く。

そしてマッピングスキルの移動ポイント『北レンドルー/地点A』をタップし、ルディとともに移動していった。