軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1022話 様々な近況報告

ライト達と分かれ、大教皇執務室に向かうレオニス。

執務室手前にまで来た時に、執務室の扉が開いて誰かがものすごい勢いで飛び出してきた。

それは、イグニスの目覚めの知らせを受けた総主教のホロだった。

「ン? ホロじゃねぇか、そんなに慌ててどうした?」

「あッ、レオニス卿!ようこそいらっしゃいました!今しがた、イグニス君が目を覚ましたという知らせを受けましてね、医務室に向かうところなのです」

「おお、あの子が目を覚ましたのか!? そりゃ良かった」

「そんな訳でして、また後程改めてご挨拶いたします。では、失礼いたします!」

大教皇執務室まで呼びにきた職員とともに、バビューーーン!とものすごい勢いで去っていくホロ。

医務室のある方角に向かってすっ飛んでいくホロの後ろ姿を、レオニスはくつくつと笑いながら見送る。

その後レオニスは大教皇執務室の扉をノックし、入室していった。

「よ、大教皇。五日ぶり」

「ああ、レオニス卿、ようこそいらっしゃいました」

執務机に座っていた大教皇のエンディ、レオニスの姿を見て机から立ち上がる。

そして部屋の隅にあるワゴンまで行き、手際良く二人分のお茶を用意して応接ソファに運んでいく。

エンディがテーブルの上にお茶を置き、レオニスと向かい合いに座った。

「さっきそこの廊下でホロに会って聞いたぞ。イグニスが目を覚ましたんだって?」

「ええ、そのようです。昨日までは、何をどうしても一向に起きる気配がなかったのに……今朝は血色がとても良く、もしかしたら……と思っていたところに、先程の報が入りましてね。本当に良かったです」

「だなぁ。あの子はうちのライトの同級生だし、執事のラウルとも懇意にしてたから俺達もずっと心配だったんだ」

「そうだったのですか……それはさぞやご心痛だったことでしょう」

「今はライトとラウルがイグニスの見舞いに行ってるから、今頃目を覚ましたイグニスと対面して喜んでいるんじゃねぇかな」

「それはますます喜ばしいことですね!」

まずはイグニスの目覚めを喜ぶレオニスとエンディ。

一週間近くも昏睡状態だったイグニス。ようやくその目を覚まし起きたことは、誰にとっても喜ばしいことである。

今頃ライト達も、起きたイグニスを見て大喜びしてるんだろうな……と思うと、レオニスの顔にも自然と笑みが浮かぶ。

そうして一頻りイグニスの目覚めを喜んだところで、レオニスの方から他の話を切り出す。

「……さて、そしたら今度はこっちの状況確認といきたいんだが。その後特に変わったことはないか?」

「おかげ様で、目に見えるような大きな異変は特に起こらず、恙無く過ごせております。ですので、明日の日曜日から信徒及び一般の方々の出入り制限を解く予定です」

「そうか……まぁな、あんた達としてもこの先ずっと完全封鎖を続けていく訳にはいかんだろうしな」

「はい。ただし、主教座聖堂だけは予定通り当分は閉鎖の上、立入禁止のまま現状を維持します。 例の件(・・・) のためもありますが、もともと建物の損壊もかなり大きいですからね」

「だな」

ラグナ神殿内の現状確認をするレオニスとエンディ。

先程レオニス達が正門を潜った時にはまだ出入り制限をしていたが、明日から再び門戸を開放するようだ。

その後レオニスはエンディから様々な話を聞いた。

まず【武帝】の残滓に侵蝕された薬草園と、ホロ達が【武帝】の残滓と鉢合わせて戦闘になった渡り廊下。この二ヶ所は朝昼夕の三回に渡り、ホロが浄化魔法をかけ続けていること。

浄化魔法の達人であるホロが直々に浄化魔法をかけているのであれば、この先心配は要らないだろう。

また、魔の者達は今も精力的にクリスマス用オーナメントを作り続けているという。

最初の頃こそ【武帝】の残滓に襲われたショックを引き摺っていたが、ホロが身体を張って自分達を守ってくれたこと、そしてホロから「皆さんが作ってくれた飾り物のおかげで、命拾いできました」という言葉に、皆心機一転して再びオーナメント作りに励んでいるらしい。

そして、主教座聖堂内の祭壇部床にそのまま置かれている【晶瑩玲瓏】。

こちらにも毎日エンディとホロが交代で通い、朝晩に最上級回復魔法をかけているという話を聞いた。

そのおかげか、【晶瑩玲瓏】の放つ力はそれ以上衰弱することなく、むしろ僅かながら上昇している感さえあるという。

ただし、やはり折れたままではどうにもならない。

力の限界を感じていたエンディが、レオニスに問うた。

「レオニス卿、例の物の代替品はどうなりましたか?」

「あれからすぐ、月曜日にトロール族のところに作成依頼を出して、昨日出来上がった現物を受け取ってきたところだ」

「おお、もう出来上がったのですか。よろしければ、その現物を見せていただけますでしょうか?」

「もちろん」

レオニスが空間魔法陣を開き、一本の長剣を取り出した。

白銀色に輝くすらりとした長剣。見た目だけで言えば、レオニス達が主教座聖堂で見たそれとそっくりである。

「おお……例の物と並べても遜色ない出来ですね……」

「だろう? 俺もトロール族の鍛冶の腕前がここまでだとは思っていなかったから、これを見た時は本当にびっくりしたぜ」

「これは、どの金属を用いて作られたものなのですか?」

「えーと、何だったっけ……玉鋼と桜印安来鋼を混ぜてから? 最後に白金とミスリルを混ぜて錬成したとか何とか言ってたかな……」

「なかなかに高度な技術が用いられているのですね……」

「配合率まではさすがに教えてくれなんだがな」

見事な出来栄えの長剣に、エンディは感嘆しながら見入ることしきりだ。

レオニスはラグナ神殿での爆発騒動の翌日、目覚めの湖で水の女王とアクアに【水の宝珠】を作ってもらった後、その足でウィカとともにトロールの里に向かったのだ。

そこでシンラにホロがペロサントの木の枝で作成した模造剣を渡し、それと同じ形の金属製の剣の作成を依頼したのである。

最初その模造剣を見たシンラは、びっくりしながら「これ、そのまま銀色に塗った方が早いんじゃね?」と言っていた。

さすがにそれではすり替えしてもすぐにバレそうなので、そこはシンラを宥めつつ鍛冶依頼を出したレオニス。

材料のチョイスと調達はシンラにお任せ、報酬は金銀銅各10kgとミスリル5kg、オリハルコン3kgで取引成立した。

そして昨日の金曜日に、出来上がった品を受け取ってきたのだ。

レオニスの目から見ても完璧な品は、もちろん一発OK。

制作期間四日でこれ程の品を作れるとは、トロール族の持つ鍛冶技術は間違いなく超一流であることが分かる。

【晶瑩玲瓏】の代替品をエンディに見せた後、レオニスが空間魔法陣に仕舞いながら次の話題に移る。

「ところで、オラシオンとは連絡取れたか?」

「ええ。兄上からは十二月十五日なら行けるので、絶対に馳せ参じるという答えをいただいております」

「十二月十五日な、承知した。俺もその日に向けて準備しとくわ」

前回の話し合いで、【晶瑩玲瓏】の復元の際にはオラシオンも同席してもらおう、ということになった。

そこで、オラシオンの都合の良い日を尋ねたところ、十二月十五日ならOKという回答を得たようだ。

その日は奇しくも、レオニスが【深淵の魂喰い】と対峙する予定だった日。それより先に、破壊神との激突によって折れてしまった【晶瑩玲瓏】を直す日になるとは。一体誰が予想し得ただろうか。

するとここで、執務室の扉からノックの音が聞こえてきた。

エンディの「どうぞ」という言葉のしばらく後に、扉がそっと開いた。

扉の向こうにはライトとラウル、そしてホロが立っていた。

「大教皇様、こんにちは!」

「おや、ライト君。イグニス君のお見舞いにいらしたとお聞きしましたが……イグニス君にはもう会えましたか?」

「はい!ちょうどぼく達が医務室に行こうとした時に、イグニス君が目覚めたばかりだったみたいで……イグニス君やペレさんともお話できました!」

「そうですか、それは良かったです」

にこやかに出迎えるエンディに、ライト達も執務室に入る。

エンディがソファに座るように勧めたが、ライトは「あ、お構いなく」と言って立ったまま話を始めた。

「ホロさんがイグニス君の帰宅を許可してくれたんですが、イグニス君はずっと寝ていたせいか足が少しふらついてて……それで、ラウルがペレさんのおうちまでおんぶして送っていって、さっき帰ってきたところなんです」

「そうでしたか……何れにしても、イグニス君が目覚めて本当に良かったです」

「はい、これも一生懸命看病してくださったラグナ神殿の皆さんのおかげです!」

「とんでもない……我々は我々ができる精一杯のことをしたまでですよ。それに、そもそもイグニス君はこのラグナ神殿の敷地内で爆発騒動に巻き込まれて意識不明になってしまったのだから、目覚めるまでお世話をするのは当然のことです」

改めてイグニスの目覚めを喜ぶライトとエンディ。

ライトが口にしたラグナ神殿の人達への礼の言葉に、エンディが謙遜しつつ微笑む。

イグニスが目覚めた本当の理由は、ヴァレリアの尽力によるものだ。

だがしかし、そんな本当のことは口が裂けても言える訳がない。

それに、ヴァレリアがイグニスを助けに向かうまでの五日間、ラグナ神殿の人達の献身的な看護があってこそイグニスは持ち堪えられたのだ。

なので、ライトがラグナ神殿の人達を称え感謝しているのも本当の気持ちである。

するとここで、レオニスが出されたお茶をくいっ、と一気に飲み干した。

「……さ、ぼちぼち行くか」

「レオ兄ちゃんの方のお話は、もう終わったの?」

「ああ、だいたいは話せたから大丈夫」

「そっか!」

ソファから立ち上がったレオニスに、エンディもライト達を見送るべく席から立つ。

そして五人は執務室の扉に向かい、入口で三人と二人に分かれた。

「レオニス卿、本日はありがとうございました」

「いやいや、こっちもイグニスが目覚めたことを知れてちょうど良かったよ。なぁ、ライト?」

「うん!ぼくもラウルもレオ兄ちゃんも、皆イグニス君のことを心配してたので、本当に良かったです!大教皇様、総主教様、本当にありがとうございました!」

レオニスに話を振られたライト、満面の笑みでエンディとホロに向かって頭を下げる。

嬉しそうな顔で礼を言うライトに、エンディもホロも思わず笑みが零れる。

「じゃ、またな」

「後日またお会いしましょう」

レオニスの短い言葉に、エンディもまた短い言葉で返す。

ライトとラウルはイグニスの無事を確認できたし、レオニスもエンディと様々な打ち合わせができた。

皆それぞれに晴れやかな顔で、ラグナ神殿を後にした。