軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

396話:2人で出した結論

翌日。

ホテルで朝食バイキングと朝風呂を楽しみ、2人は草津を後にした。

今は、車で山奥の屋敷へと向かっているところだ。

高速道路を走る車内で、バレッタは先ほどサービスエリアで買った旅行雑誌を読んでいる。

次に行きたい旅行先を、彼女に見繕ってもらっているのだ。

「伊香保温泉に行ってみたいです。あと一週間くらいで、紅葉が始まるらしいですよ」

秋の紅葉特集の記事を見ながら、バレッタが言う。

「おっ、いいですねぇ。伊香保っていうと、確か榛名湖が紅葉スポットだったかな」

「ですです。伊香保温泉街には、ロープウェイもあるみたいですよ。ロープウェイからの景色の写真、すごく綺麗なんです」

「そしたら、結婚式が終わったらホテルを押さえちゃいましょうか。泊まりたいホテルも、選んでおいてください」

「はい。どこにしようかな……」

バレッタが楽しそうに、宿紹介のページを開く。

載っている宿数はかなりあり、目移りしてしまう。

「温泉旅行、めちゃくちゃ楽しかったなぁ。1日だけなのが、ほんとに惜しいですよ」

「ふふ、そうですね。次は、もう少し長めで楽しみたいですね」

「周辺観光もしたいですからね。今度は、3泊か4泊くらいで計画してみましょうか」

「わあ、楽しみです! 毎日温泉に入ったら、お肌がつるつるになりそうですね!」

「群馬県以外でも、行きたい場所があったら変更できますよ? 温泉旅行もいいけど、豪華客船で船旅っていうのも楽しいだろうなぁ」

わいわいと楽しく話しながら、高速道路をひた走る。

バレッタはとにかくいろいろな場所を見て回りたいとのことで、北海道や沖縄、小笠原諸島にも、いずれ行ってみたいとのことだった。

海外旅行はパスポートの関係で厳しいので、残念なところである。

「あっ!」

高速道路を運転しながら、一良が焦った声を上げた。

「どうしたんですか?」

「結婚式の俺の衣裳、用意するのを忘れてました……」

「あっ! ど、どうしましょう!?」

「バレッタさん、スマホで花婿衣裳の販売をしている店を検索してもらえません?」

「はい!」

一良からスマートフォンを受け取り、操作方法を聞きながら検索をかける。

屋敷から一番近い店を見つけ、住所をカーナビに入力して向かうことになった。

「このお店はレンタル品だけみたいです。着物とタキシードがあるみたいですよ」

「よ、よかった。あやうく、普通のスーツを買って行くことになるかと思った……」

「ふふ。私はそれでもいいと思いますけどね。カズラさんのスーツ姿、見てみたいですし」

「あっちでは見慣れない服ですし、ありといえばありか。というか、当日受け渡しってしてもらえるんですかね?」

「た、確かに……」

不安に思いながらも駅前に向かい、礼服レンタルの店に到着した。

店に入ると、若い女性店員がすぐに寄って来た。

「あの、俺の……花婿の衣裳をレンタルしたいのですが」

「ご結婚、おめでとうございます。式はいつのご予定でしょうか?」

「今日の午後からです……」

一良が気まずそうに答えると、彼女はぎょっとした顔になった。

今は午前11時前であり、午後まであと1時間しかない。

「さ、左様でございますか。すぐにお渡しできるものは――」

まだ会場入りしていなくて大丈夫なのだろうかと彼女は内心思いながらも、タキシードの紹介を始めた。

バレッタに意見を聞きながら急いで1着選び、サイズを確かめてから試着室に向かう。

店員に手伝ってもらって試着を済ませ、代金を払って即日レンタルさせてもらった。

礼を言って店を出て、車に乗り込む。

「うう、めっちゃ恥ずかしかった……変に思われただろうなぁ」

「あはは。でも、いい思い出になりました。こういうアクシデントも、印象に残っていいと思いますよ」

バレッタはとても楽しそうだ。

彼女の言うとおり、生涯の話のタネになるだろう。

真っ直ぐ屋敷に戻って来た2人は、お土産などを載せたリアカーを引いて異世界への敷居をまたいだ。

雑木林を抜けて村に出ると、何人かの村人が広場でテーブルを並べていた。

テーブルは真新しく、式のために作った物のようだ。

「あっ、おかえり!」

作業を手伝っていたリーゼが2人に気付き、駆け寄って来た。

「わっ。バレッタ、その服、すごくかわいいじゃん!」

「えへへ。カズラさんに買ってもらっちゃいました」

「うんうん。日本であちこち行くんだから、服も合わせないとね。どこに遊びに行ってきたの?」

「草津温泉です。ホテルに泊まって、のんびりしてきました」

「そっか。その様子なら、楽しんでこれたみたいだね」

リーゼがにこりと微笑む。

「結婚式の準備、もうちょっとで終わるよ。この村の結婚式って、皆の前で発表してごちそうを食べたら解散なんだね」

「ですね。特に形式ばったものはないので……カズラさん」

バレッタに目を向けられ、一良が頷く。

「あのさ、リーゼたちに話したいことがあるんだ」

少し緊張して言う一良に、リーゼがきょとんとした顔になる。

「ん、何? 改まっちゃってさ」

「えっと……ジルコニアさんとエイラさんにも、一緒に話したいんだ。2人は今、どこにいるんだ?」

「バレッタの家で、マリーたちと料理を作ってるよ。呼んでこようか?」

「いや、家で話そう」

そう言って、リアカーを引いて一良が歩き出す。

リーゼは小首を傾げながらも、2人に並んで歩き出した。

作業をしている村人たちが、一良たちに手を振ってくれる。

一良とバレッタも、彼らに手を振り返した。

「ねね、温泉はどうだった? ホテルは、どんなとこに泊まったの?」

リーゼがニコニコしながら、2人に尋ねる。

「硫黄の匂いがする温泉でさ、すごく温まって、肌がすべすべになったぞ」

「ホテル、本当にすごかったです。部屋は広くて景色が最高で、料理もすごく美味しかったですよ」

「いいなぁ。温泉ってさ、こっちでも掘れたりしないかな?」

「まあ、道具が手に入れば、できないこともないだろうけど」

「1000メートルくらい掘らないとですから、業者が使う機械が必要ですね。上総掘りだと500メートル以上は掘れるみたいですけど、この辺でも温泉って出るのかな……」

一良とバレッタが答えると、リーゼは「そっか!」と嬉しそうな顔になった。

上総掘りとは、竹ヒゴや鉄管を使って人力で採掘する方法だ。

日本では現代で使われている技術が明治時代に完成したとされており、世界中で技術指導が行われている。

温泉が出る深さは土地によってまちまちなので、村で温泉を出せるかは掘ってみないと分からない。

「できるんだね! なら、村の中に温泉を掘っちゃわない? きっと、皆喜ぶよ」

「まあ、そのうちな」

「絶対やろうよ! そうすれば、カズラたちも村にいながら、温泉に入り放題だよ? 国中からお客さんが来るだろうしさ!」

勢い込んで言うリーゼに、一良は「そうだな」と苦笑する。

すると、少し離れたところで、ティタニアとオルマシオールがお座りしてこちらを見ていることに気が付いた。

遠目だが、ティタニアは優しく微笑んでいるように見える。

『大丈夫ですよ。頑張って!』

頭に響いた彼女の声に、一良はちらりとバレッタとリーゼを見た。

2人には聞こえていないようで、リーゼの熱弁にバレッタが「うんうん」と頷いている。

「でさ、宿場町を温泉街にして……カズラ、どうしたの?」

「いや、何でもないよ」

「えー? 温泉掘るの、めんどくさいとか思ってるんじゃない? 私、絶対掘りたいからね!」

「分かった、分かった。どうにかして掘ってみよう。一緒に頑張ろうな」

よしよし、と一良がリーゼの頭を撫でる。

リーゼは一瞬驚いた顔になったが、えへへ、とぎこちなく微笑んだ。

そうして屋敷に到着し、荷物はそのままに、3人は中に入った。

中ではナルソン邸の侍女たちが数人いて、皆で料理を作っていた。

土間には簡易式のテーブルがいくつも置かれていて、居間には野菜や肉などの材料が山積みだ。

「あら。2人とも、おかえりなさい」

頭に布巾を被り、エプロン姿のジルコニアが微笑む。

土間に置いた即席かまどで、蒸し料理を作っていたようだ。

「ただいまです。準備、ありがとうございます」

「いえいえ。2人の晴れ舞台ですからね。とびっきりの料理を作らなきゃって思って、侍女たちも呼んじゃいました」

侍女たちが料理をしながら、「おめでとうございます!」と声をそろえる。

一良とバレッタは、「ありがとうございます」と笑顔を向けた。

「バレッタ、かわいい服を着てるわね。すごく似合ってるわよ」

「えへへ。ありがとうございます」

「えっと……エイラさんは、いないんですか?」

一良が室内を見渡す。

「いますよ。カズラさんの部屋で、マリーとデザートを作ってます。呼んできましょうか?」

「いえ、ジルコニアさんにも話があって。部屋に行きましょう」

居間に上がる一良に、バレッタとリーゼも続く。

ジルコニアも居間に上がり、4人は一良の部屋に入った。

「あっ、カズラ様、バレッタ様。おかえりなさい」

「おかえりなさい!」

エイラとマリーが、一良たちに笑顔を向ける。

持ち込んだ小テーブルでケーキにデコレーションをしているところで、壁際には氷式冷蔵庫が置いてあった。

わざわざイステリアから運んできたようだ。

ケーキは、生クリームをコーティングした長方形のスポンジケーキだ。

色とりどりの果物がちりばめられ、見た目も鮮やかだ。

ビニール袋に入れた湯煎したチョコレートで、今まさにエイラが文字を書こうとしているところだった。

「うお、ケーキを作ってるんですか!」

「すごい……まるで、ケーキ屋さんのケーキみたいです」

完成前ながらも素晴らしい出来栄えのケーキに、一良とバレッタが目を丸くする。

「ふふ。本当は式の時にお披露目をって思っていたのですが、見られちゃいましたね」

「あー……何かすみません。えっと、エイラさんに話があって」

「あ、はい。何でしょうか?」

「ええと……マリーさん、悪いんですけど、ちょっと外してもらってもいいですか?」

「っ! 承知しました!」

マリーは何かに気付いた様子でにこやかに返事をすると、そそくさと部屋を出ていく。

引き戸が閉められ、一良とバレッタは部屋の奥に行くと座り込んだ。

リーゼたちも、2人に向き合うかたちで腰を下ろす。

「カズラ、話って?」

リーゼがうながすと、一良は「うん」と頷いてバレッタを見た。

バレッタはにこりと微笑み、小さく頷く。

一良は3人に向き直った。

ただならぬ彼の様子に、3人も真剣な顔になる。

「その……俺のこと、好きだって言ってくれて、本当にありがとう。あれから俺、いろいろ考えたんだ」

「……え?」

リーゼが思わず声を漏らす。

いったい彼が何を言おうとしているのか、さっぱり分からない。

それはエイラも同様で、ぽかんとした顔になっていた。

ジルコニアだけは違い、真剣な目を彼に向け続けている。

「俺は、バレッタさんのことが一番好きだ。だけど、3人のことも大好きだし、これからも一緒にいたいって思ってる」

「私も、カズラさんと同じ気持ちです」

バレッタが一良に続いて言う。

「リーゼ様とも、ジルコニア様とも、エイラさんとも、ずっと一緒にいたいです。でも、このままだと、どうしても距離が空いてしまうなって。そんなの、すごく嫌だなって……だから、カズラさんにお願いしたんです」

「お、お願い……って?」

リーゼが震える声で、バレッタに問いかける。

彼女に代わり、一良が口を開く。

「俺もバレッタさんも、これからもリーゼたちとずっと一緒にいたいんだ。俺とバレッタさんは夫婦になったけど、そのせいで遠慮がちになったり、気を使ったりっていうのはしてほしくない。それに、俺のことを想ってくれてる3人に、悲しい想いもさせたくないんだ」

リーゼとエイラは呆然とした顔で、一良を見つめている。

「すごく自分勝手で都合のいい話だっていうのは分かってる。でも、今までみたいに、俺は3人とも一緒に暮らしたい。だから、3人とも俺の側室になってほしいんだ」

一良が言うと、バレッタが「えっ」と声を漏らして彼を見た。

リーゼは言葉が出ず、呆けた顔で一良を見つめ続けている。

エイラはすでに感極まっている状態で、目を潤ませながら口元に手を当てていた。

ジルコニアだけは表情を崩さず、微動だにしない。

「あ、あの、カズラさん。側室っていうのは、その……」

戸惑った様子のバレッタが言うと、一良はバレッタに顔を向けた。

「俺は、バレッタさんが一番大切なんです。これだけは、俺に決めさせてください」

――……あれ? 俺って今、3人を前にしてゴミみたいな発言をしてないか?

一良は自分で言っておきながら、内心冷や汗を掻いた。

真っ直ぐな恋心を向けてくれている彼女たちにとっては失礼どころの話ではなく、この場で3人に袋叩きにされても文句は言えないように思える。

昨晩、風呂に入りながら、一良はバレッタに「3人を受け入れようと思う」と話した。

温泉旅行に行く日の朝に、2人並んで楽しそうに料理をするバレッタとリーゼの姿を見て、これからもずっと彼女たちのそんな姿を見ていたいと感じたのが、決心した理由だ。

リーゼがバレッタを気遣って明るく振る舞っているのは分かっていたし、自分たちのためにと1歩引いているのも感じていた。

彼女の性格をよく理解しているからこそ、つらい気持ちを押し殺しているというのも分かっていた。

これからもずっと皆で幸せに暮らしたいと願うなら、今の状態は 歪(いびつ) なのだろう。

これから何年時間が過ぎても、きっとそれはしこりとなって、表面上は取り繕っても5人の心に残るかもしれないと一良はバレッタに話したのだ。

バレッタも、「私もそう思います」と同意した。

もちろん、この先、リーゼたちに別の想い人が現れるかもしれないという可能性は十分あるのだが、それは今考えるべきことではないし、考えても仕方がない。

今、自分たちが幸せになる最善の方法として、一良とバレッタはそれを選択したのだ。

「カズラさん。1つ確認したいのですが」

ジルコニアが鋭い声色で、一良に言う。

一良は思わず肩を跳ねさせ、背筋を伸ばした。

「は、はい! 何でしょうか!?」

「それは、バレッタがカズラさんに頼んだから、ということですか? カズラさんは、私のことを女として好きなわけじゃないけど、彼女のために言ってるんですか?」

「そっ、それは違います! 俺は、ジルコニアさんのことが女性として好きです!」

「具体的には?」

「え、えっと……」

一良が気まずそうに、バレッタをちらりと見る。

「カズラさん、大丈夫ですよ。思っていることを、正直に言ってください」

バレッタが一良を安心させるように、優しく微笑む。

「は、はい……その、ジルコニアさんと話してると、すごく楽しいです。美人だし、お茶目なところはかわいいし、スタイル抜群だし。ナルソンさんの屋敷にいた時、ジルコニアさんが部屋に遊びに来てくれると、俺、すごく嬉しかったです」

「へ、へえ……」

それまで真面目な顔をしていたジルコニアが、口元をにやけさせる。

バレッタは笑顔のままだが、若干顔が強張っていた。

「ま、まあ、カズラさんがそこまで言うなら、側室になってあげます。というか、やっぱりなしとか言ったら叩き斬りますよ。もう手遅れですからね?」

「はい! ありがとうございます!」

まるで上官に返事をする新兵のように、一良がしゃちほこばって答える。

「カズラ様、私のことは、どうお思いなのですか!?」

後に続けとばかりに、エイラも声を上げる。

「エイラさんは、俺の理想の女性像の塊というか……こんな人がお嫁さんだったら、毎日癒されるだろうなって思ってます。優しいし、家事は完璧だし、しっかりと自分を持っているし、スタイル抜群だし。夜のお茶会でエイラさんと話してる時が、一番心が安らぎました。こんなに素敵な女性がこの世に存在するのかって思ったのは、一度や二度じゃないです」

「……嬉しい、です。ふええ」

エイラはぽろぽろと涙をこぼしながら、泣き始めてしまった。

「えと……私、は?」

それまで呆然としてたリーゼが、おずおずと口を開く。

「私のこと、本当はどう思ってるの? その……前に、カズラには酷いことしちゃった……けど」

「メロメロバンバン事件のことか。あれは確かに堪えたなぁ」

「……うん。本当にごめんなさい」

苦笑する一良に、リーゼが暗い顔になる。

それを見て、一良は慌てて口を開いた。

「あ、いや、それはもう終わったことだし。今じゃ、いい思い出だよ」

「……ありがと。カズラは、私のことも好きでいてくれてるの?」

リーゼが窺うような視線を、一良に向ける。

「今だから言うけど、その……言いかたが悪くなっちゃうかもしれないけど、リーゼって俺の好みど真ん中なんだよ。初めて会った時、かわいすぎて見惚れちゃったくらいにさ」

「好みって、顔のこと?」

「うん。言われ慣れてるとは思うけど、とんでもない美人だと思う。前に、俺に夜這いをかけようとしてたことがあったろ? もしあのまま実行されてたら、即落ちしてた確信があるよ。それまでの立ち振る舞いも、完璧だったしさ」

「そ、そうなんだ……」

微妙な笑顔になるリーゼ。

そんな彼女に、一良が慌てる。

「あ、いや、顔だけってわけじゃなくて。リーゼって、本当に優しいし、いつも皆のことを考えて動いてくれてるだろ? そういうところ、すごく尊敬してるんだ」

一良が言葉を続ける。

「思いやりがあって、芯が強くて、先を見通す視野を持っててさ。俺は神様じゃないって打ち明けた時に言ってくれた言葉、すごく嬉しかったよ。あの時、俺が欲しかった言葉を、全部くれてさ」

「……うん」

リーゼの顔から、ぎこちなさが消えた。

嬉しそうに頬を染め、にこりと微笑む。

「ていうか、リーゼはいくらなんでもかわいすぎるんだよ! 見た目が完璧なのに中身も天使ってどうなってんだって、会うたびに思ってたよ!」

「あはは。だから言ったじゃん。『こんなかわいい娘を振って他の女を選ぶなんて、どうかしてる』ってさ」

リーゼが指で涙を拭いながら笑う。

そして、バレッタに目を向けた。

「でも、バレッタは本当にいいの? 私、バレッタに嫌な想いはしてほしくない」

「私もリーゼ様と……皆と、ずっと一緒にいたいんです」

バレッタが優しい微笑みをリーゼに向ける。

「カズラさんと2人でっていうのも幸せですけど、やっぱり皆でわいわいやっている時が、一番楽しくて。これからも、そうしていきたいんです」

「……ありがとう。すごく嬉しい」

リーゼは嬉しそうに微笑むと、一良に向き直った。

三つ指を突いて、深々と頭を下げる。

「ふつつかものですが、どうぞよろしくお願いします」

「あ、うん。こちらこそ、よろしくお願いします」

一良も、リーゼに頭を下げる。

そこで、ジルコニアはふと思うことがあって口を開いた。

「えっと、私たちはカズラさんの側室ってことになるんですよね?」

「はい。順番を決めるような感じになっちゃって、失礼なのは分かってるんですが――」

「あ、いえ、それはいいんです。いいんですけど、その……私たちも、日本に連れて行ってもらえるようにしてくれるってことですか?」

「は、はい。ジルコニアさんたちが、嫌じゃなければ」

一良が答えると、ジルコニアはすぐさま一良に詰め寄り、両肩を掴んだ。

「抱いてください! 今すぐに!」

「えっ!?」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!」

バレッタが慌てて割って入る。

「ジルコニア様たちがカズラさんとそういう関係になるのは、1カ月経ってからです! カズラさん、そうですよね!?」

「はい!」

鬼気迫る表情のバレッタに、一良が背筋を伸ばして返事をする。

「1カ月後? どうして?」

ジルコニアが小首を傾げる。

それを見て、リーゼは苦笑した。

「お母様。バレッタは、カズラを独り占めする時間が欲しいんですよ」

「あ、なるほど……そうよね。新婚さんだもんね」

ジルコニアが手を放し、座り直す。

「じゃあ、カズラさん。1カ月後、楽しみにしてますからね!」

ニコニコしながら言うジルコニアに、一良は気圧されながらも頷いたのだった。