作品タイトル不明
第59話
「うぅ……選ぶの難しすぎる……。応募してきた冒険者、みんなテレビに出てきそうな伝説級ばっかりなのに……なんで誰一人名前聞いたことないんだろ……」
ついさっきまで“無視され地獄”にいた私は、今度は“選択地獄”へ突入していた。
「神代教官、何かアドバイスありますか?」
「『助けはいらない』って言ったのはそっちでしょう。だから、決定はあなたたち自身でやって」
神代は妙に胡散臭い表情で応募者一覧を眺めている。
……完全に、こっちがやらかすのを待ってる顔だった。
「もしかして、わざと私たちが地雷踏むの待ってる?」
「んふふ〜。一回痛い目見たほうが、記憶って深く刻まれるものだから」
「くっ……! ナメないでよ! 私だってちゃんと頼れる仲間を見つけるんだから!」
青野と二人で真剣に相談した結果、最終的に私たちは三人を選んだ。
【深淵最下層より帰還した“不滅の冒険者”!! ……128もの隊を渡り歩き、業界では“絶対に死なない男”と呼ばれる伝説!! 今なお英雄譚を更新中!!】
そして――
【ダンジョン時代最強クラスの自由冒険者! あまりにも規格外な実力ゆえ、協会評価システムを複数回バグらせた存在!!】
さらに――
【複数国家の重点監視対象に指定された超規格外冒険者! 我が存在そのものが、ダンジョン時代の伝説である!!】
三人の職業は、それぞれアサシン、聖騎士、剣士。
「ぶっ――」
三人の加入申請を承認した瞬間、神代が堪えきれずに吹き出した。
……え?
ま、まさか何か問題あった!?
いやでも、どう見ても強そうだったし!
紹介文もめちゃくちゃカッコいいし、見た目も完全にベテラン冒険者だった。
忍者装束を纏った覆面アサシン。
純白の鎧に身を包んだ聖騎士。
黒いマントを翻し、鋭い眼光を放つ剣士。
どう見ても超強そうじゃん!
間違ってるはずない!
「では、三名の先輩方。チームへの参加、本当にありがとうございます! パーティ分配方式はランダム設定になっていますので、特に異論がなければ、このままダンジョンへ向かいましょう!」
「ふん……新人の小娘が三人、か」
「協会評価システムを複数回バグらせた」とされる聖騎士が、顎を上げたまま高圧的に私たちを見下ろしてくる。
……でも、もう一人の“絶対に死なない男”のほうは、かなり頼れそうだった。
ダガーを指先で弄びながら、低い声で言う。
「俺は影の中からお前たちを支援する」
そして「複数国家の重点監視対象」は、一言も喋らないまま剣の柄に手を添え、冷え切った目で周囲を見据えていた。
……なんかもう、漫画の主人公みたいな雰囲気。
私は必死に平静を装い、道端で拾った枝を杖代わりに掲げ、前方を指し示した。
「それじゃ、出発! 目標――D級迷宮!」
巨大なダンジョン内部には、さらに独立した区画が存在している。
そこは一般的に人々がイメージする“ダンジョン”そのものだった。
魔物が徘徊し、倒せば装備や素材をドロップする。
さらに、精鋭個体を撃破すれば攻略完了。
それが、今回私たちが挑む迷宮だった。
転送陣へ踏み込む。
次の瞬間、私たち六人全員は迷宮内部へと転移していた。
「俺は影の中からお前たちを支援する」
ダンジョンへ入った直後、アサシンさんは隠密スキルを発動し、私たちの目の前から消えた。
「えっ? 入って早々にハイド!?」
私が呆然としている間に、聖騎士が雄叫びを上げながら突撃する。
「醜き緑皮のゴブリンども! この俺様の力を思い知れぇぇぇ!!」
振り下ろされた長剣が、ゴブリンの頭へ直撃した。
――−1
ゴブリンは「なんか蚊に刺された?」みたいな顔で頭を掻いた。
だが、剣を見つけた瞬間、完全にキレた。
そのまま棍棒を振り回し、聖騎士へ叩きつける!
「危ないっ! アサシンさん、援護を――!」
ドゴォンッ!!
「ぎゃああああっ!!」
聖騎士は膝へ直撃を受け、その場で悶絶しながら崩れ落ちた。
私は慌てて詠唱を開始し、水球魔法でゴブリンの追撃を妨害する。
青野も必死に叫ぶ。
「アサシンさん、助けてくださいっ!!」
「俺は影の中からお前たちを支援している」
空中から、アサシンの声だけが響く。
「……今がその“支援”必要なタイミングなんだけど!?」
「言っただろう。攻撃すれば、影状態が解除される」
再び、空気の中から声だけが返ってきた。
「……影から出ないで何を支援してるの??」
「応援している。がんばれ〜〜〜。がんばれ〜〜〜〜」
空間いっぱいに、アサシンさんの棒読み応援ボイスが響き渡った。
「なんなのこのメンバー!? っていうか『協会評価システムを何度もバグらせた』聖騎士様、なんで一瞬で膝ぶっ壊されてるの!?」
私もう心折れそうなんだけど!?
神代が肩をすくめる。
「うん。弱すぎて、協会の測定システムでも実力を検知できなかったから」
「……そういう意味だったの!? じゃあ『絶対に死なない男』って何なの!?」
「毎回、仲間全員死んでも本人だけハイドしたまま生き残るから」
「????……じゃあ『複数国家の重点監視対象』は!?」
その瞬間。
冷たい剣先が、私の背中へぴたりと押し当てられた。
振り返る。
黒マントの剣士だった。
彼は氷みたいな声で言い放つ。
「テメェら全員、前出ろ。下がったら殺す」
「……???」
神代がまた肩をすくめた。
「だってそいつ、世界中から指名手配されてる犯罪者だし。あちこちで違法行為しまくってるから、そりゃ『複数国家の重点監視対象』にもなるでしょ」
「…………」