軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第53話

「はぁぁ……やっと全部捕まえた……」

動物が死んでも魂になるっていうのは、まだ分かる。

でも――なんでこのモルモットたち、こんなに凶暴なの!?

まるで私が、とんでもないことをしたみたいな勢いで怒ってるんだけど。

今だって、彼岸花の茎でぐるぐるに縛ってるのに、まだ「チチチチッ!」って延々と罵倒してくるし。

「……待って」

そこで私は、ふと違和感に気づいた。

「……まさか」

配信コメント欄の指摘を見て、ようやく思い出す。

「あなたたち、あの……魂を吐き出してた邪教徒たち!?」

“邪教徒”という単語を聞いた瞬間、モルモットたちの怒声がさらに激しくなった。

ギャアギャアと喚き散らしながら、彼岸花の茎を噛み千切ろうとしている。

「えっ、あ、あの……本当にごめんなさい! あのとき、別に傷つけるつもりはなかったんです! 勝手に私の血を飲みに来たの、そっちですし……!」

「それに、冒険者協会の調査でも、かなりヤバいことしてたみたいですし……これ以上騒ぐなら、三途川に投げ込んで魚のエサにしますよ?」

その瞬間。

モルモットたちはぴたりと静かになった。

そして――

口から、ぽわぽわと魂を吐き始める。

「……え?」

魂が、魂を吐いてる。

……えっ、魂ってビビると魂吐くの!?

じゃあ魂の魂って何!?

っていうか――

「なんで吐き出された小さい魂まで、さらに魂吐いてるの!?」

もう何がどうなってるの……?

「魚だぁぁぁ!! 本当に釣れたぞーー!!」

三途川のほうから、突然ものすごい歓声が上がった。

「……えっ」

あの川、ほんとに魚いるんだ……!?

「しかもめちゃくちゃいる!! なにこれ、見たことない魚ばっかなんだけど!? 絶対美味そう!!」

「みんな早く釣りしろ!! 家族に釣り竿供養してもらえ!! さっき試したけど、供えた瞬間マジでこっち飛んできたぞ!!」

「えっ!? 本当に供物届くの!? じゃあ食べ物そのまま供えてもらえばよくない?」

「違うんだよ!! 三途川の魚とか、一生で一回しか食えないかもしれないだろ!? 食わなかったら絶対後悔するって!!」

「息子ーー!! 父ちゃんに核弾頭十発くらい供養してくれ!! お前がこっち来たら、父ちゃんの王位継がせてやるからな!!」

「…………」

なんか……

冥界の雰囲気、想像してたのと全然違うんだけど。

【怖くなくなりましたか?】

ポチはもう遺言を全部記録し終えていて、新しく近づいてくる死者もいなかったから、今は少し落ち着いていた。

やっぱりAIってすごい。

これ、人間だったら何日もかかるよね。

「最初はちょっと怖かったよ。でも途中で気づいたの」

「幽霊って結局、誰かに想われてた子供だったり、親だったり、恋人だったりするんだなって」

「だったら……そんなに怖がる必要、ないのかもって」

【あなたの体に取り憑いて、現世へ逃げようとする幽霊もいますよ。】

「……いや、私自身、まだ帰り方分かってないし」

【それでも不安にならないんですか? よくそんな余裕でピクニックみたいなことをしていますね。】

「帰れるかどうかは、そこまで重要じゃないかなぁ。電池と充電器さえいっぱい供養してもらえれば、別にどこでも生きていけそうだし……」

「それに、ここまで雰囲気出来上がっちゃったら、ちゃんと食べ終わってから帰りたいじゃん?」

花の種類さえ無視すれば――

ここが冥界だなんて、とても思えなかった。

まるで、お祭り会場とキャンプ場をごちゃ混ぜにしたみたい。

彼岸花の花畑の真ん中に寝転がりながら、淡い香りを吸い込んで、そっと目を閉じる。

……なんだろう。

このままずっと、ここで眠っていたくなる。

「んぅ……」

数分ほど、目を閉じて休んでいると。

頭の近くで、二人分の足音が止まった。

夕焼けの光が遮られる。

影が落ちた気配に、私はゆっくり目を開けた。

そこに立っていたのは――

腕を組み、スーツを着た牛。

そして。

同じく腕を組み、スーツを着た馬。

「………………」

私は無言で、もう一度目を閉じた。

うん。

たぶん、目の開け方を間違えた。