軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第44話

「お待たせいたしました〜〜〜! “フレッシュストロベリー・アイス運命薬”、ブルーベリー五粒トッピング、外側はチョコレートクランチ仕様です! さらに食べられる竹のミニパラソル付き〜! どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ〜〜!」

魔法使いが反応するより先に――まるで何か見えない契約に縛られているみたいに、彼は微笑みながら恭しく、私の願いを差し出していた。

「えっ? あ、ありがとう……ございます! 本当にありがとうございます!」

あんな無茶なお願いまで通るなんて……!

さすが伝説の魔法市だよ!

「それじゃあ……いただきます!

あむ〜〜……

……んぅぅぅ、おいしすぎるぅぅ!!」

フルーツとチョコで飾り付けされた高級スイーツなんて、スマホ動画やショーケース越しにしか見たことがなかった。

夢の中ですら想像できなかった味だ。

幸せすぎる!

これ、幸せすぎない!?

「最初はちょっと心配だったんです。

運命薬そのものが甘すぎるから、逆にイチゴやブルーベリーの酸味が強調されて、食べた瞬間“きゅっ”って震えるくらい酸っぱくなるんじゃないかって……

でも全然違いました!

イチゴもブルーベリーも、運命薬の甘さにまったく負けてないんです!

運命薬と同じくらい濃厚な甘さを保ったまま、果物の香りだけが爆発みたいに口いっぱいへ広がってきて……!

しかもこのチョコクランチの硬さが絶妙なんですよ!

ふわふわ系だった運命薬に“噛む楽しさ”が追加されて、食感に奥行きが出て、一気に完成度が上がってます!

8点!

今回は8点です!

魔法使いさん、料理上手すぎます!!」

「え? あ……そ、そうですか?」

魔法使いは、仮面の隙間から見える肌をほんのり赤く染めた。

「運命薬は、顧客と運命契約を結ばせるための重要な工程ですので……以前、少し味の研究を……いや、違う……私は何を……!?」

[毒効果反転が発動しました!]

【「運命契約(反転)・正義(永続)」を獲得:

魔法市の全店員は、あなたに嘘をつけなくなります】

[毒効果反転が発動しました!]

【「運命契約(反転)・吊るされた男(永続)」を獲得:

G166古代魔法文明が完全に滅亡した際、あなたの寿命が100%延長されます】

……運命薬を二本飲んだから、二回発動したのかな?

「それにしても、本当においしかったです。

唯一の欠点があるとしたら……量が少なすぎることくらいですね。

ほんと少ないです。小さいカップ一杯だけで、150mlくらいしかないし……数口で終わっちゃいました」

私は少し名残惜しくなって、空っぽのカップを見つめた。

魔法使いは深呼吸をひとつすると、再びあの神秘的で優雅な口調へ戻る。

「……市場の閉幕まで、残り三十分。

尊きお客様……まさか、未練を抱えたまま魔法市を去りたいなどとは思っておりませんよね?

さあ……あなたの最も純粋な野望を口にしてください。

先ほど、二本目の運命薬を飲まれましたので――特別に、もう一つ願いを叶えて差し上げましょう」

「まだ飲めるんですか!?!?」

「いや違っ……私はそういう意味で言ったのではなく! たとえば世界征服とか……! 女王になりたいとか! 死者を蘇らせたいとか! 富、権力、力……もっと大胆に願ってもよろしいのですよ!」

「今回はスイカ味にできますか?」

「できますが……」

「クッキー追加もありですか!?!?」

「……」

十分後。

[毒効果反転が発動しました!]

【「運命契約(反転)・女教皇(永続)」を獲得:

G166古代魔法文明が完全に滅亡した際、魔法文明の全知識を継承します】

【「運命契約(反転)・皇帝(永続)」を獲得:

いかなる力によっても、思考を支配されなくなります】

【「運命契約(反転)・戦車(永続)」を獲得:

10年後、あなたはG166魔法文明への戦争を開始します。

(「皇帝」の効果により、思考支配は無効化され、この契約は打ち消されました)】

「……先ほど運命薬を飲まれたことで、あなたには願いを一つ叶える権利が与えられています」

「魔法使いさんって、本当に優しいですね!

ポチ以外で、こんなに私によくしてくれた人、初めてです!」

「……」

「魔法使いさん? どうして黙ってるんですか?」

「……」

「あ、そうだ。ステーキの味って知ってます? あれも一回食べてみたくて……運命薬でああいう味にできたりしません?」

「……………………」

なぜか、魔法使いさんはずっと時間を気にしていた。

なんというか――学校の最後の授業で、先生の話がもう全然頭に入ってこなくて、耳だけが完全に終業チャイム待ちになってる感じだ。

「魔法使いさん……? 魔法使いさん?」

「……」

魔法使いは俯いたまま、自分の仮面に手を当てた。

肩が、かすかに震えている。

「理解できない……」

声まで震えていた。

「えっ、どうしたんですか? どこか具合悪いんですか?」

私は少し心配になって、魔法使いさんを見つめる。

「理解できない……

運命の輪に、一体何が起きた……」

「?」

「運命は……なぜ……

なぜ……

私に……

豚なんかを引き合わせた……」

「???? ひどすぎる!? 今のめちゃくちゃひどいです!!」

「……もっと大胆な願いはないのですか!? あれだけ運命薬を飲んでおきながら!!

腹いっぱい食べたいだけなら、なぜ王になりたいと願わないのです!?

なぜ『世界をぶっ壊せる力が欲しい』とか願わないのですか!?

そうすれば全部手に入るでしょうが!!!」

「今、私のこと豚って言いましたよね?

そのお返しです!

次の運命薬は、ステーキ味にするだけじゃなくて、ちゃんとステーキみたいな食感にしてください!

さらにマッシュポテト添えで、鉄板焼きのエビも付けてください!! ふふ〜ん♪」

「……人の話を聞けえええええ!!!」

十分後。

[毒効果反転が発動しました!]

【「運命契約(反転)・教皇(永続)」を獲得:

30年後、魔法市の全店員があなたの従業員になります】

【「運命契約(反転)・運命の輪(永続)」を獲得:

魔法文明が蓄積した『幸運値』が、時折あなたを助けます】

【「運命契約(反転)・愚者(永続)」を獲得:

永遠に羊になりません】

「……げふっ」

今度こそ、本当にお腹いっぱいだった。

私はいつも空腹だけど、別に異常な大食いってわけじゃない。

ただ、食べるものがないことのほうが多かっただけだ。

無意識にお腹をぽんぽん叩く。

少し膨れていて、ぱんぱんだ。

「あ〜……こんな満腹になるまで食べたの、久しぶりかも」

「……やっと……」

なぜだろう。

魔法使いさんの仮面から、どこか“解放された”みたいな安堵を感じた。

「本当にありがとうございました、魔法使いさん。

あなた、私が今まで会った中で一番料理が上手な魔法使いです」

私は心からそう感謝した。

ドンッ!!

魔法使いの杖が、勢いよく机へ叩きつけられる。

「……世辞は結構!!

今のあなたの願いは何です!?

腹が満たされたなら、ここからが本番でしょう!!

さあ、願いを言いなさい!!」

「あ、そっか。また一杯飲んだから、もう一回願い事できるんでしたね」

私は考え込む。

「さあ来い!!!」

魔法使いは勢いよく立ち上がり、高く杖を掲げた。

激流のような魔力が竜巻となって吹き荒れ、屋台の中のあらゆるものを巻き上げる。

杖の先端には、超高密度に圧縮された魔力が、太陽みたいに輝いていた。

その瞬間。

私はぴこんっと閃いた。

「思いつきました」

「来るがいい――フハハハハ!!

八重運命に縛られし駒よ!!

たとえどれほど狂気に満ちた願いであろうと、我が必ず叶えてみせよう!!

さあ――

運命の輪よ!!

開け!!

聞き届けろ!!」

私は魔法使いさんへ向かって、すっと指を一本立てる。

「味違いの運命薬、あと百個テイクアウトでお願いします」

「……」

ぷつっ――

その瞬間だった。

周囲を渦巻いていた風も、眩い光も。

一瞬で、完全に消えた。

魔法使いも。

黒布に覆われた屋台も。

仮面をつけた客も、店主たちも。

全部、消えていた。

私の目の前に残されていたのは――

運命薬、三杯だけ。

……なんで三杯?

待って。

もしかして、残り三杯しか在庫なかったの?

だから“百個持ち帰りたい”って願った瞬間……

システムごとバグったとか???