軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

66.悪役令嬢の兄は苦労性。

学園祭当日。

最新型の 映像記録水晶(カメラ) を手に取り満面の笑みを浮かべた私は、

「はわぁぁぁ、ついに神アイテムが私の手にっ」

頬ずりせんばかりの勢いで愛で倒していた。

「さっすがお兄様! 私専用のカスタマイズ仕様が神過ぎる」

最新型の映像記録水晶はカメラというか、見た目は最早普通にスマホの体を成している。

まぁ、通話もネットもこの世界には存在しないのでそんなことはできないんだけど。

一眼レフも好きだけど、手軽な写真撮影も夢が膨らむわぁと私はニヤニヤが止まらない。

「喜んでもらえたなら何よりだ。が、生徒会の件はすまなかったな」

今すぐNew映像記録水晶を片手にスチル回収に繰り出しそうな私に、落ち着けと待ったをかけたお兄様は、改めて私にそう謝罪した。

「ん? 私それは全く気にしておりませんわよ?」

これもゲームの強制力というやつなのだろうか?

お兄様の期待以上の成績を上位に修めた私だけど、私の生徒会入りには待ったがかかった。

主な原因は先に生徒会役員候補だった、ルシファーとサイラス。

あの試験結果発表の日以来、私は度々彼らに絡まれているのだ。

そしてトラブルのたびに不利な状況に持ち込まれるのは悪役令嬢である私の方。

無用なトラブル回避のためにエンカウントは避けた方が良い。

そんな結論に至り、私の生徒会入りは流れた。

ちなみに空いたポジションには復学したクロエが入り、こっそり2人について調査してくれている。

「私としては、こちらの魔法道具をお兄様に作って頂けただけで御の字! 辛かった試験勉強の日々も学習内容ごと忘れそうですわぁ」

「そうか。とりあえず学習内容は覚えとけ。基礎だし」

私のボケをいちいちちゃんと拾ってくれるあたりにお兄様の愛を感じ、私は満足気に微笑む。

「あー学園祭楽しみ。何撮ろうかしら?」

特別クラスの劇はマストとして、生徒会入りしたロア様やライラちゃんの役員ぶりもやっぱり撮りたい。

ワクワクが止まらない私に、

「……なぁ、リティカ。なるべく、例の2人を避けた行動をして欲しい。あと、この件には触れるな」

お兄様が心配そうに声をかけてきた。

「今までも私自分から絡みに行った覚えがサラサラないのですけれど。後者は難しいご相談ですわね」

何せ自分の身の安全がかかってますからと私はお兄様の紫暗の瞳を覗き込む。

「詳しくは言えないんだが、アイツらは今、普通の精神状態じゃない」

だから近づくなとお兄様は私に警告する。

「にも関わらず、生徒会役員にして手元に置いた、と。お兄様、何か彼らがそうなってしまった原因についてご存知なのですか?」

じーーーっと見つめ続ければ、耐えきれず先に逸らしたのはお兄様。

「沈黙は肯定とみなします。お兄様、将来賭け事には決して手を出してはなりませんよ? 私にはお兄様が身ぐるみを剥がされる結末しか見えません」

まぁその場合は私がお相手の身ぐるみ剥がし返しますけど。

私のお兄様に手を出そうだなんて、万死に値するわと私は黒い笑みを浮かべる。

「……リティカ、お前本当に父上似だな」

「自覚はありますけど、私あそこまで節操なく状況を引っ掻き回して楽しんだりする嗜好は持ち合わせておりませんよ?」

最近の城内の荒れ具合と屍と化した大臣達の顔を思い浮かべ、私はイヤイヤと手を軽く振る。

「頼むから。ほんとーに心の底から頼むから父上のようになるのだけはやめてくれ」

お兄様はそう言って切実な顔をする。

あらあらまあまあなんてこと。

私の知らない間に、随分とお父様と仲良くなったのねと嬉しくなった私は、

「それはお兄様次第ですわね。素直に情報吐くなら譲歩して差し上げますけど?」

ニヤニヤしながらどうします? と尋ねる。

だが、お兄様は静かに首を振っただけだった。まぁ、そうよね。未来の王様の側近にこの程度で音を上げてもらっては困る。

「はぁ、お前といい。ロア様といい。胃に穴が空きそうだ」

「あら大変。お兄様ってば気苦労が絶えませんわね」

「確かにそうだが、原因その1がそれをいうのはどうなんだ」

なんで他人事なんだよとお兄様は盛大にため息を漏らす。

「心配、いりませんわ。その気苦労も私が家を出たら半分に減りますわよ」

苦労性なお兄様にクスッと笑う。

「バーカ。リティカが家を出て嫁いだところで王城なんて目と鼻の先。俺が本格的に登城するようになればそれこそ今と変わらずほぼ毎日顔を合わせるんだ」

これから先もずっとなとお兄様は優しげな笑みを浮かべて、甘やかすかのように私の頭を撫でる。

「ふわぁぁぁーーーー!! お兄様、イケメンがイケメンなこと急にするなんて反則ですっ」

ツンデレの突然のデレ。キタコレ尊い!! と叫ぶ私に、

「とりあえずリティカは母国語の履修しなおそうな」

ハイハイと流すお兄様は呆れたような声でそう言ったけれど、子どもの頃にお兄様が私に向けていた冷たい視線はもうそこには存在しなかった。