軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

209 二つ名持ちの冒険者①【アイル視点】

「これは……?!」

善戦を続けていたアイルのもとに凶報が入った。

『申し訳ありません……ここまで見抜けず……』

領地の入り口、そこで騎士団を足止めし、森からの侵入者は逐一戦力を当てることで領内での戦闘は避けてきたのだが、ついに中に侵入を許し、控えていた隊がまるまる一つ消し飛んだという報告が入ったのだ。

「この状況で見つけられなかったならもう、誰のせいでもない……」

『お嬢様……?』

「もうすぐに動ける最上位種はいない。私が出る……!」

この決断を、ロバートは止めなかった。

いや、ロバート自身も、そうせざるを得ないことを感じ取っていたのだ。

領地に侵入した実力者は、ロバートが索敵用に用意し鍛えたものたちをかいくぐり、あるいは倒してここまで来た。

つまり……。

「相手は、Sランク超級……」

これまでのアイルであれば、戦おうなどとはまず思わなかっただろう。

アイルの実力はすでに本人でも気づかずにSランク超級の域に達しつつある。

だがアイルにその自覚があったとしてもなお、過去のアイルならば挑もうとは思わなかったはずだ。

いや、アイルだけではない。普通の人間は、勝てるか勝てないかわからない相手に積極的には挑まない。

だが今は、だからといってアイルが逃げれば、領地は壊滅する。

それでもランドたちならもう一度持ち直すとしても……。

「私が……やる……!」

アイルは立ち向かうことを選んだ。

その選択が愚かな選択であれば、ロバートは許しはしなかった。

だが……。

「この状況を打開できるとしたら、人間の私だけだから」

セラが作った装備を身にまとい、ロバートに本陣指揮を預け、アイルが戦場に出た。

「なんのつもりだ……?」

「んー? どうにもきな臭いと思ってね、今回の依頼が」

「俺の質問に答えろ!」

旧アルバル領生活区域。

アイルが目指すこの場所にいた二人の冒険者が、口論を繰り広げていた。

「いやぁ、だってほら、どう見てもあれ、倒さないといけない相手に見えなくてねぇ」

「それが仕事だろう」

「私はそこまで、ギルドの犬に成り下がったつもりはないからねぇ」

「俺を犬と言ったか……?」

進軍してきたはずの冒険者の一方が、ここに来て反転し、あろうことか武器を構えたのだ。

「お前はすでに殺しただろう。この地のアンデッドを!」

Sランク冒険者。

その中でも抜きん出た実力を持つ二人だった。

金色の大槌、グローディア。

ドワーフらしい低身長で毛むくじゃらながら、横幅は常人の数倍という不思議な見た目の男。

自ら打った黄金の槌と全身鎧に身を包んでおり、その特徴的な外見から大陸でも有名な冒険者だった。

もちろん、単独でSランクに認定されており、活動歴も長いベテラン。実力も際立ったものがある。

「降り注ぐ火の粉を払っただけなのと、目の前に生活する相手を攻撃するんじゃぁ話が違うでしょ?」

対する女冒険者は、対象的にすらっとした長身。

そして単独Sランク認定もまだ最近の若い人間……。

「ならばどうするというのだ! 暴風の小娘よ」

暴風のルミナス。

かつてランドにSランク認定を出したあの冒険者だった。

「おっ、ちょうどいいところに来たよ。やっぱり生きた人間、いるじゃない」

「なに……?」

二人の視線が、現れた人間……アイルに集中した。