軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22話『解体作業』

爆弾の件をエリシアたちに説明した日の放課後、俺は久々に鷹組のメンバーたちと合流し、フィジカルレースの練習場へ足を運んだ。

「お、来たなサボり魔」

フィジカルレースに出場するチームメイトが、俺の顔を見てニヤニヤと笑う。

「サボっているわけではないが……」

「分かってるって。特訓だろ? でも偶には練習に来いよ。フィジカルレースはリレー形式なんだから、多少はコンビネーションも鍛えておかないとな」

チームメイトの正論に、俺は素直に頷いた。

軽くストレッチを済ませた後、フィジカルレースの練習が始まる。

コースを走りながら、俺はさり気なく周囲に爆弾がないか確認した。

今のところ爆弾はどこにも見当たらない。これはある程度、予想していた。フィジカルレースは魔法具を使わないし、本番のコースもここではない。爆弾を仕掛ける場所がないだろう。

「おぉ……やっぱ速いな、お前」

練習が終わった後、チームメイトが声を掛けてきた。

「そうか?」

「チームで一番速いと思うし、アンカーをやればどうだ?」

その提案を聞くと同時に、視界の片隅に佇む英雄科の生徒が顔を顰めた。

盗み聞きしていたのだろう。フィジカルレースはただでさえ目立ちにくい競技だ。英雄科の生徒が、せめてアンカーにならねばと使命感に燃えるのも無理はない。

「……いや、アンカーは遠慮しておく。流石にそこまでの自信はない」

「そっか。まあ無理強いはできないな。でも、獅子組の選手も速い奴が揃ってるらしいから、あんまり油断すんなよ」

チームメイトの忠告を俺は真面目に受け入れた。

工作員との駆け引きに気を取られて、俺自身が競技祭を疎かにするのは本末転倒だ。シルフィア先生から新しい魔法を学んだ以上、それを試したい気持ちもある。フィジカルレースの練習もそろそろ本格的に始めた方がいいかもしれない。

「トゥエイトさん」

練習が終わり、休憩していると、背後からミゼが声を掛けてきた。

その神妙な面持ちを見て、俺は場所を変える。

「見つけたか」

「はい。スレッジハンマーで使用する魔法具に、爆弾が」

スレッジハンマーは、ダメージを数値化する魔法具に対し、制限時間内に最も大きなダメージを与えたチームが勝利するという競技である。この競技で使用される魔法具は二つ。ダメージを数値化する魔法具と、自由に使用可能である巨大なハンマーだ。

「どちらの道具に爆弾が仕掛けられていた?」

「ダメージを数値化する魔法具です」

「そうか。……まあ、ハンマーの方は実際に使用されるか分からないから、当然か」

これで爆弾が仕掛けられた競技は、ドライブレース、エクソダス、スレッジハンマーの三種となった。帝国の工作員は見境なく爆弾を仕掛けているらしい。会談の中止を促すためにも、できるだけ大きな被害を出したいのだろう。

「あの、それで解体の件なんですが……」

「解体は今しなくても問題ない。失敗すれば被害が出るからな」

「はい。ですが、その……多分、《叡智の道》を使えば短時間で解体できると思います」

本当に有能だな――。

どうりでアルケディア王国が欲しがる筈だ。

「今すぐに解体可能ということか?」

「はい」

「分かった。念のため俺にも確認させてくれ」

当初の予定では、昼間は爆弾を探すことだけに集中し、解体は夜間に行うつもりだった。だが夜間に学園内で行動すれば、また工作員と接触する可能性がある。昼間に解体できるならそれに越したことはない。

スレッジハンマーの練習はまだ始まっていないらしい。練習が始まる前に、素早く倉庫まで移動して、爆弾が仕掛けられた魔法具を見つける。

爆弾は魔法具の底に仕掛けられていた。ぱっと見るだけでは何も気づかないが、注視すれば僅かに盛り上がっている部分があると分かる。競技祭での見栄えを考慮して、表面に貼り付けられていたカラーシートを剥がすと、その内側に仕掛けられていた爆弾が姿を現した。

「よく見つけられたな」

「トゥエイトさんが爆弾の仕掛けられやすい場所を教えてくれましたから。おかげで効率よく探すことができました」

大戦時は俺も爆弾を仕掛ける側になったことがある。その時の経験をもとに、工作員たちの行動を予測していた。

「では、解体を始めます」

そう言ってミゼは、両手を爆弾に向ける。

ふわり、と風が吹いたような気がした。見ればミゼの掌から、薄っすらと魔力の波が放たれている。

「外部から魔力を操作するだけで解体できるのか」

「はい。多少、器用な操作は必要になりますが、 魔法制御力(コントロール) がCランク以上の方なら同様のことができるかと思います」

エリシアの 魔法制御力(コントロール) はD、グランに至ってはEなので、解体は俺とミゼにしかできない。獅子組の方で見つかった爆弾は、後ほど俺たちで解体することにしよう。

「終わりました」

「……凄いな。助かった」

「えへへ……トゥエイトさんにそう言っていただけると、頑張った甲斐があります」

ミゼが嬉しそうにい言う。

「度胸がついたな」

ほぼ無意識に、そんな言葉を口にしていた。

少し前のミぜなら、こんな風に毅然とした態度で爆弾の解体に臨んでいなかったように思える。

「伊達に、トゥエイトさんと一緒に旅したわけじゃありませんから」

過酷な逃避行のことを思い出す。

散々苦しんだ旅だったが、得るものはあったのかもしれない。

「それにしても……大丈夫でしょうか、このまま練習を続けて」

一旦倉庫から出た後、ミゼがグラウンドの方を見つめながら言う。

「目的が会談の阻止なら、このタイミングで起爆しても効果は薄い。今なら会場を変えるだけで、日程までは延期されないからな。寧ろ当日の警備が強化されて向こうにとっては不都合だ」

「なるほど……言われてみれば、そうですね」

深刻な表情でミゼは頷く。

その様子に、俺は少し口調を柔らかくするよう意識して告げた。

「こちらから巻き込んでおいて申し訳ないが、もう少し気を抜いてもいい。競技祭を守りたい俺たちが、競技祭を素直に楽しめないのはおかしいからな」

「……それもそうですね」

俺はこの手の作業に慣れているため、簡単に気持ちを切り替えられるが、ミゼはそうもいかないだろう。彼女たちを巻き込んだ手前、必要以上のプレッシャーは与えないよう注意したい。

「一度練習に戻るか。また空き時間がきたら爆弾探しを再開しよう」

「はいっ!」

元気よく返事をするミゼと共に、グラウンドの方へ向かう。

しかし、練習に励む鷹組のメンバーたちと合流するつもりだったが……グラウンドの中心からは、何やら喧騒が聞こえていた。

「騒がしいな」

「何かあったんでしょうか……?」

練習は中断されているらしい。何が起きているのか疑問に感じながら人集りの方へ向かう。

人集りの中心には、赤髪の男――バレンがいた。