軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編4、婚約成立

タウンゼント公爵領の領主邸に転移をした俺は、クリストフ様たちへの挨拶もそこそこに、リュシアンを呼んでもらった。

応接室にやってきたリュシアンに開口一番。

「リュシアン! 婚約者は決まった!?」

そう聞いたら、リュシアンは怪訝な表情で首を傾げた。

「なんでそんなこと聞くんだ? 決まってないぞ」

「なんで、なんで決まってないんだ……」

両手両膝をついて項垂れると、リュシアンに腕を引っ張られて無理やり立たされる。

「どうしたんだ? 悩みがあるなら聞くぞ?」

心配そうに問いかけてくれるリュシアンは、やっぱり良いやつだ。最高の友達だし、リュシアンにならマリーを預けられる――と思ってしまう。

「リュシアン、なんでそんなに良いやつなんだよ!」

「……私は褒められてるのか怒られてるのかどっちだ?」

「どっちも……!」

それから少しして落ち着いた俺がマリーの婚約者の件をポツポツと話すと、リュシアンは全てを聞いてから楽しそうに笑い出した。

「ははっ、それであんな態度だったのか。レオンは本当にいつまでもマリーちゃんが好きだな」

「好きに決まってる」

「分かった分かった。それで婚約者の件だったな」

リュシアンのその言葉に、俺は緊張してごくりと生唾を飲み込んだ。するとそんな俺の緊張が分かったのか、リュシアンはなかなか次の言葉を発さない。

「――――早くっ」

あまりにも焦らされて思わず声を掛けると、リュシアンは楽しそうな笑みを浮かべた。

絶対にわざと黙ってたやつだ……!

「レオンはマリーちゃんが絡むと本当に面白いな。婚約者の件、もちろんありがたく受けさせてもらおう」

今度はさらっと回答を口にしたリュシアンに、俺はどんな反応をすれば良いのか分からなかった。断られても困るけど、受けてもらえるのも素直に喜べない。

「……マリーのことを好きなの?」

思わずそんな質問をすると、リュシアンは少しだけ考えてから首を縦に振った。

「好きか嫌いかで言えば、確実に好きだな。明るくて一緒にいるだけで元気になれるだろう?」

「……分かる」

「それに可愛らしいし、努力家だ」

「……マリーは世界一可愛い」

俺の言葉に苦笑を浮かべたリュシアンは、少し真剣な表情で口を開いた。

「ジャパーニス大公家とならば、家同士の問題も起こらないし、この国の勢力図が大きく変わることもないだろう。またマリーちゃんを得て自らの地位を上げようと考える者は多数いるだろうから、その心配もなくなるぞ」

「……確かにそうなんだ」

実際にマリーとの面会打診は山のように来ている。俺が全部マリーには伝えず破棄してるけど、王立学校に行ってるマリーには直接声をかける子息もいるだろう。

そう考えると、やっぱりマリーを守ってくれる存在が必要だ。

「――リュシアン、マリーを頼む」

小さな声でそう伝えると、リュシアンは楽しそうに口端を持ち上げた。

「もちろんだ。義兄上?」

「リュシアン、楽しんでるだろ!」

「そんなことはないぞ?」

そう言って笑うリュシアンは心から楽しそうで、マリーを託して本当に良かったのかと心配になってくる。

でもリュシアン以上の相手はいないことも事実だ。

「マリーを不幸にしたら許さないからな」

「ああ、絶対幸せにする。とりあえず……私を王都に連れて行ってくれないか? やはり男である私から正式に婚約打診をしなければな」

「……分かった。今は魔力がないから明日な」

「それまでに準備をしておこう」

そうして俺はリュシアンを連れて、マリーの下へ戻ることになった。

クリストフ様やソフィア様にも二人で話をしたけど、マリーがリュシアンの婚約者となることには大賛成をしてくれた。

次の日の昼過ぎ。俺とリュシアンは王都のジャパーニス大公邸に戻った。今日はちょうど王立学校が休みの日で、マリーは屋敷にいる。

リュシアンを連れて帰ってきたことを伝えたらマリーは急すぎると怒り、それから慌てて準備をして数時間後。二人は庭園の東屋でお茶会をすることになった。

俺は仲人的な立場でとりあえず同席してるけど、正直今すぐに退席したい。いや、二人っきりにするのもまた微妙だけど、この場にいるのも辛い。

「マリーちゃん、久しぶりだな」

「リュシアン様、お久しぶりです!」

二人は色々な場面で交流があるので、結構仲が良い関係性だ。

「今回は光栄な話をありがとう。とても嬉しく思う」

「いえ、急なお話となってしまい申し訳ございません。それで、ご迷惑でしたでしょうか……?」

躊躇いながらもそう聞いたマリーに、リュシアンは笑顔で首を横に振った。

「迷惑などあるはずがない。――マリー嬢、私の婚約者となってくれるだろうか。生涯かけて君を幸せにすると誓おう」

真剣な表情でそう伝えたリュシアンに、マリーは頬を僅かに赤く染めながら嬉しそうに頷いた。

「はい! よろしくお願いいたします。私も生涯、リュシアン様を隣でお支えします」

「ありがとう。心強いな」

俺が血涙を流しそうになっている横で、そうして二人は婚約者となった。

それからも二人は楽しそうに話をしていて……俺は退席しようとしたんだけど、マリーが優しさを発揮し、「お兄ちゃんも一緒に食べよう?」と言ってくれた。

俺がそれに抗えるはずもなく――楽しいけど寂しいという不思議なお茶会に、結局最後まで参加することになった。

この後、マルティーヌに会いに行こうかな……。