軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

470、マルティーヌのところへ

「アレクシス様、マルティーヌの居場所が分かりました」

俺のその言葉を聞いたアレクシス様は、驚愕に瞳を見開きソファーから立ち上がった。

「そ、それは本当か!?」

「はい。王都から北に少し離れた場所です」

「まだレオン君が来てから数分しか経っていないというのに……さすがだな」

「ミシュリーヌ様が頑張ってくださったんです。今度お礼でも伝えてあげてください。」

リシャール様の言葉にそう返すと、この部屋にいる俺の関係者以外全員がその場で跪いた。しかし少ししてすぐに立ち上がり、俺に続きを促す。

「それで、マルティーヌは無事なのか……?」

「怪我はしているようでしたが無事です。これから俺が助けに行きますので、少し待っていてください」

魔力が潤沢なら転移で助けて帰ってくるのに数秒だったんだけど、魔力はほとんどないのでファブリスに乗っていくしかない。戻って来られるまで……数十分かな。

俺はとりあえず無事という情報に安堵しているアレクシス様たちを横目にファブリスに乗り、バリアで自分を固定した。

「ではさっそく行ってきます。もし何かあったらミシュリーヌ様を通して連絡するかもしれませんので……ロジェとローラン、連絡係として中心街の礼拝堂に居てくれる?」

「かしこまりました。お任せくださいませ」

この中では一番ミシュリーヌ様に慣れてるだろう二人を指名すると、頼もしく頷いてくれた。やっぱりとても頼りになる存在だ。

「じゃあファブリス、行き先は教えるから走って欲しい」

『もちろんだ。任せておけ』

「レオン、マルティーヌのことを、どうかよろしく頼む」

「もちろんです。絶対に助けます」

俺はアレクシス様の言葉にしっかりと頷き、ファブリスと共に王宮を飛び出した。

「街や人に被害が出ないぎりぎりでとにかく急いで」

『難しい注文だな……ただ任せておけ。我に出来ないことはない』

ファブリスは得意げにふんっと笑うと城壁に飛び乗り、さらに頑丈そうな石造りの建物に飛び移る。

さすがファブリス、身軽だな。

『敵はどこにいるのだ?』

「北寄りに王都を出て、街道もない草原の中にいる」

『草原なら見つけやすいな』

「うん。ミシュリーヌ様にも案内してもらえるから、迷うことはないと思う」

屋根を飛び移るファブリスの姿は大勢の人に見られていて、しかしどちらかというと迷惑というよりも、尊敬の眼差しを向けられている感じだ。

街でもかなり被害があったって話だし、俺たちが敵を倒してくれるって期待を向けられてるのかもしれないな。

その期待に応えられるように頑張ろう。使徒がいる国を襲撃したらどうなるのかを知らしめないと。

『そろそろ王都を出る』

「了解。ミシュリーヌ様、マルティーヌはさっきまでと同じ場所ですか? 俺たちが進む方向は合ってますか?」

『そうね……もう少しだけ西寄りよ。マルティーヌは先ほどまでと変わらないから大丈夫』

「ありがとうございます」

ミシュリーヌ様の声がファブリスにも聞こえたのか、ファブリスが少しだけ進行方向を変更する。

『ファブリスの速度なら十分ほどで着くわ。近くに仲間が三人いるから気をつけなさい。全員が違う獣に乗ってるわよ』

「獣も……分かりました。――ミシュリーヌ様、今回の獣ってどういう存在なのでしょうか。それに襲撃者も。特殊能力を持っているみたいなのですが」

俺が聞いたその言葉から数秒間の沈黙が流れ、ミシュリーヌ様の落ち込んだような小さな声が聞こえてくる。

『それが分からないの。また別の世界との繋がりがあったのか、それとは別の理由で生まれたのか……必死に調査をしているところよ』

「そうですか」

『――レオン、ごめんなさい。問題ばかりの世界で』

その言葉は今まで聞いたことがないほどに弱々しく、俺はすぐに首を横に振って否定した。

「そんなことないです。確かに問題も多いですが、俺はここで暮らしていて楽しいですよ」

『……レオン、ありがと』

絶対今照れてるんだろうな……そう考えたら微笑ましくなってきて、少しだけ頬が緩んだ。

それから数分間、ミシュリーヌ様に指示をしてもらいながら走るファブリスに揺られていると……遠くに動くものが見えてきた。

「あれかな」

『そうだな。背中に籠が乗っている。このまま突撃すれば良いか?』

「そうだね……うん、気付かれてないうちにマルティーヌを取り返したほうが良いだろうし、このまま行こう。俺はマルティーヌが閉じ込められた籠を獣から引き剥がすから、ファブリスには獣と乗ってる人への対処をお願いしたい。人は……倒してくれて良いよ。生死は問わない」

直接的な言葉は口にするのが躊躇われてそんな言い方をすると、ファブリスは意図を汲んでくれたのか頷いた。

「それから逃げようとした人がいたら、その人はそのまま逃してほしい。アジトを突き止めたいから」

『分かった。任せておけ』

そんな話をしている間にも敵との距離は近づき、あと数十秒で相対するところまで来た。この辺りまで来るとさすがに相手も気付いたのか、獣に乗る人間が焦ったように鞭を打っているのが見える。