軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

427、降誕祭前夜祭in神界 中編

初めて見る他国の風景を皆で眺めながら心地よさそうな東屋を探していると、この国の特権階級が住んでいるのだろう屋敷の庭に、初めて見るタイプの東屋を見つけた。

ラースラシア王国の東屋は土足でテーブルと椅子があるタイプだけど、今映像に映っているのは靴を脱いで上がるタイプの東屋だ。

東屋の床が一段高くなっていて、そこにふかふかのクッションが敷かれ毛布が置いてあり、真ん中にはテーブルが固定されている。

「この東屋、面白いですね」

「私もそう思ったわ。長方形でかなり大きいし、レオンの国のタイプよりこっちの方が良いかも」

「大人数で寛ぐならこっちの方が良さそうね。それにファブリスも寛げるんじゃないかしら?」

シェリフィー様が発したその言葉に、ファブリスが嬉しそうに尻尾を振りながら頷いた。

『我でも寛げそうです』

確かにファブリスには、このタイプの東屋の方が良いのか。いつもは東屋でお茶会をするとなると、ファブリスは地面に直に座ったり寝そべったりしている。大公家の東屋をこのタイプに変えようかな……それかこのタイプのやつも増設するか。

「じゃあこれにしましょう!」

ミシュリーヌ様は即決したようで、映像をじっと凝視してから両手を振って、目の前に東屋を作り出した。本当に一瞬だ。瞬きほどの時間で音もなく東屋が出現した。

「神力って凄いんですね……」

「神の力なんだから凄いに決まってるじゃない。東屋はこれで完成で良いかしら?」

「良いと思うわよ。じゃあ次は庭園を作りましょうか」

シェリフィー様は花が好きなのか、楽しそうな声音でミシュリーヌ様が作り出した庭園の写真を吟味し始める。

「ミシュリーヌ、この写真の庭園がある国の他の庭園も見てみたいわ」

「この写真ね……確かこの辺りの国だったはずよ」

二人が覗き込んでいる写真に写っていたのは、白い小さな花がたくさん咲き乱れた低木が密集している庭園だった。完璧に整えられた庭園というよりも、自然の雰囲気を残しつつも幻想的な雰囲気を感じられる作りとなっていて、とても目を惹かれる。

「ああ、この国じゃない?」

「ここね! あっ、あそこの庭園をアップして?」

「ここかしら……」

「そうそう、このピンクの花ってこの写真の白い花と色違いよね?」

「確かにそう言われると……そう見えるわね」

「この花の色違いを上手く設置したら絶対に綺麗よ!」

確かにそれは想像だけで綺麗だ。俺は元々大きな一輪の花よりも、小さな花が咲き乱れている方が好きなのだ。だから日本では桜の花が凄く好きだった。風に花びらが舞うのって最高に綺麗だよね。

「じゃあこれにしようかしら。この庭園をそのまま作り出せば良いの?」

「それじゃあダメよ! 一本ずつ作り出して、自分で最高の庭園を作り上げないと!」

シェリフィー様が拳を握ってやる気十分でそう宣言すると、ミシュリーヌ様は面倒くさそうなうんざりとした表情を浮かべて一歩後退った。しかしシェリフィー様にすぐ捕まって、東屋の周辺まで連行される。

これは庭園の完成までかなり時間がかかりそうかな。一本ずつ位置を決めて花を作り出していくなんて、早くても一時間はかかるだろう。

「ファブリス、ちょっと寝て待ってようか」

『うむ、時間がかかりそうだからな』

「一足先に東屋で寛いじゃう?」

『そうしよう』

俺の提案にファブリスは楽しそうに頷いて、尻尾をゆらゆらさせながら東屋のクッションの上に寝そべったので、俺も靴を脱いでファブリスの隣に寝転がった。

「ふぅ……幸せかも」

『これは良いな』

「あっ! 二人ともずるいわよ!」

「ミシュリーヌは庭園を作るのが先よ!」

俺達が寛いでるのを見つけてこっちに飛んでこようとしたミシュリーヌ様は、シェリフィー様に腕を掴まれてまた庭園予定地に連れて行かれたみたいだ。

「ミシュリーヌ様、頑張ってください」

それからはファブリスとのんびり寛ぎながら、大公家にもこのタイプの東屋を作るとしたらどこに作るかなんて話をしていたら、二人の歓声が聞こえて来た。やっと庭園が作り終わったみたいだ。

「終わったわ!」

「凄く素敵になったわね」

クッションから起き上がって辺りを見回してみると……色とりどりの小さな花が咲き乱れた、幻想的な花畑が広がっていた。

「綺麗ですね……」

「そうでしょう? 色合いのバランスには特に力を入れたのよ」

「シェリフィーのこだわりには疲れたわ」

「でもそのおかげで綺麗になったでしょう?」

「まあそうだけどね。じゃあ庭園もできたことだし、スイーツパーティーをやるわよ!」

ミシュリーヌ様はやっとスイーツにありつけるとテンション高く拳を掲げ、東屋まで凄い勢いで飛んで戻って来た。俺はそんなミシュリーヌ様の様子を見て、花畑を見て感動していた気持ちが霧散する。

ミシュリーヌ様、せっかく綺麗で幻想的な風景を作ったのに台無しにしてるよ……まあそれこそがミシュリーヌ様なんだけど。

「まずは降誕祭用のミルクレープよね! あとは新しく開発されたコーヒーのスイーツとシナモンを使ったスイーツ、それからチョコレート。そうだ、フルーツティーもあるわね! あとはシュークリームとショートケーキ、クレープ、シフォンケーキ、クッキー…………」

おお……凄い量だな。ミシュリーヌ様はここぞとばかりにテーブルに乗り切らない量のスイーツを作り出していく。今回で減った神力を補填するために、魔物の森に行って魔植物を討伐しよう……アイテムボックスの魔法具の中身が消滅すると神力に変換される機能、本当にありがたいな。

「ミシュリーヌ、さすがに作り出しすぎよ。そのぐらいにしておきなさい」

「分かったわ。……ふふ、ふふふっ、最高の景色ね!」

ミシュリーヌ様はテーブルからはみ出してクッションの上にまで置かれているスイーツの山に、頬を緩めまくってだらしない笑みを浮かべた。

『最高の光景です』

「ファブリスもそう思う!? さすが私の神獣ね!」

『さっそく食べましょう』

「ええ、もちろんよ。じゃあ、スイーツパーティーの開始よ!」

ミシュリーヌ様が嬉しそうな声音でそう宣言したことで、降誕祭の前夜祭がスタートした。凄く楽しい一夜になりそうだ。