軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

423、フルーツティー

子供には濃い紅茶じゃなくて薄い紅茶が出されるからまだマシだとしても、やっぱり苦味や渋みはある。もっと子供にも美味しい紅茶があったら良いんだけどな……

「そういえば、この国って紅茶に果物を入れたりしないよね」

旧チェスプリオ公国には花の香りがするお茶があったし、他の国にはあるのだろうか。ただ今まで遭遇したことはない。

「ロジェ、フルーツティーってこの国にある?」

「フルーツティーとは、果物の香りがするお茶のことでしょうか?」

「うーん、まあ似たようなものかな」

「それならばございます。ただそこまで主流ではなく、一部の女性貴族の間で飲まれている程度です。……確かお屋敷にもございますが」

「え、そうなの? じゃあ淹れてくれる?」

「かしこまりました」

まさか存在していたなんて。紅茶の茶葉を売ってるお店には行ったことがないし、今まで紅茶にそこまでの興味はなかったからな……ロジェが淹れてくれたものを美味しく飲んでいただけだった。

ただロジェの言い方的に、生の果物が入ったフルーツティーじゃなくて、果物の皮やドライフルーツが入ったフルーツティーな気がする。それも美味しいけど……マリーが飲むなら、生の果物を紅茶に浸けたあのフルーツティーの方が良いかな。

「お兄ちゃん、果物の香りがする紅茶なら飲んだことあるよ。お茶会で出されることもあるから慣れておきましょうって」

「え、そうなの!?」

「うん。でも……ちょっと苦手だったかも。酸っぱかったの」

ベリー系のフルーツティーだったのかな。それにしてもマリーが飲んだことあって、俺がないなんて。フルーツティーは完全に女性向けなんだな。

「レオン様、お待たせいたしました」

それから数分後、ロジェに頼まれた使用人がフルーツティーの茶葉を持って戻ってきた。ロジェがそれを受け取り、何種類かのフルーツティーを淹れてくれる。

「こちらがベリー系の風味、こちらがりんご、こちらがオレンジ系です」

順番に飲んでみると、味はどれもほとんど変わらずに、香りだけが違う感じのお茶だった。確かにこれも美味しいんだけど……お茶の苦味や渋味が苦手な人は、これも同様に苦手だろう。

「ロジェ、生の果物を入れたフルーツティーはないの?」

「……生の果物を、紅茶に入れるのですか?」

「そう。一口サイズに切ったり輪切りにしたやつを」

日本にはカフェとかにあったよね。何度か飲んだことがあるけど、見た目は華やかだし味も美味しかったイメージがある。あれは贅沢な飲み物だし、貴族に流行ると思うんだけど……

「イメージが、できません。一度淹れていただいても良いでしょうか?」

そう言われても……俺も淹れ方はよく知らない。果物をガラスのポットみたいなやつに入れて、熱い紅茶を注げば良いのかな。

「とりあえずやってみるよ。熱めの紅茶を準備してくれる?」

「かしこまりました」

俺は中身が見えるようにガラス製の小さめなポットを机に置き、一応ピュリフィケイションで綺麗にした。後は果物を入れるだけだけど、何が良いんだろうな……

俺の記憶では輪切りのオレンジは入ってた記憶がある。後はりんごも絶対に入ってた。とりあえずその二つでやってみるかな。

果物と包丁を取り出して、まずはオレンジを輪切りにしようと試みて……さっそく挫折した。オレンジってこんなに切るのが大変なのか。

俺が苦戦していたらよっぽど危なそうだったのか、エミールに包丁を取り上げられた。

「レオン様、私に切らせていただきたいです」

「うん、その方が良いね。お願いしても良い?」

「もちろんでございます」

「オレンジは皮を剥かずに輪切りにして欲しいんだ。りんごは……いつものように一口サイズに切ってくれれば良いよ」

「かしこまりました」

そうしてエミールが手際良く果物を切り分けてくれたので、俺はそれをポットに入れていった。横からオレンジの断面が見えるように、綺麗に入れていく。

「お兄ちゃん、そこに紅茶を入れるの?」

「そうだよ。紅茶が果物で甘く美味しくなると思うんだ。これならマリーも苦手じゃないかなと思って」

「へぇ〜、お兄ちゃんありがと!」

俺はマリーの無邪気な笑みに癒されて、マリーのために成功させてやると気合を入れて果物をポットに入れた。

そして十分な量を入れたところで、ロジェが淹れてくれた紅茶を注ぐ。これでしばらく置いておけば良いのだろうけど……これって数十分も置いておいたら冷めるよね?

ポットを熱いお湯にでもつけて、冷まさないようにしたほうが良いのかな。とりあえずやってみるか。俺は小さめの鍋に熱湯を注いでもらい、その中にポットを入れた。

「レオン様、こちらはどのぐらいの時間置いておくのですか?」

「十分ぐらいかな……それぐらいで一度飲んでみようと思う」

「かしこまりました」

それからマリーと話をしながら十分待ち、カップに一口分のフルーツティーを注いで飲んでみた。うーん、まだ果物の美味しさが出し切れてない気がする。

「ロジェ、もう十分追加かな」

後は少し砂糖を入れた方が美味しいかもしれない。確かに果物の甘味で苦味が薄れてはいるんだけど、まだまだ足りない。俺が求めてるフルーツティーは、もっと甘さがあって紅茶の苦味や渋味はほとんど気にならなくなっているものだ。

さっき飲んだフルーツティーだと、フルーツの美味しい香りが鼻に抜けるので、逆にその後からくるお茶の渋みを強く感じてしまった。

追加で十分待つと、十分前とは明らかに紅茶の色が変わったのが分かる。ポットから慎重にカップへ注ぐと、芳醇な香りがふわっと広がった。

「どうぞ」

「ありがとう」

ロジェがカップに少しだけ注いでくれたフルーツティーを飲んでみると……まず口に入れた瞬間に、果物の甘い香りや爽やかな香りが口の中に広がった。そして次にりんごとオレンジの甘さが味としても感じられ、最後に少しだけ紅茶の苦味が残る。

これは美味いな……俺はかなり好きだ。これからはこの紅茶もバリエーションに追加して欲しい。ロジェが極めたらもっと美味しくなるのだろうし、これから先が楽しみかも。

「美味しいよ。マリーも飲んでみて。ロジェも少しだけで良いから飲んでおいてほしい。これからこの紅茶を淹れてほしいから」

「かしこまりました」

ロジェが俺の言葉に顔を綻ばせて一礼し、マリーにフルーツティーを注いでくれた。そして自分も少しだけ口に含む。

「これは……とても美味しいですね」

「だよね。中に入れる果物を変えれば味も変わると思う。後は時間を変えたりするのもありかな。それから砂糖を少し足しても美味しくなるかも」

俺のその言葉を聞いたロジェは、瞳を輝かせて楽しげな表情を見せた。これはすぐにでも美味しいフルーツティーが飲めるようになりそうだ。ロジェがやる気になったら早いから。