軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

180、ティノの料理 前編

よしっ、次はお昼ご飯だな! ティノの料理、めちゃくちゃ楽しみだ。実はさっきからいい匂いがしていて、かなりお腹が空いていた。早く食べたい。

「じゃあ話はこの辺で終わりにして、お昼ご飯をいただいても良いかな?」

「かしこまりました! あとは仕上げだけですので、少しお待ちください」

「うん。ティノの料理、凄く楽しみにしてたんだ。時間は気にしなくていいからしっかりと仕上げてね」

「……レオン様、俺の創作料理を楽しみだなんて。本当にありがとうございます! 少々お待ちください!」

ティノはそう言って、スキップでもしそうな勢いで厨房に入っていった。本当に料理が好きなんだな。

そうしてティノが厨房に行くと、食堂には少しの間沈黙が流れた。勢いで皆の意見も聞かずに、ティノを雇うことにしちゃったけど大丈夫かな?

そう思って、俺は皆の方に身体を向けた。

「料理人はティノに決めちゃったけど、大丈夫だった?」

「もちろんです。誰を雇うかはレオン様が決めることですので」

「レオン様、ティノを雇っていただいて本当にありがとうございます」

「ティノは全く問題なかったからね。アンヌ、素敵な息子さんを紹介してくれてありがとう」

俺が本心からそう言うと、アンヌは一瞬泣きそうな顔になったあと、直ぐに顔を隠すようにして頭を下げてしまった。

「ティノに対してそう言っていただけたのは、レオン様が初めてでございます。本当に、本当にありがとうございます」

「じゃあ他の人は見る目がないんだよ。料理に情熱がありそうだったし、礼儀はしっかりしてるし。まあ確かに、貴族相手に働くとなると難しいのかもしれないけど……。貴族の屋敷では、料理人が主人をジロジロ見たりできないからね」

俺がそう言って顔に苦笑を浮かべると、アンヌさんも同じような表情をして顔を上げてくれた。

「あの子にとっては、ここでの仕事は天職だと思います」

「それなら良かった。そういえばちょっと思ったんだけど、エバンはティノと面識があるの?」

「はい。ティノが公爵家の屋敷にいた時に少し面識がございます。……ティノは、変わらないですね」

やっぱり面識あるんだ。そしてティノは、やっぱり昔からあんな感じなのか。子供の好奇心旺盛な様子をそのままに大人にした感じだもんね。

「ティノをここの料理人として雇ったから、また仲良くしてあげてね」

「かしこまりました。料理の腕は確かですので、これからの食事が楽しみです。ただ、変な料理を食べさせられない限りですが……」

「それなら良かった。じゃあティノには、基本的に朝昼夜は普通の料理を作るように言っておくよ」

「ありがとうございます」

そうして皆と話しているうちに、ティノが食堂に戻ってきた。料理が完成したようだ。

「レオン様、料理が完成いたしました」

ティノがそう言うと、ロジェが食堂に向かっていく。そしてティノと共に俺の前に食事を並べてくれる。

えっと……、俺一人分だけなの? 皆の分は?

「皆はもう食べたの?」

「いえ、私たちは後でいただきます」

「そんなの寂しいよ。一緒に食べない?」

俺がそう言うと、ティノは途端に顔を輝かせた。

「いいんですか!?」

「もちろん! 俺は雇い主だけど貴族じゃないし、皆で一緒に食べた方が美味しいからね」

「レオン様素晴らしいです! そこのところをわかってない人が多いんです。食事は大勢で楽しく食べるのが一番です!」

ティノはそう言って、他の皆の分も準備していく。それに困惑したのはアンヌとエバン、それからロジェだ。

やっぱり貴族の屋敷で働く経験が長いと、主と食事を共にするのは抵抗感が強いんだな。

「主人と共に食べるなど……」

「そんなに細かいことは気にしなくて良いから。お店のオーナーと従業員は、一緒に食事をすることもあるでしょ? それと一緒だよ。ロジェは……俺の従者だから慣れてね?」

俺がロジェを見上げてそう言うと、ロジェは少しだけ顔に苦笑を浮かべて了承してくれた。

「かしこまりました」

ロジェも段々とこういうことに慣れてきたよね。ダリガード男爵家で食事を共にした経験があるからだろうか。これからはもっと慣れてもらわないと。

そうして全員分の食事が準備されて、皆で席に着いた。

「ティノありがとう。じゃあいただこうか」

「いただきます」

俺の声に合わせて皆で食前の挨拶をして、一斉に食べ始める。ティノはまだ自分の食事には手をつけずに、皆の様子を観察するようだ。凄く嬉しそう。

何から食べようかな……。目の前にあるのは、野菜とお肉が入ったスープと、黒いソーセージ? みたいなやつ。それから何か見慣れないお肉が入っている野菜炒め。あと、これなんだろう? 茶色い……野菜?

それからパンと水。この二つは流石に普通みたいだ。

うーん、とりあえず普通に見えるスープからいただこうかな。俺はそう思ってスープを一口飲んだ。そして、驚きのあまりしばらく言葉を失ってしまった。

美味しすぎたのだ、あまりにも美味しすぎた。いや、美味しいというか、懐かしい!!

日本で飲んでたスープの味がする。この世界のスープは塩や香草などで味付けされているけど、どこか物足りないスープが多かった。出汁がないからだと思ってたけど、このスープはめちゃくちゃ美味しい!

でもこれは出汁じゃないと思う。出汁の繊細な味じゃなくて……、中華風の味というか、そう、ラーメンのスープみたいな味!

「ティノ! このスープどうやって作ったの!?」

俺は思わず身を乗り出して、勢いよくティノにそう聞いた。

「気に入ってくださいましたか? 私の力作です」

「美味しすぎるよ! これだけでお店を出せるぐらいなのに、何で広めてないの!?」

「私もこのスープには凄い力があると思っているのですが、私が今まで働いてきた食堂では、とにかく手間がかかるから美味しくても使えないと言われてしまって。このスープは鳥の骨などから作っているのですが、このスープになるまでに三、四時間はかかるのです……」

鳥の骨ってことは……鶏がらスープみたいな感じか。そうだ、そうだよ、その味だよ。これが使えないなんて、その料理人見る目が無さすぎる!

……貴族向けじゃない食堂だと、手間がかかる料理はダメだってなっちゃうのかな。貴族向けのレストランや貴族の屋敷だったらまた違ったんだろうな。

とにかく、これをこのまま眠らせておくなんて勿体なさすぎる。

こうなるとやっぱり、食事のお店も作りたいよな……でも、今はスイーツのお店で手一杯なんだ。他にもやることはたくさんあるし。

うーん、やっぱりしばらくは手を出せない。

それまでの間、ティノにはレシピ開発だけやって貰おうかな。ティノは絶対に才能あると思うんだ。この才能を腐らせるのは勿体無い。

だって鶏がらスープってどうやって作るのかよく知らないけど、ただ骨を煮込めばいいだけじゃないことは俺にもわかる。臭みを取るための工程とかあるんだろう。それを自分で編み出したなんて……ティノはマジで凄い。ティノとは後で真剣に料理開発について話し合おう。

もしティノが良ければ、今後色々と開発に協力してほしいな。切実に欲しいのは醤油と味噌だ。大豆から作られてるってことと、とりあえず発酵させるってことしかわからないんだけど、何とか作り出したい。

今はそんなに色々手を出せるほど時間がないけど、時間が作れるようになったらお願いしてみよう。