軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17、全属性

中心街から帰ってきて三日が経った。

俺はマルセルさんに属性のことを話そうと決意し、工房に来ている。隠していてもいずれバレるだろうし、それなら最初から自分で言った方が良いと思ったのだ。

それに、マルセルさんなら気味悪がったりはしないと思う……多分……

今は作業場で向かい合って座っているところだが、いざ打ち明けるとなると緊張してきて、頭がまとまらない。

やっぱりやめようかな…………でもマルセルさんなら大丈夫だよな……? うん、信じよう。

「それで、今日はどうしたんじゃ? 魔法具を考えたのか?」

「魔法具も色々考えたんですが……その前に俺の属性について話を聞いてもらえますか?」

「レオンの属性? 確か回復属性じゃったんだろう?」

「そうなんですけど、実は他の属性も使えるみたいで……」

「他の属性……? 他の属性じゃと!?」

マルセルさんは椅子から立ち上がり、大声で叫んだ。

俺は緊張していたせいか、思わずビクッと震えて椅子の上で小さく飛び上がってしまった。

「ああ、すまんかった。怒ったりしとるわけじゃない。ただ驚いたんじゃ」

俺はマルセルさんのその言葉を聞いて心底ホッとした。

よかったぁ…………とりあえず嫌悪感はなさそうだ。

「それで、他にどの属性が使えるんじゃ?」

「えっと、全部です……」

「なっ……」

マルセルさんは今度は声も出ないようで、絶句し固まっている。

やっぱり全属性使えるっておかしいんだよな。一人に一つの属性が当たり前って感じで、複数の属性が使えるなんて教会でも考えられてすらいないようだった。

じゃあ、俺はなんで使えるんだろう。

多分転生したのが影響してるんだとは思うんだけど、そもそもなんで転生したのかわからないし。

「全部とは本当か!?」

「はい。使ってみましょうか?」

「使ってみてくれ!」

マルセルさんの鬼気迫る顔に押されて、俺は全部の属性魔法を使ってみせた。

「使徒様じゃ……」

マルセルさんはそういったまま、また固まってしまった。

使徒様ってどういうこと? ちょっとマルセルさん固まってないで教えてくれよ〜。

「マルセルさん。マルセルさん! マルセルさん!!」

「はっ!? 使徒様申し訳ありません」

「俺はレオンです! 使徒様なんかじゃないですよ!」

「でも、全属性を……」

「とにかく落ち着いてください。俺はレオンです」

それからしばらくマルセルさんは混乱していたが、やっと落ち着いてきたようだ。

「取り乱してすまなかったな。全属性を使えるのは使徒様だけじゃと思っとったから、混乱してしまったんじゃ」

「その使徒様って、なんですか?」

「使徒様は神様から遣わされたお人で、全属性を使い、様々な知識を持っておられるそうだ。何百年も昔に使徒様がいらっしゃったという記録が、残っておるらしい」

「そんな歴史が残ってたんですね」

「そうじゃ。その歴史以降、全属性はおろか、二つ以上の属性が使える者も一人として現れていない。じゃからレオンが使徒様だと思ったんだが、本当に違うのか?」

そんな存在がいたのか…………俺は使徒様なのか?

俺は全属性が使えて、転生者だから色々と知識はある。

だけど神様なんて知らないし、知識も半端なものばかりだ。そもそも使徒様って神様に会ったことがある存在だよな。

それなら、俺は使徒様じゃないだろう。俺は神様なんて知らないし。

「俺は神様から遣わされてないし、使徒様じゃないですよ」

「そうなんじゃな、また使徒様が現れたとなったら人々の信仰心も上がると思ったんじゃがのぉ」

「信仰心ですか?」

「そうじゃ、この世界はミシュリーヌ様を信仰しているが、使徒様が現れてから数百年経ち、もう信仰心が残ってる者はあまりいなくてのぉ。わしはもっと信仰心を持つべきじゃと思っとるんじゃがな」

この世界の神様ってミシュリーヌ様って言うのか。確か教会にあった像は女神像だったから、神様は女性なんだよな。

というかマルセルさんは信仰心が強い人だったんだな。俺は宗教の力は弱い方がいいんだけど……

「今はどのくらい教会の力ってあるんですか?」

「今は教会の力などないようなものじゃ。教会は全て国営じゃし、働いておる人もほとんど国に雇われとる奴じゃ」

「そーだったんですね」

この世界の教会は国営だったのか! じゃあ教会とは名ばかりの施設ってことだな。

よかった。これで宗教と政治の対立とか、めんどくさいことが起きる可能性はほぼなくなったな。

「俺は使徒様じゃないから、信仰心をあげることはできませんね」

「そうじゃな、まあいいんじゃよ。話が逸れてすまんかったな」

「いえ、教会のこと聞けたのでよかったです」

マルセルさんは少しがっかりしているようだ。宗教の問題は複雑だから、下手に口を出さない方がいいよな。

「それで、俺の魔法のことなんですが……」

「そうじゃったな、レオンが使徒様でないんじゃったら、なんで全属性の魔法が使えるんじゃ?」

「俺もそれが不思議で、マルセルさんに聞いてみたかったんです。今までの歴史で、使徒様以外に二属性以上使えた人は、いなかったってことですよね」

「そうじゃ。今までの歴史で使徒様以外には存在しない。とりあえず、レオンが全部の属性を使える理由はわからんが、誰にも言わない方がいいじゃろうな」

「やっぱりそうなんですか?」

やっぱり隠すべきなんだなぁ。確かに強すぎる力って争いの元なんだよな。

「レオンが信頼できる貴族の後ろ盾を得られた時には、能力を明かしても良いかもしれん。しかし、無闇に能力を明かすと、お主の力を求めて他国や危険な貴族が、お主を獲得するためや排除するために動き出す可能性がある。強い力は欲しがる奴もいれば、排除したがる奴もいるんじゃよ。最悪家族が狙われるかもしれん。家族を匿える権力を得るまで、隠しておった方が良い」

怖っ!! 今の俺はまだ子供で、家族を守る力もないからな。自分が権力を得るか、信頼できる貴族と出会うまでは絶対に隠すべきだな。

「こうなるとお主は、絶対に王立学校に行くべきじゃな。もしお主が平民のままその能力が知られたら、一生飼い殺しのようになるか、お主を邪魔だと思った貴族に消されるかのどっちかじゃな。しかし、役人となって信頼を得てからその能力を明かせば、王の側近や貴族になれる可能性もある。貴族になるには、王立学校を卒業していないとダメじゃからな。とにかく今は絶対試験に受かるんじゃ」

一生飼い殺しのようになるなんて絶対に嫌だ。俺一人だけなら逃げられるかもしれないけど、この世界には既に大切な人たちがたくさんいるから、見捨てることなんてできないし……

とにかく今は王立学校に入学して、役人になるまでは隠し通す! いや、役人になるまでというか、権力を得て信頼を得るまでだな。

「わかりました! とにかく今は隠して、権力を得てからなら明かしても大丈夫ってことですね」

「そうじゃ、絶対じゃぞ」

「はい。家族を危ない目に遭わせたくないですから」

俺とマルセルさんは、お互いの目を見てしっかりと頷き合った。

マルセルさんは本当にいい人だ……この人に相談して良かった。