軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

144、サリムの処遇

次の日の朝。起床してすぐに、ロジェがリシャール様からの伝言を伝えてくれた。

「本日の朝早く、ヴォクレール商会に兵士が入りサリムを捕らえたようです。また、現在は自宅を捜索し契約書等を探していますが、望みは薄いようでサリム本人も罪を認めないことから、罰金程度で釈放されるだろうとのことです」

「やっぱりそうなったんだ。サリムの両親はどうなんだろう?」

「兵士の話によりますと、事の顛末を聞いた父親は、すぐにサリムは自分の子供じゃないと話し始めたようです。母親も同様でして、サリムと家族でないアピールをする事で、公爵家から睨まれる確率を少しでも減らしたいという思惑があるのでしょう。よってサリムはほぼ確実に放逐されると思われます」

そっか……なんかサリムが可哀想になってきたよ。サリムは俺を蔑んでくるし屋台をめちゃくちゃにするし、本当に嫌いな奴なんだけど、それでも両親から他人扱いされるのは可哀想だと思っちゃう。

こうなると、アルバンさんに頼んで良かったかも知れないな。サリムにとっては、嫌っていた俺がいる屋敷で働くのは嫌だろうけど。

まあ、今までの逆恨み防止プラス、仕返しも込めての保護って感じでいいか。

「サリムの確保は出来そう?」

「準備は整っているとのことです」

「それなら良かった。じゃあ後はお任せすれば大丈夫だね」

これで屋台の問題はとりあえず解決だな。

ふぁ〜、昨日夜遅かったから眠いし疲れてるけど、今日も王立学校に行かないと。

俺は眠い目を擦りながら準備をして、いつも通りに馬車に向かった。そして馬車に乗り込んで気づいた。

ロニーがいる!!

そうだ。昨日はロニーも客室に泊まったんだよね。寝惚けてて完全に忘れてたよ……。初めて公爵家に泊まったけど大丈夫だったかな?

「ロニーおはよう。よく眠れた?」

「うん、でも緊張していつもより眠りは浅かったかも。部屋が広すぎるしベッドも大きすぎるし、何より僕にも使用人の方が一人ついてくれて、そんな立場になるなんて思ってなかったから、とにかく緊張だった……」

確かに普段と違いすぎる環境だと落ち着かないよね。

あれ? でも俺って、初めて公爵家に来た時も意外とすぐ順応してた気がする……。ぐっすり寝てたような……?

まあ、日本での記憶があるからだよね。断じて俺が鈍いわけではないはずだ。

「最初はしょうがないよ。回数を重ねれば慣れて来て、広いベッドで寝れるのラッキーぐらいになるから」

「回数を重ねるつもりはないよ!?」

「でも、ロニーは定期的に公爵家に来るんだよね?」

「え? 何その話、全く聞いてないんだけど!」

あれ? ……確かに色々あって言ってなかったかも。

「リシャール様からの伝言で、ロニーも公爵家が後援するお店の中心人物になることだし、定期的に公爵家に来てもらいたいだって。だから、お店の報告とかで来ることになるんじゃないかな? そうだ、今度店舗の候補を見に行くでしょ? その日も公爵家に寄ってから見に行くからね」

「レオン、いつも言ってるけど、そういう大事なことは早く言ってよ!!」

「ご、ごめん、でも今回は色々ある中で言われたから。いつもはすぐ言うようにしてるよ」

「ちゃんとすぐ言ってね! ふぅー、それで店舗を見に行く日ってことは、次の回復の日だよね。何の話をするのかな?」

「多分だけど、世間話とかその程度じゃないのかな? ロニーとは既に何度か会ってるし……昨日も会ったからね」

公爵家的には、優秀な平民が公爵家と縁があるという事実が大事なんだろうから、話の内容は重要じゃないはずだ。

「それだけ?」

「あとはお店について聞かれる可能性はあるかも。でも、それももう少しお店の話が進んでからかな。そんなに気負わなくて良いと思うよ」

「そっか、それならちょっと安心かも」

ロニーは重要な話はないという事実に肩の力を抜いたようだ。前は貴族に会うってだけでガチガチに緊張してたのに、この国の宰相と会うことになってもそこまで緊張していない。ロニーも段々と慣れてきて感覚がおかしくなってるな。……仲間ができたようで、何となく嬉しい。

そうしてロニーとそんな話をしていたら、馬車にリュシアンもやって来た。

「リュシアンおはよう」

「レオン、ロニー、おはよう」

「リュシアン様、おはようございます」

リュシアンはいつもシャキッとしてるのに、今日は結構眠そうだ。

「リュシアン眠そうだね?」

「ああ、いつも夜更かしすることなんてないからな……」

「昨日のリュシアン張り切ってたもんね。目がキラキラしてたよ? 何だっけ、必ず捕まえるぞ、おー! って言ってたよね?」

俺は揶揄うような口調で、おー! のところで拳を上にあげてそう言った。

すると、リュシアンの顔は一気に真っ赤になる。凄い、めちゃくちゃ珍しいリュシアンだ。写真に収めたい!

「う、うるさいぞ! おー! などとは言っていないぞ」

「そうだっけ? でも似たようなことは言ってたよね。凄く楽しそうだったよ?」

「そ、そんなことはない。私は真剣にやっていただけだ」

リュシアンはそう言って顔を横に背けた。耳まで真っ赤になっている。

そこを突いてもっと揶揄おうと思ったけど、流石にこれ以上は可哀想かな。そう思って、俺はリュシアンの言い訳を肯定してあげることにした。

「確かにそうだよね。昨日は手伝ってくれてありがとう」

「当然だ。レオンは友達だからな」

「ありがと。そのおかげで最後まで上手くいったみたいだよ。今日の朝のことも聞いた?」

俺がそう聞くと、リュシアンは頷いたがロニーは首を傾げている。まだロニーまでは情報が行ってなかったのか。

「サリムがどうなったか聞いてない?」

「朝は色々初めてのことだらけで一杯一杯で、ゆっくり話す時間はなかったんだ」

「そっか、じゃあ今話すよ。サリムは兵士に捕らえられたって。それで兵士は家を捜索してるけど、契約書とかは見つからなそうだし、サリムも自分は関係ないって立場を崩さないみたいだから、多分罰金程度で釈放されるだろうだって」

「そっか。それでサリムは放逐されちゃうのかな?」

「うん。兵士に事情を聞いた父親の態度からして、放逐の可能性が高そうみたい」

「そうなんだね……僕たちからしたらサリムが放逐された方が今後虐められなくて良いだろうし、放逐されたとしても公爵家で保護してくれるのなら心配はいらない。でも、ちょっとだけ可哀想だと思っちゃうかも。自業自得だけど、親に捨てられるのって辛いよね」

やっぱりロニーもそう思うのか、それは凄く分かる。でも今回は自業自得だし、どうしようもないよね。

これからサリムが良い人生を送れたらいいけど……

でもそこはもうサリム自身の問題だし、俺たちが口を挟むとややこしいことになるだろう。

「それは分かるよ。でも自業自得だしどうしようもないよね。もしこれからサリムが改心して今後話すことがあったら、普通に接してあげれば良いんじゃないかな?」

「そうだね。そうするよ」

黒幕がサリムだったというところでちょっとだけ後味が悪いけど、屋台の問題は解決したし作戦もかなり上手くいった。

「これで問題も解決したからまた屋台を始められるね。お店についても安心して進められるし、ロニーの作戦のおかげだよ。ありがとう」

「いや、レオンの力を借りたからだよ。こちらこそありがとう」

「ううん。俺はほとんど何もしてないよ。本当にロニーの作戦が凄かったんだ」

「ああ、私も作戦は聞いたが、あれは全てロニーが考えたのだろう? ロニーは才能があると思うぞ」

ロニーは俺が言っただけでは信じてなかったけど、リュシアンにまで褒められてちょっとは自分のことが認められたようで、嬉しそうに笑った。

「ありがとうございます」

そうして三人で色々な話をしつつ、王立学校まで馬車に揺られた。他にも色々とやることはあるけれど、勉強も頑張らないとだ。