軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第42話「2階層でのトラブル」

#第42話「2階層でのトラブル」

2階層に入ってからはモンスターが増えた。1階層よりも明らかに多い。

2階層で出現するストロングゴブリン2〜5体の集団で現れることが多く、効率は良くなったが、油断すると一気に囲まれるので注意が必要だ。

そしてモンスターだけでなく、人間の姿も増えた。おそらく多くはクランの下っ端。三階層でのレベリング枠をまだもらえない者たちだろう。

稼ぎは薄いが夢を捨てきれない者、あるいは借金を抱えて後がない者――そんな連中が細々と潜っているらしい。この対応が面倒だった。

レベリングで無理やりレベルを上げレベル2になって2階層で戦っている人の討伐を見ると正直、危なっかしい。特に体力不足の人が多いと感じる。1体倒すだけで体力を使い果たしている感じだ。

あれでは1日10体も倒せればいい方かもしれない。しかも1体倒した後で疲れ果てている。次のモンスターがやってきたらかなり危険だ。

しかも2階層からは相手が複数であることが多いから強い味方が必要だ。俺の場合はそれなりに強く体力のある3人(1人+使役モンスター2体)だから全く問題はないがあまり強くない人間の寄せ集めだと厳しい。

他の人間の討伐を見かけて危なっかしいと思いつつも、気軽に助けるわけにもいかないのが難しいところ。

救助を求められていないのに助けようとすると横取りと言われてしまう。最後に倒した人間がほぼ経験値を総取りするシステムだからだ。だからよほどのことがなければ関わらないようにしている。

今日もストロングゴブリンたちに追われて逃げてきた男と遭遇した。いわゆる“トレイン”――他人にモンスターを押しつける行為だ。普通なら嫌われるが、俺にとっては向こうから獲物が来るようなものでありがたい。

彼が「すまない」と言って去っていくのを確認して討伐させてもらった。

すると彼が戻ってきて、「実は仲間がやられたんだ、一緒に来て欲しい」と懇願してきた。面倒だが命に係わることなので仕方がない。行ってみると、倒れているのは二人。そのうち一人は女性だった。応急処置をして救援を呼ぶ。

聞けば三人で長く頑張ってきたが、今日限りで引退を考えているらしい。逃げた男性は後ろめたいだろうし、負傷者二人も精神的に参っている。

「すまないが俺は引退しようと思う。救助を求めるから仕方がないとは言え今日は自分かわいさに仲間を見捨てて逃げてしまった。もう精神的に無理だ」

「私ももう無理かな。全く儲からないのに命がけになることも多い。こんなのやってられない」

「そうだな。現実に今日は危険な目にあった。ここらが潮時かもしれない。今日限りで解散しようか」

そんな会話を聞くと凄く寂しくなるが、俺がとやかく言う問題ではない。引き留めたところで俺は責任を取れない。それこそ無責任な話だ。見送るしかないだろう。

儲けが薄い2階層ですら時には命がけ。普通に考えたらやってられない仕事だな……。

そうやって2階層では救助することが増えた。救助は基本的にお金にはならず時間だけ取られて効率は落ちるが人命がかかっていれば仕方がない。俺は動く。

先の救助の時のように感謝されればまだ良い方だ。助けた相手に逆に怒鳴られることもある。

「お前なんかに救助されなくても何とかなったんだ。経験値を返せ!」

仲間に「助けられたのに馬鹿なことはよせ」と止められていたが、俺のような人間に助けられたのが気に入らなかったらしい。俺は”ゴミ漁り"と呼ばれているらしいからな。

彼もなかなか強くなれず、しかも儲からない状況でいらだっているのだろう。その仲間から謝罪を受けたが、俺は気にしていないと言ってその場を去った。

彼らの気持ちが痛いほど分かる。この世は理不尽だ。一般人がハンターになっていくら命をかけて頑張っても儲からない。だから俺は助けたとしても見返りは求めなかった。本来は交渉していくらかもらうのが普通らしいが彼らの状況が気の毒過ぎてそんなことは言えなかった。

黒澤さんとこの『暁の牙』ような優れた草クランに入る人は継続してやっていける可能性はあるかもしれないけど、それでも厳しいのが現状だ。黒澤さんも全てのメンバーの面倒を見るのは不可能だろう。

ソロでは厳しい。草クランに入っても厳しい。ハンターは本当に厳しい仕事だ。やはりもともと財力を持っている財閥企業系の人間だけが勝てる世界なのかもしれない。

面倒は他にもある。強さを見込まれてクラン勧誘されることだ。最初は断ることも難儀した。

「おい、お前ソロなんだってな。俺たちのクランにいれてやる」

「いや、俺はソロでやるって決めている。誘われても困る」

いくら断ってもしつこく誘ってくる。最近の俺の強さを見て、それを当てにして勧誘してくる人間が増えたようだ。みっともないとは思うが相手も必死なのだろう。

何とかしようと食い下がってくる。気持ちは分かるが俺はそんなことで留まるわけにはいかない。断ると激怒するケースもあるし本当に面倒だが断るしかない。

でも、そのうち俺は断るのも上手になった。「今はソロだが、『暁の牙』に入ることが決まっている。すでに黒澤さんと約束しているから他のクランに入ったり仲間になることは絶対にできない」と答えることにした。

その名を出せば、ほとんどは引き下がってくれる。本当に黒澤さんには頭が上がらないな。

今日は可愛い女の子二人に誘われたがなんとか断った。正直、俺も男だから心は揺れる、かなり惹かれたがそれ以上に俺にはやるべきことがある。一緒にやるわけにはいかない。

こうして2階層では、モンスターとの戦いだけでなく人間関係の面倒ごとが増えていった。2階層に入り多少は稼げるようにはなったが、いいことばかりじゃないと実感する。

今は裏技の確認も兼ねているので新宿ダンジョン2階層に連続して通っているが、3階層からは他で過疎ダンジョンでも探した方がいいのかもしれないな。この辺りはひよりにも相談させてもらおう。