軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第350話「視線の先にある影」

#第350話「視線の先にある影」

昼過ぎ、俺たち8人(俺、ひより、ルナの3人+ラム、リン、ロア、ルフ、クーの5体)は鎌倉から葉山ダンジョンへと向かった。

エリナさんに樹と葵をお願いした形だ。エリナさんと樹、葵の3人はもうしばらく鎌倉観光を続けるらしい。ちょっとだけ羨ましいが、もともと今回来たのは仕事のためだ。それをおろそかにするわけにはいかない。

樹と葵はエリナさんに慣れたようで懐いているようにも見える。今日のエリナさんはおだやかだから、やさしいお姉さんという感じだろう。

「でも、本当のエリナさんは無茶苦茶怖いんだけどね」と心の中で思っていたら、急にエリナさんの視線が厳しくなったような気がした。

まさか俺の考えを読んだ?どうにも不思議だ。何で分かるのか?俺の周りにいる女性は勘が鋭すぎると思う。

昨日から今日の昼過ぎまでの楽しかった観光の余韻はまだ残っているけど、これからは大事な仕事がある、時間が経つにつれ自然と気持ちが引き締まった。

ほどなくして葉山ダンジョンに到着。

少し早く到着した。

そのため高泉首相と大泉防衛大臣が入る前に、俺たちは軽く葉山ダンジョンの内部をチェックすることにした。

俺たちが拠点にしているいつもの恩方ダンジョン、陣馬高原ダンジョンとは違うダンジョンだから慣れた方がいいと考えたからだ。万が一にも失敗は許されない。

まずは五階層で軽く討伐。全く問題はない。まあレベル6にもなったし今更、五階層で苦戦することはない。もちろん安全マージンを取っての戦いでもあるが特に問題はなかった。

その後、六階層へ。

葉山は体力系のダンジョンということで、スピード系の恩方ダンジョンよりも純粋なパワー型が多い印象だ。動きは遅い分、かなりやりやすい。

ただし――体力が高い。

耐久戦に入ると倒しきるまでに時間がかかる。ミノタウロスも例外ではない。その後は何回か十五体バージョン、二十体バージョンの敵の群れを撃破し、俺たちは外へ出ることにした。

時間はかかるけど、やはり体力系ダンジョンはスピード系ダンジョン、技術系ダンジョンよりは楽な印象だ。人気があるのも分かる。

これで人気がなければ普段使いもしたいところだが、人が多いところは目立つのでちょっと厳しい。もともと過疎ダンジョンを探して恩方ダンジョンと陣馬高原ダンジョンに移動したのだ。無いものねだりをしても仕方がない。

ともかく準備は万端と言っていいだろう。

「ウォーミングアップとしては十分だな」

みんなが頷いたので一旦、外に出ることに。外に出た瞬間、陽光が目に入る。少しまぶしい。

今日は本当にいい天気だ。こんな日は外でのんびり過ごす方が似合っている。そんな場違いなことを、ふと考えてしまった。

だが、これからが本番だ。

高泉首相と大泉防衛大臣と直接会い、共に六階層へ潜る。重大な任務だ。気を引き締めなければならない。

その時、連絡が入った。

『まもなく到着します』

「よし……しっかり仕事をこなそう」

やがて、一台の車が静かに停まった。俺たちは自然と車の近くに寄って出迎えた。

ちょっとびっくり、最初に降りてきたのは黒澤さんだった。そして黒澤さんが案内する形で高泉首相と大泉防衛大臣も降りてきた。

二人はいつものスーツ姿ではない。動きやすそうなラフな服装だ。今からダンジョンに潜るのだから当然とは言え、そのギャップに少し驚いた。

こんな姿を間近で見られるのは、そう多くないだろう。

そして、黒澤さんに軽く質問した。

「何で黒澤さんが?」

「ああ、俺は護衛だ。SPみたいなもんだ。」

軽く会釈を交わした。しかし、その後気になったことがあった。

――車の周りにいたSPが同行しない。

「首相、それに防衛大臣。SPが同行しないようですが、大丈夫ですか?」

ルナが静かに問いかけた。すると高泉首相は穏やかに笑った。

「凄い力を持つ君たちがいるのにSPは不要。むしろ君たちが目立つ方が困ります。SPが君たちの秘密の戦力に気付いてもまずいでしょう」

なるほど、と俺は頷いた。信頼してくれているのはありがたい。だけど、その質問をルナがしたのには理由があった。

気付いたのは俺だけではないだろう。少し離れた位置に六人、いや更に離れたところに一人いるので七人だな。外国人と思われる鋭い視線がある。

おそらくはそれなりの実力者だ。立ち姿で分かる。遠くて物陰にいるのでさすがに詳細までは分からないけど、その中の一人は特に印象的だ。

俺は他のメンバーに目配せをし、あえて気付かないふりをした。

そして、さりげなく首相の側へ近づいた。

「首相。おかしな視線があります。外国人と思われる七人。それなりの実力者と思います。目的は不明です」

小声で伝える。

首相は一瞬だけ表情を引き締め、すぐに穏やかな顔へ戻した。

「分かりました。ではダンジョン活動の帰りは、車まで送ってもらえますか?」

「了解しました」

「そこまで行けば問題ないでしょう。宜しくお願いします」

どうやら中止にするという判断はないらしい。

ともかく危険なのはダンジョン内だけではない。外も安全とは限らない。俺は周囲に意識を向けながら、静かに決意した。

今日は、何かが起きそうだ。その時には何があろうとも絶対に高泉首相と大泉防衛大臣を守る必要がある。

その予感は、確実に近づいていた。