軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第30話「ハンター協会側の思惑」

#第30話「ハンター協会側の思惑」

(ハンター協会ビル──上層階の一室。朝倉明人の執務室にて)

「で、エリナ君。彼はどうだった?」

ソファに座る朝倉が問いかける。向かいに座るのは、レベル7のハンター・高階エリナ。長い黒髪を後ろで束ねた鋭い目の女性だった。

「面白いわね。会わせてくれて感謝するわ」

エリナはにやりと笑った。

「ほう、君でもそう思うか。君にレベル2程度の人間を合わせるのは気が引けたんだが、そう思ってくれたなら良かったよ」

「彼の使役モンスター、異常よ。あまりにも賢いわ。普通、使役モンスターなんて命令をかろうじてこなす程度でしょ? だけど彼のは違った。忠実な部下のよう。そして、まるで自分の意志で動いているみたいだったわ」

「2体ともか?」

「ええ。しかもそのうちの1体は……念話までできる。あれはやばいわよ」

朝倉の眉がぴくりと動いた。「やっぱり彼の言っていたことは正しかったのか?」

「間違いないわね。テレパシーのようなもの。言葉を介さずに、彼の指示を正確に受け取って行動したの。事前にハンドサインを打ち合わせておいて、私が合図を出すと……彼が念話で命令を出したのか、その通りに跳ねたり回ったりしたわ」

「本当にそんなことが……間違いないのか?」

「ええ、私はその場で目で見たから間違いない。あれは本物よ。今は彼のレベルが2だから目立たないけど、これが私と同じレベル7になって使役モンスターも同じレベルに上がったらどうなるか想像してみて」

「……想像したくないな」

「でしょ? 念話で意思疎通できる使役モンスターが最大5体。それも彼が冷静で指揮能力も高いなら──彼がレベル7ぐらいまでに成長すれば下手すれば並の中堅クランなんて彼1人に蹴散らされるわ」

「ならば使役モンスターの概念が変わるかもしれんな。今までは外れ枠扱いされていたが……」

「そうなんだけど……私もあれから何度かスロットから使役モンスターを出したけど全く無理ね。何で彼のように忠実に命令通り動くのか分からない……まずはそこから研究しないと駄目ね」

「うむ。研究チームに伝えておくよ。ステータスにあった謎の記号<FS>についても調べておく。何か分かったら連絡するよ」

そして2人はしばし沈黙した。やがてエリナが口を開いた。

「今後、彼がどこまで成長するか分からないけど……今のうちに引き込むべきよ。頭も良さそうだし性格も素直、特に欠点は見当たらないわ。変に知識を付ける前に可能であればうちと契約した方がいい」

「そうだな……彼は、今のうちに紐づけた方がいいかもしれんな。何らかの形でうちの所属にしておけば、いざという時にも動かしやすい」

「賛成ね。でも、レベル2程度のハンターへのあからさまな引き抜きは他の勢力に警戒されるかもしれないから注意した方がいいわね」

「そういえば、ひよりちゃんと彼は仲良しよね? 彼女からうまく自然に話を流せばいいわ」

「ふむ……友人と言っていたな」

「え? あの距離感は恋人でしょ、そうでないと逆に不思議よ?」

「そうなのか? まあいい。ひより君から彼にうまく伝えてもらうよ」

「そうね。もし彼女が無理そうなら──私が行ってもいいわよ? あの子、かわいいし」

「……おいおい、冗談だよな?」

「どこまでが冗談か、判断は任せるわ」

朝倉は苦笑しながらも、頭の中で次の一手を思案していた。

「そういえば、彼……君のクランに入る気はないのか?誘ってみたのか?」

「ええ、誘ってみたけど……今のところ1人でやるつもりらしいわ。かなりはっきり意思表示していたから無理な誘いはしていないわよ。他にも黒澤さんのところに誘われたことはあったみたいね。やはり断ったらしいわ」

「なに?黒澤のクランも声をかけているのか?すでに何か気がついているのか?」

「ええ、でも黒澤さんのクランは新人みんなに声かけているからそれほど警戒する必要はないわね。逆に変に彼の話をすると不自然に思われるから注意した方がいいわよ」

「それもそうだな。でも要注意には間違いない。それとなく彼らの動きもチェックしてくれ」

「そうね。今後も継続して軽く声はかけておくわ。それでも無理そうなら……妙な連中が近づかないように、それとなく見張っておくわ」

「頼むよ。大化けする可能性がある……絶対に逃すな」

エリナはふっと笑い、椅子の背にもたれた。

「了解。監視と誘惑、両方得意なのよ。お任せあれ」