軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第204話「エクリプスの危険な兆候」

#第204話「エクリプスの危険な兆候」

クラン『エクリプス』のメンバーは新宿ダンジョンの一階層、二階層での監視を続けることで、どうしてもだらけるようになってしまった。

監視の仕事があまりにも単調、かつ特にやることがないからだ。そしてその楽な環境に慣れてしまい通常のダンジョン活動にも悪い影響が出るようになってしまった。

もちろん、中心メンバーの本田、リーダーの佐藤、そしてレベル上げに動いている人間はその問題を感じてはいた。自分たちがレベル上げに頑張っている一方でなんともだらけた、ゆるゆるな雰囲気になりつつあるメンバー達。その落差の大きさに戸惑ってはいた。

だだ、その多少だらけても誰からも怒られることもない“監視員”の緩い仕事が活動が中心の状況でモチベーションを保てと言う方が難しいのも理解はできる。そして会社からの命令の仕事でもあり、その状況自体を変えることは不可能だ。

「空いている時間は有意義に使った方がいいですよ。空いている時間はこちらの活動にできるだけ加わってください。また監視する時にもイメージトレーニングをするとか、他にも外部ではしっかりとトレーニングをするとか、いろいろとやっていきましょう。いざという時に対応力が変わります」と本田。

「そうですよね。以前よりも時間ができているのならば、その分はもっと頑張れると思う。みんながっつり活動しようよ」とリーダーの佐藤。

「そうは言っても、こちらにも監視の仕事があるのですよ。ダンジョン活動も参加しようとは思いますけど、そちらと時間がなかなか合わないこともあるし難しいですよ」

「ならば立場を変わって欲しいですよ。自由に討伐できるのが羨ましいです」

このままではまずいと思って助言を始めた本田、それに追随するリーダーの佐藤。

ただ、なんとかメンバーの気持ちを奮い立たせようとしてもなかなか良い言葉が見つからない。確かにメンバー達の言う通りに監視がメインの仕事、それがおろそかになっては大問題だ。

そしてそんな“監視員”という仕事がいつ終わるともしれないという事情もある。申し訳ない気持ちもあるのだ。

空いている時間にこちらに交じってハンター活動をした方がいい、トレーニングを続けた方がいいとアドバイスするのが精いっぱい。

全員のハンター活動の時間を管理するにも、人によって活動する時間が違うので難しい。下手をすれば不平等になる。基本的には自主性に任せるしかないと判断していた。

それでメンバーたちが新しく生まれた空き時間をハンター活動、そしてトレーニングなどにあてればよかったのだが楽に慣れてしまうとそれも面倒になる。やはり、よほど自主性がある人でもない限り、普通の人には監視も必要なのだ。

一応は空いている時間はできるだけ本田、佐藤のグループに交じって討伐を進めるようにはしたが、どうしても真剣度は足りない状況に。そして適当な言い訳をしては討伐に加わる時間も短くなっていった。

また本田はそれなりに優れた面倒見の良い人間でやる気を出させるのは上手ではあるが、きつく命令するタイプではない。どうしてもメンバーは本田の意見さえも聞かず今の楽な環境でだらけていく。

本田としても危機感を覚えつつも、通常の戦闘ができるという、クランの中ではある意味優遇されている自分たちの立場からあまりきつく言うのもはばかれたという事情もあった。

そうしてクラン『エクリプス』のメンバーは、たまに出る現状への不満にも本気度はなくなり、適当な愚痴として漏れては消えるだけ。本気で現状を改善しようとする者もいなくなっていった。楽に慣れてしまったのだ。

ほんの1か月程度で身体は鈍る傾向に、戦闘感覚も鈍る傾向に、その一方で向上心だけがガリガリと砂のように流れ落ちていくことになった。

これが停滞と言えばまだいい方かもしれない。現実にはクラン『エクリプス』メンバーの平均的な実力、すなわちクランとしての戦力が低下する状況となってしまった。

一応、国としてはこれがモデルケースの1つとなり「監視の仕事はハンターのレベル低下に繋がる可能性がある」と言う警告、提言には繋がったので意味はあったのではあるが。

ちなみに元リーダーの司だけは特に変わらなかった。少しだけ来ては適当に討伐に参加して怒鳴り散らすだけ。何があっても通常運転、ある意味で大物である。

しかし現在のクランの状況を見て「勝手に決めるな!」と最初は怒鳴っていたものの、ある時何かに気が付き、一転にやりとして何かを思い出したかのように怒鳴るのを辞めてしまった。

一体何を思いついたのか?現時点では司しか知らない。

一方で、同じ時期。

レンたちは日々の訓練を欠かさず、更には下層攻略と使役モンスターの育成に全力を注いでいる。

――最初にあった戦力差があっという間に消えただけでなくすでに逆転して大きな差が付いている。そしてその差は、開く一方だった。