軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第200話「極秘会合での結論」

#第200話「極秘会合での結論」

朝倉の出したタブレットの映像の中には使役モンスターのラム、そして他のメンバーが映っている。

ラムが朝倉から受け取ったコインを指先で挟むと「パキン」と音を立てて真っ二つになった。

「……はぁ?」

さすがに大臣の大泉も素っ頓狂な声を上げた。コインが曲がるのはまあ分からないでもない。しかし割れるなんて常識では考えられない。

人外の力だとしか思えなかった。

次の映像で現れたのは緑の髪の女性――リンだ。

彼女も同じようにコインを軽く割った。

「2人目の緑の髪の色の女性も人間に見えますがやはり使役モンスター。名前はリンと言います。ラムとリンは見ての通り、常識では説明が付かない力を持っています。私たち人間はダンジョンの外に出るとダンジョン内での力は失いますが彼女たちはその力を保持したまま外に出ています」

朝倉の言葉に、2人は言葉を失う。

「これは……本物の映像なのね?」

「はい。見ての通り私自身が立ち会いましたから。そこにはエリナ君もいることが分かるでしょう。彼女も証明してくれますよ」

「すなわち、この2人が使役モンスターで陣馬高原ダンジョンの氾濫をおさめたということ?」

首相の高泉の問いに、朝倉は小さく頷いた。

そこで朝倉はさらに、FSの推移と人化の関係について説明した。

「この2体の使役モンスターはレベル5ですが、そのレベルに上がるまでにFS1からFS6まで遷移しています。その段階で、知能の上昇、念話、会話、人化、そしてダンジョン外に出るという進化を遂げています。通常、使役モンスターはダンジョンの外に出ることはできませんから彼女たちは特別です」

「その、FSとは何だ?レベルとは違うのか?」

と大泉が朝倉に問いかけた。大泉も高泉も現役のハンターであり知識はあるのだが、さすがに使役モンスターについては「外れ」扱いということでほとんど知識はない。外に出さず、そのままスロットに入れているだけだ。

朝倉は淡々と続けた。

「レベルとは違う、パラメーターのうちの1つです。機会があれば使役モンスターのステータスを見てください。その中にあります」

「ただしレベルのように経験値を積めば上がるという単純なものではありません。一応はFS2までの遷移方法は分かっていますが、それ以上のFS6までの遷移方法は研究中で分かっていません。なんせ彼は特殊でして、レベルアップするのに必ず各階層で自力で1万体以上の討伐をしています。使役モンスターも同様です。なので普通に考えて真似ができません」

「FSの遷移について、レベルアップが1つのトリガーにはなることは分かっていますが、研究課でレベルアップさせたモンスターがFS2からFS3になりませんでした。何か他に条件があると思われますが現時点では分からず困っています」

その言葉に高泉も大泉も驚いた。昨今でのレベル上げはレベリングが普通。レベル3~5ぐらいまでは高レベルハンターの力を借りるレベリングでレベルを上げて、そこから自力で這い上がるのが普通だからだ。

人間が各階層で1万体討伐するのもとんでもなく厳しい話だが、更に使役モンスターも同じ条件でレベル上げするとなると想像することすらも困難だった。そもそも使役モンスターは外れ枠で使ったことすらも無かった。

「自力のみで1万体討伐を繰り返して、レベル5まで上げた……気が遠くなるな。しかも21歳という若さでか。だからレベル6相当と実力が高いのか?」

大泉がため息を漏らす。

高泉も呆れたように笑った。

「よくそんなことができるわね。しかも使役モンスターまでも同じことを? その人は何者なの?」

「――何者と言われてもハンターとしての経歴以外は普通の青年としか言えないですね。普段はルナという女性ハンターと共に行動しています」

その名を聞いた瞬間、2人の顔色が変わった。

ソロの有名ハンター。彼らも当然、その名を知っていたのだ。

「ルナとはあの動画配信で有名な剣術の達人のことか? 確か彼女はソロではないのか?」と大泉が尋ねた。

「はい。動画配信の時にはソロですが最近はレンと行動を共にすることが多いです」と朝倉。

「なるほどね。おもしろい人物ってやっぱり一緒にやっているものね」と高泉も興味津々だ。首相と大臣で一緒に潜っているのだからこの2人も人のことは言えないのだが。

続いて3人は今後の運用方針を協議した。

まずは朝倉が言及した。

「とりあえず、彼らには非常事態には協力して欲しいと要請しています。確定はしていませんがおそらくは受けてくれるかと」

「ただし、彼らに無理をさせるわけにはいかない状況です。エリナが彼らの味方についており無理な命令をすれば海外に逃亡するとまで言っています。なので何でもかんでも要請するのはまずいですね」

大泉は腕を組んで見上げた。

「エリナが彼の味方というのも厄介だな。彼女が言うならば本気だろう。いや、安全面を考えれば彼女が味方なら逆に安心していいのかもしれないが」

その時、朝倉は再びタブレットを出した。

ネット上で出回っている映像――緑のスエットを着た女性が、モンスターを倒す瞬間だった。

「それはネットに出回っているAIによるフェイク動画とされているけれどもしかして?」

朝倉は淡々と答えた。

「――スウェットとゴーグルで変装していますが先ほどのリンという使役モンスターです」

「凄い……たった1人で自衛隊でも苦戦する相手を倒す、というよりは軽く蹂躙しているわね、それほどの実力のある使役モンスターを彼は3体も所持しているわけね」

「はい。近いうちに5体になるでしょう」

「それはとんでもない凄い戦力だ……すでに自衛隊に匹敵、作戦の自由度を考えればそれ以上か」大泉は感嘆の声をあげた。

「これほどの実力ならダンジョン内外で彼らは日本の切り札ね。逃げられたら日本の大損失よ。絶対にそれだけは避けないと駄目」

3人はしばらく沈黙しそして高泉が結論を出した。

「この件は国家機密とします。国の上層部で知っているのは私たち3人だけね?」

朝倉が頷く。

「はい、その通りです。現時点でこの情報を把握しているのは、私、エリナ君、研究課の透子君、そしてレン君の仲間――ルナ君と天川ひよりの5名のみです。最後のひより君は私の部下になります」

「分かりました。以後、レン君に関する情報、使役モンスターに関する情報は封印します。他には誰であろうと絶対に漏らさないように。彼らにも情報を広げないように要請してください。そして特別な危機、必要な時のみ正式要請を出すということで。そして、朝倉さんは大泉に定期的に情報を上げてください。必要であれば再び会合をしましょう」

この情報が漏れれば大騒ぎになるのは間違いない。何とかして手元に置きたいという人間が動いてくるだろう。海外から狙ってくることも容易に想像できる。よって、できる限り秘密にした方がいい。高泉の情報封印の判断は当然と言えた。

こうして、日本政府による“極秘決定”が下された。

レンを取り巻く情報は――国家の守護神として静かに封印されたのだった。

もちろんいつまで秘密にできるか分からないが……。