軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第194話「報告の躊躇」

#第194話「報告の躊躇」

陣馬高原ダンジョン周辺は完全に封鎖され、ダンジョン内もとりあえずは立ち入り禁止になっているらしい。

当然、今日は陣馬高原ダンジョンで活動できるはずもない。恩方ダンジョンでの活動も考えたが打ち合わせを優先した。

俺たちはルナの道場に集まり、ラム、リン、ひより、ルナの5人(3人+2体)で緊急の打ち合わせを行った。

俺はルナに状況を簡単に伝えた

「俺とひより、ラム、リンがタクシーで陣馬高原ダンジョンに向かったが交通規制していたんだ。その時にラムとリンが嫌な予感がするから言ってきたからタクシーを降りてダンジョンに向かった」

「そこで現場に遭遇したということなんだな」

「ああ、街には1~3階層のたくさんのモンスターがいたよ」

ルナは俺たちの報告を聞いてびっくりしていた。

「そうか……あの騒ぎはやはり陣馬高原ダンジョンでも氾濫が起きたのか」

「そうだ。実際に対峙して身に染みて分かったよ。あれは本当に危険だ。1階層のモンスターは武器があればぎりぎり対応できるかもしれないが、2階層、3階層のモンスターが出てきたら俺じゃ絶対に無理だ」

俺の言葉にルナも静かに頷く。

「おそらく私でも2階層、3階層のモンスターは厳しいのだろうな」

現実は厳しい。人間はかなり強力な武器がなければ2階層、3階層のモンスターに対峙することはできないだろう。ルナは技があるがそれでもパワーが足りないだろう。

3階層のモンスターは自衛隊の武器・ライフルなどでも沈黙させるまでに時間がかかっていた。

仮に4階層より下層のモンスターが氾濫したらと思うとぞっとする。

「それでラムとリンがモンスターを討伐したということか?」とルナが質問してくる。

「ああ、そうだ。ラムとリンはその言葉通り、余裕で討伐していた。3階層のモンスターも間違いなく余裕だ」

「それは一応は朗報だな」

大変な目に遭ったが、現場に遭遇していろいろなことが分かった。少なくとも2~3階層のモンスターはルナとリンの敵ではない。余裕で討伐できる。それが分かったのは今回の大きな収穫だ。

「ただ、問題がいくつかある」

俺はそう前置きして続けた。

「助けた女の子にラムの戦闘を少し見られたと思う。すぐに広まるとは思えないが、少なくとも服装などがバレたと思った方がいいかもしれない。今後、活動する時はあのスエット以外がいいかもしれない。人影は他には無かったかもしれないが他にも目撃者がいた可能性もある」

「確かに……あの格好は街でも多く見かける一方で、一度判別されたらすぐに分かるからね。着替えて出動する時に目立つ可能性はあるかも」とひよりが頷いた。

「そして、もうひとつの問題は、今回のことを朝倉さんに報告すべきかどうかなんだよな。報告した方がいいとは思うけど、やはり警戒した方がいいという気持ちもある」

ルナが腕を組む。

「そうだな。報告すれば、今後も同じような状況があった時に戦闘を依頼される可能性が高い」

「でも、黙っていてもいずれバレると思うんだよな」と俺はため息をついた。

「仮に政府らが調べ出したら、周囲の防犯カメラ、交通記録、目撃情報を全てチェックしていくことだろう……そうすれば、どこかでおそらく引っかかる。それなら先に報告して、朝倉さんに“上手く隠してもらう”方が現実的かもしれない。もちろんそれも絶対とは言えないけどね。リスクは減る」

ひより呟くように続けた。

「そうだね。どちらにしろリスクはあるけど、確かに報告した方がまだ安全かもね。多くの人に身バレするよりは朝倉さんだけに身バレした方がいい。とは言え朝倉さんがどう判断するかは何とも言えないけどね」

ルナも悩んでいるようだ

「朝倉さんが全面的に信頼できるかは分からないけど……確かに報告しないよりはましか。下手に調べられる方がやっかいだ」

その意見で、みんなの考えは一致した。基本的には朝倉さんに報告する方向だ。まあ現場の状況を見れば朝倉さんは俺たちの戦闘を真っ先に疑うだろう。

朝倉さんから何らかの質問されたら俺はごまかすことができる自信はない。すぐにばれるだろう。そういう意味でも、こちらから言った方がいいだろうな。

「でも、そのとき朝倉さんがどう動くか、そこが問題だよな。モンスターが氾濫するたびに呼び出される可能性はあるよな」

俺の言葉にルナが眉をひそめる。

「そうだな。最悪、私たちを“利用する側”に回るかもしれない。どう利用するかはなんとも言えないが政治とかに巻き込まれたら多くの人に恨まれる可能性もある。やっかいな話だ」

「それなら……」とひよりが続ける。

「まずはエリナさんに相談した方がいいんじゃない?」

俺はひよりの意見に全面的に賛同した。現時点で俺たちの秘密を知っていて一番信頼できそうな人はエリナさんだ。

「そうだな。エリナさんなら、朝倉さんの性格も分かっているはずだ。俺たちの味方になってくれそうな雰囲気だったしな」

「エリナさんも朝倉さんの方に付く可能性もあるけど、その場合は諦めるしかないな」ルナも同意した。

結局、いろいろと話が出たが明確な結論は出なかった。

それでも――報告しないわけにはいかない。ならばやはりエリナさんから報告する方向性がいいだろう。

俺は静かに息を吐きながら、次の行動を心に決めた。

「……よし、エリナさんに相談しよう」

そう呟く俺に、仲間たちはルナ、ひよりが頷いた。