軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第178話「リン、ダンジョンの外へ」

#第178話「リン、ダンジョンの外へ」

リンのレベルアップがいよいよ近づいてきた。

その報告を兼ねて、いつものように朝倉さんへ連絡を入れた。すぐに透子さんへも情報が回り当日、見学に来るとのことだった。

現実的にはすでに透子さんには連絡が入っているのだけどね。だってラムと一緒に住んでいるような状況。少しでも新しいことがあれば、すぐに情報が共有されているのは間違いない。

おそらくは透子さんのスケジュール帳には俺以上に細かく使役モンスターの経験値推移とレベルアップ予定などが書かれている。だから今はおそらく俺よりも詳しい。本来は朝倉さんに連絡を入れるまでもなく伝わっているのだ。

そしてエリナさんは今回は来ないらしい。忙しい人だし、同じ現象を二度も見る必要はないというタイプなのだろう。

そして――その日がやってきた。リンは朝からそわそわしていた。

無理もないだろうね。使役モンスターにとって「ダンジョンの外に出られる」というのは特別な意味を持つと思う。あの冷静なラムでさえFS遷移した時、そしてダンジョンの外に出た時に感動のあまり心を乱していたぐらいだし。

その可能性がリンにもおそらく今日、そしてほぼ目前に迫っているのだ。緊張するなという方が無理だろう。

そして今日はリンがレベルアップする可能性が高いということで8人(3人+5体)全員で討伐を行った。

いつもの恩方ダンジョンの4階層だが、どこか空気が張り詰めている気がした。全員が、リンの瞬間を見逃すまいと集中していたと思う。

――そして、ついにその時がきた。

リンがモンスターを倒した直後、静かに目を閉じた。俺は息を呑んだ。

「リン、レベルアップしたのか?」

思わずそう尋ねると、リンは小さく頷き次の瞬間――俺に抱きついてきた。

「ありがとうございます。ご主人様、たった今レベルアップしました。FSも遷移して……外に出られると思うですです!」

その言葉を聞いて、胸の奥が熱くなった。

「そっか、よかったな」と思わず頭を撫でていた。

――あれ、これって良くないんじゃ……?

女性の頭を撫でる行為は、ネットで何か炎上していた気がする。女性から「気軽に女性の髪に触るな気持ち悪い。イケメンでも許されない行為だぞ」みたいな感じの書き込みが多数あったと思う。

だが今さら手を引くのも不自然だ。話題を変えよう。

「おめでとう、でも、もう“ご主人様”はやめだぞ。レンさんと呼ぶ約束だっただろ。外に出るならなおさらだ」

そう言うと、リンははっとしたように目を瞬かせてそして微笑んだ。

「そうでしたです。レンさん、ごめんなさいです」

その笑顔に、思わず視線を逸らす。

――やばい、これは照れる。美人に笑顔で名前を呼ばれるとどうしても顔がにやけてしまいそうになる。

しかし横を見ると、ひよりがジト目でこちらを見ている。これはまずい展開だ。

何とかして再びごまかさないと。

「えっと……じゃあ、今日はもう少しだけ頑張って、早めに切り上げようか」

「はい、もう少しだけ頑張りましょう」と皆が声を揃えた。その後はいつものように2組に分かれて討伐を進めることに。やはり次のレベルアップのために効率が大事だからね。

次はロア、ルフ、クーの順番になるだろう。大体ひと月ごとに一人ずつレベルアップしていくペースだ。みんなダンジョンの外に出る日が近いということで気合が入っている。

透子さんはというと、やはり例の手帳を片手に感動のあまり小刻みに震えていた。

「再び世界初の光景が……!」とメモを走らせている。

いや、二回目だから世界初ではないと思うのだが……まあ、嬉しそうなので突っ込まないでおこう。透子さんにはそのまま研究を頑張ってもらいたい。

討伐が終わるころになると、リンは再びそわそわし始めた。

一方でラムは「落ち着こうね」とやさしく言っている。ロア、ルフ、クーは「おめでとう、頑張ってね」と激励していた。

本当に素晴らしい仲間達だ。みんながリンの新しい達成を素直に喜んでいる。そしてお互いに励まし助け合っている。

リンは間違いなくレベル5になりFSは遷移している。ダンジョンの外に出ることができるはずだ。問題は何もない。いけるはず。その瞬間が近づいてきた。

そして――リンはゆっくりと、そして確実にダンジョンの外への一歩を踏み出した。

外に出た瞬間、リンは目を細めて空を見上げた。

淡い光を浴びながら、うっすらと涙を浮かべていたようにも見える。やっぱり使役モンスターにとっては嬉しい瞬間なのだろうな。

その顔を見て俺も素直に嬉しいと思った。頑張ってきたことが1つ1つ成果になっている。今後も頑張ろうと思えた。

静かに頷いた俺の隣で、ひよりも、ルナも、ラムも笑顔を浮かべていた。

「ラム、リンにはいろいろと教えてやってほしい。まだまだ分からないことがあるだろうからな」

その俺の言葉にラム、そしてリンも頷いた。これから新しい部屋でラムとリンも一緒の生活になる。本当に楽しみだ。