軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第148話「大人への警戒」

#第148話「大人への警戒」

ルナが仲間に加わってからというもの、成長のスピードは驚くほどだった。

ルフ、クー、ひより、ロア――どのメンバーも経験値がみるみるうちに溜まっていく。おもしろいぐらいだ。

おそらくルフ、クー、ひより、ロアだけでも3階層のボア相手なら、もう敵ではない。そこで更にレベル4の俺たちが補佐に付くんだから経験値が貯まるのもあっという間だ。

みんなの連携も上がり、戦いのテンポも早くなっていた。

「もうすぐ全員レベル4だな」

俺がそう言うと、ひよりがうなずく。

「うん。私もロアもルフもクーももう少し。計画より倍以上のスピードで進んでるから、朝倉さんもきっと驚くと思うよ」

「そうだな。今度の定期報告で朝倉さんに伝えよう。透子さんも喜ぶと思う」

もうすぐ定期報告だ。

そのときにみんなの成長を伝えたら、さぞかし喜ぶだろう。

……そう思っていたところで、ルナが少し難しい顔をした。

「なあレン、ひより。ひとつ聞いていいか?」

「ん? どうした?」

「ちょっと言いにくい話なんだがな、その……朝倉さんって人、信用していい相手なのか?」

思いがけない質問だった。ひよりは少し眉をひそめながらも、「大丈夫だと思うよ」と答える。まあひよりにとっては直の上司だけに悪く言われるのは嫌だろう。

「朝倉さんは別に変な要求もしてこないし、ちゃんと筋の通った人だと思うけど?」とひよりは言う。

「そうだな。俺もそう思う。それどころか随分お世話になっているんだけど……何か気になることでも?」

ルナは少しだけ目を細めて言った。

「いや、これは感覚の話なんだが――大人ってのは、自分の正義のためなら平気で裏切ることがある。朝倉さんにはそういう雰囲気を感じたんだ。もちろん朝倉さん個人は悪くないかもしれないがその“上”が何を考えているか分からないしな」

「上、か……」

「ああ。彼らは“国”とか“組織”とか、守る範囲が広い。そして政治家とも通じているだろう。そういった人間の要求は断りづらい。だから個人の都合なんて簡単に切り捨てられる。あの人は誠実そうに見えるけど、もし何かの事情があれば、レンを利用することだって切り捨てることだってあるかもしれない」

ひよりは少し口をとがらせた。

「そんなに疑ってたら、誰も信じられなくなるわよ」

「それも分かってる。でも“完全な善人”なんて、そうそういないんだ。私もその時々で都合よく生きてる。立場が人を変えることもある。結局は“誰をどこまで信じるか”って話さ。そして朝倉さんは間違いなく組織の人間。組織最優先で動くだろう。これは仕方がないことさ。常に注意だけはした方がいい」

なるほど……。

ルナの言葉は重かった。彼女は道場でもかなり上の立場だろう。いろいろな大人に揉まれて育ってきているのだろう。そして修羅場をくぐってきたのかもしれない。

更にソロで4階層を踏破しているということで有名人にもなっているから利用されたこともあるのかもしれない。その手の話に敏感になるのも理解できる。

「でも、今のところ朝倉さんに怪しいところはないし、利用されてる感じもしないよ」

「まあな。けど、今後もそうだとは限らない。もし“お偉いさんと会ってくれ”とか、“特別な案件に協力してほしい”なんて言われたら注意した方がいい。その手の話には裏があることが多い」

「うーん……でもお偉いさんに会うくらいなら別にいいんじゃない?」とひより。

「いや、そういう相手こそ厄介なんだ。朝倉さんは誠実でも、その先の誰かは違うかもしれない。今後、レンは更にレベルを上げていく。どうしても注目されるようになっていくだろう。だから今のうちに注意しておいた方がいい」

「なるほどね。気をつけるよ」

「朝倉さん本人はいい人でも、彼自身が誰かに利用されたらどうしようもないからな。そして組織から命令を受けたら彼も従わざるを得ないだろう」

ルナは続けた。

「あと、個人的な印象だけど……エリナさんの方が信頼できる気がする」

「エリナさんか。確かに正義感が強そうだな」

「とはいえ、彼女も朝倉さん側の人間だ。絶対的に信じ切るのは危険だと思うがな」

「……それを言い出したら、誰も信じられなくなるな」

「まあ、そうなんだけどね」

ルナは少し笑った。

「他に信頼できる人はいるのか?」

「ああ、クラン『暁の牙』の黒澤さんと田嶋さんだな。俺がレベル1のころから何かと気にかけてくれてる」

「ほう……そういう人がいるなら心強い。いざとなったら、その人たちに相談するのもいいだろう」

「そうだな。朝倉さんの動きが変だと思ったら、黒澤さんに相談してみるよ」

「うん。それがいい。――できれば、そのクランの人達にも一度会わせてくれ。私の目でも判断しておきたい」

ルナの瞳は真剣だった。

――彼女の警戒心は、単なる猜疑ではないだろう。俺よりも早くすでに大人の世界に入り込んでいる。そこで得た知識や経験を俺に伝えてくれているのだと思う。

信頼と警戒、その両方を持ち合わせているからこそ、彼女は今の地位にいるのだろう。

俺もルナと同じように有名になって利用される可能性もあるのだろうか?そう思うとちょっと憂鬱にもなった。