軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第145話「立ち直るクランと自信喪失(佐藤君視点)」

#第145話「立ち直るクランと自信喪失(佐藤君視点)」

紗月さん経由で、御影君の状況が伝わってきた。彼はまだコロナで大変らしい。ちょっと気の毒だが、こればかりは仕方がない。

誰にだって、病気になることはある。

それでも御影君は休んでいる間にもクランのことをいろいろ考えてくれていたようで提案書を送ってきた。

紗月さん経由で届いたその書類は、なかなか立派なものだった。

そこには、代理として本田というレベル4のハンターを派遣するという内容が書かれていた。

しかも御影君が自分のポケットマネーで費用を出すらしい。

3階層を余裕で回れるレベル4の人はうちとしては喉から手が出るぐらい欲しい。しっかりした提案だと思う。

もしこの人が本当に立派な人なら、今の緩んだクランが立ち直るかもしれない。少しだけ、期待が膨らんだ。

……ただ、御影君の“人選”という部分が、正直ひっかかっていた。

これまで彼の紹介でやって来た人たちは、強いには強いが、どこか癖が強くて、やりづらい人ばかりだった。

レベリングの時は確かに助かったけど、態度が横柄でいかにも面倒くさそうに動く人ばかり。

だから、また同じようなタイプが来るんじゃないかと心のどこかで不安に思っていた。

そして当日――。

本田さんという人が現れた。

最初に聞こえた言葉で、僕は耳を疑った。

「よろしくお願いします。レベル4ということで皆さんよりレベルは上ですが、新参者の一番下っ端です。何でも命令してください」

えっ……?

御影君の紹介で来た人とは思えない。落ち着いた口調、丁寧な言葉。見た目もまずまず清潔感があって、まるで一流企業の社会人みたいだった。

みんなも驚いたようでお互いに顔を見合わせている。紗月さんも同様に驚いているように見える。彼女も知らなかったのだろう。

しかも、行動もすごかった。

レベル4の実力者なのに、雑用から何から何まで率先して動く。面倒だと思って誰もやりたがらないことまでやるのだ。逆にこちらが居心地が悪い。

一応、1日5時間ぐらいの契約らしいけど、多少時間を過ぎても文句ひとつ言わない。凄い人だ。

人間ができている。

そう感じた。

そして何より、こちらを立ててくれる。

「私が提案してもいいでしょうか? リーダーを差し置くのは問題だと思いまして」

本田さんはちゃんと確認を取ってくるのだ。勝手に発言することもない。

更に、現状のクランを見てこう言った。

「今日、1回活動を拝見させていただいたのですが……差し出がましいことを申しますが、やや覇気が足りない気がします。今一度、方針を話し合ってみてはどうでしょう?」

確かにその通りだと誰もが思ったようだ。特に反対も出ず彼の提案でみんなで集まって話し合うことになった。

いざ意見を出し合ってみると、意外なほど本音が出てきた。

「リーダーは佐藤君でいい。でも、もう少し引っ張ってほしい」

「経験値を全部リーダーに集めるのはやっぱり不満だ」

「少しでいいから分けてもらえれば、もっと頑張れる」

「雑用を全部押し付けられるのは嫌だ。分担が必要だと思う」

「盾役ばかりではしんどい。たまには変わって欲しい」

「時間を守らない人がいるのはやはり問題では?今一度取り決めを」

「仕事している人間はきつい。その辺りは多少緩めてもいいのでは?」

……なるほど、そういう気持ちだったのか。

僕は少しショックだったが、みんなの気持ちはそれなりに理解できた。いつも不満があったのだ。僕も不満があったのだけどそれはみんなも同様だったのだ。話し合いをしない僕が悪い。責めることはできない。

本田さんは、誰の意見にも丁寧に頷きながら、時には厳しくも的確に言葉を返していた。

「そうですね。でも、それはリーダーとか他人の責任だけにするのは違うと思います。みんなで乗り越えるべき問題ですよ」

「協力するというのは全員で同じ方向を向くことですよ。でもこのクランは素晴らしい。少なくともみんなが前を向いています。だからもっと協力することができます。それによって上に行けます!」

その言葉に、みんながうなずいた。

場の空気が、どんどん前向きに変わっていくのがわかった。

そして、話し合いの末に決まった方針はこうだった。

基本的には今まで通り。ただし、経験値は完全に僕一人に集めるのではなく、ある程度分散させる。

それでみんなのやる気が上がるならその方がいい。

結果的には、その方が僕のレベル上げも早くなるかもしれない。

「すみません。リーダーを差し置いておかしなことをしまして。本当は私は陰に回ってリーダーの佐藤さんから話をしてもらった方が良かったのでは?」

「いえ、そんなことはないです。本田さんが言ってくれたからこそ、みんな本音を言えたのだと思います」

「そんなことはないですよ。ざっと話して分かりましたが、みんなリーダーの佐藤さんを信用しています。もっと積極的に話すればいいと思いますよ」

なんていい人だ。頼りないリーダーの僕のことまで立ててくれる。そうして、久しぶりに、みんなの顔が明るくなった気がした。

本田さんのすごいところはそれだけじゃなかった。

戦闘中でも常に何度も褒めてくれるしアドバイスも的確だ。

「素晴らしい、ナイスフォローです! 助かりました! ただ、もうモンスターの重ならないように少し立ち位置をずらすともっと良くなりますね!」

「凄いですよ! 辛い場面でしたが、よく耐えました! ただ、無理せず仲間を信じるのも大事ですよ。もっと後ろに流してください。もし何かあったら私が責任を取りますので!」

「今の一撃はすごい! 本当にレベル3ですか? レベル4の攻撃かと思いました!」

みんな、褒められるたびに笑顔になる。表情が生き生きしていくのが分かった。クランが一気に明るく、活気づいていった。

中には、今日の1日だけでもうすっかり“本田さんファン”になっている人もいるほどだ。

――これが、本物のリーダーなのかもしれない。

思えば、先日石動さんから受けたアドバイスも、まさに同じことだった。みんなと話し合う。積極的に声をかける。常に感謝を。

僕はそれを聞き流して、ふてくされていただけだった。

自分の情けなさを思い知らされる。

……やっぱり、僕はリーダー失格なのかもしれない。いっそのこと本田さんがリーダーをした方がいいのでは。