作品タイトル不明
第117話「初めての合同」
#第117話「初めての合同」
以前の約束通り『暁の牙』の面々と合同討伐をすることになった。こちらは俺ひとり。一緒に組んでくれるメンバーはレベル4が2人、レベル5が2人で俺と合わせて合計5人での討伐だ。もちろん秘密にしている使役モンスターを出すわけにはいかない。
場所は新宿ダンジョン4階層。
集合してすぐ、黒澤さんが簡潔に段取りを確認する。
「レンは状況に応じて自由に動いていい。――だが、できるだけ経験値が均等になるように動いて欲しい。レンはソロの経験が多いから難しいかもしれないができるだけうちのメンバーにもトドメの経験値を譲るように配慮してやってくれ」
「逆にうちのメンバーは、レンがそういった経験値配分になれていないのを考慮に入れてくれ。ある程度の不均衡があっても許してやってくれ」
「「「了解です」」」
そうなんだよ。俺は慣れていないどころか他のメンバーと一緒に合同で討伐なんて初めてだ。下手に動いて嫌われないかな?ちょっとドキドキする。
軽い打ち合わせのあと、最初の敵の群れが来た。10体編成に見える。体力寄りの新宿ダンジョンだからレベル4のストロングウルフが一番強い、それが……2体だな。
その周辺にレベル1~3のモンスターがたむろしている。うん、全く問題ない。典型的な10体編成だ。
いつも俺は使役モンスターと一緒。2人(1人+1体)もしくは3人(1人+2体)で4階層をやっている。今回は5人だから楽勝だろう。ちょっと気楽だ。しかもいつもの恩方ダンジョンより新宿ダンジョンはやりやすい。
その俺の気持ちとは裏腹に他の4人は一気に緊張感をまとった。
レベル4、レベル5の一人ずつが小盾を構えて前へ。他の2人が少し横から様子を伺って盾役が止めたモンスターを倒していく形かな。
ならばおれは左側の半分を受けよう。
「こっちの5体を押さえます! 右の五体、任せます!」
俺は向こうの4人をたまに横目に見ながら適当に引き付けて倒した。敵モンスターのレベル4がこちらに1体いるから向こうは余裕があるだろう。
と思ったがちらっちらっと見ると意外と盾役に余裕がない。まあそれはそうか。がっつり抑えるのは意外と難しそうだ。大変だな。
俺たちの動き回る盾役とは違うのでこうやって見ると普通の盾役は新鮮だ。
俺はストロングウルフ以外をさっさと倒し、ストロングウルフも適当にダメージを与えた。経験値配分があるだろうからこいつは他の人に回した方がいいだろう。
他を見るとあらかた片付いたようだ。俺は敵を適当にいなしてそちらに回した。
「ダメージ入ってふらふらなので後は適当にお願いします」
「ありがたい」
俺が眺めている先では4人でたこ殴りにしてストロングウルフを討伐して終了。
これで敵モンスター10体が全て崩れ静かになった。
倒したあと、4人が小走りに寄ってくる。
「強っ……本当にレベル4なの?」
「何で4階層で、1人で5体を引き受けられるの?レベル4なんだよね、さすがに強すぎない?」
「俺も見てたけど5体相手でも余裕あったよな。俺はレベル5なんだけど自信なくなってきたよ」
褒められるのはありがたい。けど、ちょっと余裕すぎるのはいいのかな?安全マージンがあるのはいいが緊張感がなさすぎる。俺は頭を掻きながら提案した。
「敵が5体くらいなら俺がまとめて押さえられます。だから今回のように、毎回、群れを左右に割って“半々担当”すればいいと思いますよ」
「うーん。こちらが楽すぎるような気もするがそれが一番安全かな?」
「敵が15体の時はどうしようか?」
「その場合は5体をできるだけ早く倒してそちらに向かいますよ」
基本的な形が決まった。後は随時修正していけばいいだろう。
次も敵が10体だったので楽だった。同じような感じで左側の片方の5体を受け持つ。位置取りを考えながら引き付けて倒していく。
一応、レベル4のストロングウルフだけは倒さないように慎重にダメージを与えて、お任せした。やはり10体なら楽勝だな。
そう思っていると今度は最大数の15体の敵が来た。これはちょっと大変かも。俺は5体を引き受ける。そうしてできるだけ早く倒していく。
俺が5体を倒しきると向こうはまだ苦戦している。そこで俺も参戦。5体を適当に引き受ける。あとは10体の時と同じなのでほぼ問題ない。
俺は再びストロングウルフだけを残し、止めを向こうに任せ終了。15体でもまずまず楽勝か。手ごたえはないが仕方がないだろうね。安全第一だ。
5~15体の敵。そのいずれが来ても問題ない。敵を選ぶ必要がないので楽だ。
その後も休憩をはさみながら150体ぐらいを討伐した。
「凄いな、今日は150体も討伐した。臨時収入だ、ありがてー」
「レベル4とレベル5の混成で150体ならばかなりいい方だな」
周りの人達は喜んでいる。俺としては物足りない感じでまだまだいけるのだけど、今日はこれでいいのだろう。
最後の群れを片付けた後、メンバーの一人が遠慮がちに聞いてきた。
「……今後もさ、たまにでいいから一緒にやれない?」
頼ってくれるのはありがたい話だ。けれど俺は外部の人間だし、恩方ダンジョンでの育成優先もある。
「機会があえばですが、俺は外部の人間なので何とも言えません。そこは黒澤さんに」
「そっか。無理は言わない。良かったら考えておいて欲しい」
やはりラムやリンと組むときの意思が絡み合うような連携とはちょっと違うな。そして安全マージンがいつもよりもかなり高い。安全なのはいいが、どうしても物足りなさの方が勝つ。何とも複雑な感じだ。もちろん何度もやれば変わっていくのだろうけどね。
討伐を終えた後、俺だけが黒澤さんの事務所に寄ることになった。もしかして黒澤さんに駄目出しされるのだろうか?
それとも褒めてもらえる?
俺はちょっとどぎまぎしながら黒澤さんの後に付いていった。