軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

コミカライズ記念:ある休みの日

『はぁ? デートぉ!?』

「うん、たまにはゆっくりしようって」

『あの唐変木が!?』

「キャスリン、変な日本語どこで覚えてきてるのよ」

『ドラマよ』

朝恒例のキャスリンとの情報交換。

初めのころは、『あれは何?』とか、『コレってどういう意味なの?』とか聞いてきていたけど、最近はそれもなくなって、仕事場の愚痴とか芸能人の話とかがメインになってきている。

キャスリンは自分の恋愛話は絶対にしないくせに、私の恋愛話は聞いてくる。スヴェンのことを話すとボロクソに言うけど、それでも聞いてくれるから不思議だった。

一度、本当は好きだった?と聞いたことがある。頭は大丈夫かと聞き返えされた。そして、スヴェンに興味があるんじゃなくて、私の話だから聞きたいのだと言われた。

キャスリンは優しい。

私があまり外出したり、友だちがいないことを心配してくれる。元の世界では対等に話せる相手がいたけれど、こっちではスヴェンにも結局は丁寧な言葉遣いになってしまっている。

心配なのだと言ってくれた。環境が違いすぎる。キャスリンは楽しいが、私はどうなのかと。

『あっ、そろそろ時間だわ。行ってくるわね!』

「いってらっしゃい!」

以前キャスリンとした会話を思い出しつつ話していたら、いつの間にかキャスリンの出勤時間になっていた。

お仕事頑張ってねと言うと、リンもね!と言ってくれる。そんなキャスリンと話せる朝が、私は本当に楽しみだった。

馬車に揺られること二時間。スヴェンのおすすめの湖に向かった。

道中に見えた建物や景色のことをいろいろと教えてもらって、全く退屈せずに過ごせた。

馬車を下りて、うーんと背伸びをしてから深呼吸。

秋の始まりということもあり、あまり花は咲いていないけれど、辺りの木々は赤やオレンジに紅葉している。メープルの木らしい。そして、少し先に見える湖は対岸が見えないほど大きなものだった。

「っ、はぁ。綺麗な空気」

「だろう? 湖の側は少し肌寒い。ブランケットを持って行こう」

「はいっ!」

スヴェンと手をつないで、ランチバスケットとブランケットをそれぞれで持ち、湖の近くまで歩いて行った。

「わぁ、波打ってる」

湖なのになんでだろうと思ったら、風で湖面が揺らぐのだそう。大きな湖なので、場所によって気流が違うことで波が大きい場所と小さい場所もあるのだとか。

知らなかった。

そういえば、琵琶湖にも波があるとか聞いたことあった気がする。

湖面に映る景色をぼーっと眺めていた。

あまりにも違う世界の景色過ぎて。

遠くに見える高い山。山肌は真っ白なのに山頂はくぼんでいて、真っ赤。溶岩の色が遠くからでも見える。

活火山なのか聞くと、何百年もあのままで安定しているのだそう。しかも、赤く見えるから、溶岩がすごく上がってきているように見えるけど、実際は穴が地中深くまで続いていて、乱反射で光が届いているのだとか。山の土が特殊なのだとか聞いたけれど、よく理解は出来ていない。

「…………元の世界が恋しいか?」

地面に荷物を置いたスヴェンに、後ろからそっと抱きしめられた。まるで、どこにも行かないでというように。

「ううん。世界って広いなーって景色を眺めていただけですよ」

「そっか」

小さな声で「よかった」と呟いたのが聞こえてしまった。不安にさせてしまっていたらしい。

ちょっと申し訳ない気分。

「スヴェン、お昼食べましょう!」

「ん」

二人並んで寄り添って、持ってきたサンドイッチをパクリ。ハムとチーズとトマトとレタス。普通のサンドイッチだけど、いつもと違う景色とスヴェンが隣にいるってだけで、とっても美味しく感じる。

スヴェンに美味しいですねと言うと、ふわりと微笑んで頷いてくれた。

「こっちは?」

「タマゴサンドです」

ゆで卵を粗く潰して、マヨネーズとマスタードと少しのお砂糖。それだけ。

「美味い。もう一つあるかい?」

「はい、ありますよ」

どうぞと渡すと、少し頬を染めてお礼を言われた。どうやら子どもっぽかったかなと恥ずかしくなったらしい。

「そんなところも好きですよ」

「リン――」

ちゅ、と頬に温かい感触とリップ音。

本当は口にしたいが諦めると言われて、今度は私が頬を染めることに。

食事を終えたら、スヴェンの股の間に座るよう言われた。そして、ブランケットを肩に掛けた状態で後ろ抱きに。

私は温かいけれど、スヴェンは寒くないのかな?

話の流れでそっと確認してみたら、更にギュッと抱きしめられた。

「リンを抱きしめているからな。暑いくらいだよ」

そう言って、首筋に口づけ。

いつのころからか、スヴェンのこういったスキンシップがちょっとレベルアップしたというか、過剰になったというか。

こういった西洋の触れ合いって、テレビで見ていたときは羨ましいなぁとかと思っていた。実際に体験し、それが日常になると、嬉しくもあり恥ずかしくもある。

「ははは! リンはいつも恥ずかしそうで可愛いな」

「っ……もうっ!」

「リン、また来ような?」

「はい。また」

こうやって次の約束が出来ることに感謝しつつ、スヴェンと手を繋いで馬車に乗り、屋敷に戻った。

――――ありがとう、スヴェン。

―― fin ――