作品タイトル不明
第816話 商人と村人たちの攻防(3)
落ち込んでいるエルフのお兄さんを気の毒に思いつつ、私はマカレナたちに誘われて、牧場組が品物を出している場所へと向かう。
そこではヨシヒトさんの説明を聞きながら、カスティロスさんが満足げな顔で、もぐもぐやっている。
「あ、サツキ様!」
一緒に売り子をやっているヨシヒトさんの妹のメイさんが嬉しそうな顔で手を振ってきた。
同じく私に気付いたヨシヒトさんもペコリと頭を下げてくる。
「こんにちは。カスティロスさん、どうです? ヨシヒトさんのチーズ」
今回、ヨシヒトさんたちは初めて売り物としてのチーズを用意をしてきた。
ちなみに二種類ほど用意されていて、一つはハードタイプ、もう一つはフレッシュタイプ。
元々ヨシヒトさんの出身の村(帝国の北部にある村)で作っていたのはハードタイプのものだったので、これはすぐに作ることができた。
しかし、ヨシヒトさん的にグルターレ商会へ卸せるほどの出来ではなかったそうだ。
私たちは試作品をおこぼれで分けてもらっていたけれど、十分に美味しかったけど、ヨシヒトさんとしては納得いくものではなかったのだそう。
「素晴らしいですね! これは本場のケセケト村のチーズより美味いのではないですか?」
「そう言っていただけると嬉しいです」
ヨシヒトさんが頬を染めながら、私に試食用に一切れ渡してくれた。
濃厚なチーズの香りが鼻から抜けていく。少し塩味が強いけれど、お酒のつまみには十分だろう。
思わず親指を立てて、ニッと笑う私。
ヨシヒトさんも同じように指を立てて、もう一つどうぞ、と差し出してきたのはカッテージチーズのようなフレッシュタイプのチーズ。
これはヨシヒトさんの出身の村で村人たちだけで食べていたものだそうで、商品としては流通していない、知る人ぞ知るチーズらしい。
これは長期保存は効かないので、行商人に売る物としては難しいところだけれど、カスティロスさんだったらマジックバッグを持っているし、商品としてやっていけるんじゃないか、と私が勧めてみたのだ。
「ほお、これは随分とさっぱりしたチーズ? ですね」
「はい、そのまま堅パンにのせたり、サラダなどに使ったりします。先日、サツキ様から教えていただいた、カボチャ?とレーズンのサラダも美味しかったですよ」
「カボチャ?」
「あー、私の国の野菜の一種ですね」
ヨシヒトさんがうっとりしながら語っている。
私としては、ヨシヒトさんのカッテージチーズが美味しかったので、思わず大量に作ってしまっただけなのだが。
「それは、どんな野菜ですか」
「えっ?」
カスティロスさんがチーズよりもカボチャに興味をもってしまい、チーズの話に戻すのが少し大変だった。