作品タイトル不明
第815話 商人と村人たちの攻防(2)
グルターレ商会の品揃えの中に、見たことがない果物らしきものが並んでいた。
「あ、青い実」
こちら(異世界) でも、色んな果物を見てきたけれど、それは形が変わってたり、大きさが変わっているだけで、色合いには忌避感を感じるものでなかった。
しかし、この青は別だ。
「青というよりも、紺色に近いかも」
大きさはマンゴーほどだろうか。ずっしりと重い感じで、つるりとした手触りは陶器みたい。コツコツと叩くと音がするくらいに固い皮。
これを正直、果実だとは思えない。むしろ芸術品みたいに展示とかしていそうだ。
「サツキ様、これはコントリアの南の隣国で見つけてきたんです。ケッテケという名前の果物です。よかったら、試食してみますか」
果物を売っているエルフのお兄さんが、ナイフでさくり、さくりと青い実を切りながら話を続ける。
「こいつは、収穫してから一週間ほどで完熟すると、すぐに傷んで食べられなくなるそうです」
ちなみに、この紺色が一番の食べ時の色なのだとか。切り口をみると、厚い皮の中の果肉は白い梨のような瑞々しい感じだ。
傷んでいるものには、皮に黒い斑点が浮かんでくるそうで、中も真っ黒になっていて食べられるものではないのだとか。
「時間停止のマジックバッグがあれば、なんとか輸送もできるんですが、その分、お値段も高くなります。せいぜい、王族や高位貴族くらいでしか食されないんですよ」
「え、いいの? そんな高いもの、試食して」
「数はありますし、サツキ様ですから大丈夫です(カスティロスがいいって言ってたし)」
「じゃあ、いただきます。あ、エイデンも食べる?」
「あ」
まさかの口をあけて要求してくるとは。
エルフのお兄さんが苦笑いしながら切った果実を私に渡してきたので、そのままエイデンに差し出すと一口で食べてしまった。
「どう、美味しい」
「ん、まぁまぁだな。あっさりした甘い感じ……こいつは、どこかで食べたことがある」
エイデンが思い出そうと考えている間に、私も一つ貰って食べてみる。
しゃくしゃくとした食感……これは、やっぱり梨と同じだ。 あちら(日本) の梨よりも、ちょっと甘味が足りない感じではあるものの、これはこれでいいかもしれない。
「あれ、ケッテケだ!」
私たちの背後から声が聞こえてきた。
ブルノが嬉しそうな顔で走ってくる。その後を、マカレナとラオ、トコも一緒に来ていた。
「懐かしい~。サツキ様、美味しかった?」
「ええ。ブルノは食べたことあるの?」
「うん! こっちに来る前、どこにでもに生ってたから、姉ちゃんとお腹すいたらよく食べた」
「へぇ……」
ブルノの話を聞いて、チラリとエルフのお兄さんに目を向けると、愕然とした顔になっている。
「有名な農園でしか栽培してないと聞いて仕入れたのに……」
「……いくらで仕入れたんです?」
「聞かないでください……」
どうも、かなりの高額で仕入れたようだ。
エルフのお兄さんはショックを受けつつ、ブルノたちにも試食をさせてくれた。
「ん~、これ、ちょっと甘味が薄いかも」
「前に食べたののほうが美味しかった」
マカレナとブルノが残念そうな顔をしている。
「そ、そんなぁぁぁぁぁぁ」
現実はなかなか厳しいようだ。
エルフのお兄さんは膝から崩れ落ちてしまった。