軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

<レミネン辺境伯>

レミネン辺境伯家では、最近、よくないことが続いていた。

長男のユリウスは、去年、王太子の視察に同行した際の事故以来、屋敷の離れに閉じこもったままだ。

視察で向かった先は『神に愛されし者』のいる村だと知ったのは、ユリウスの事故の連絡がきた時だった。

ケディシア伯爵から届いた事故の詳細報告では、エミリア・ゴンフリー侯爵令嬢とヘンリック・マルムロス伯爵令息と同じ馬車に同乗していたらしく、その馬車が正体不明の蔦に絡めとられ走行不能になり、救出されるまで、二日ほど真っ暗闇の中にいたようだった。

護衛たちまでもが蔦に覆われていたという。

その蔦も、救出のために切り落としてみると、灰のようにボロボロになって、なくなってしまったらしい。その様子から、彼らが神に反するようなことを行ったのではないか、というのがもっぱらの噂だ。

それまでは脳筋で戦うことしか頭にないような長男のユリウスだったが、すっかり怖気づき、暗闇の中にいることを恐れるようになった。その上、魔物の討伐にも出ることなく、離れに引きこもってしまっている。

特にメイドたちのような若い女性が近寄るだけで、叫び声をあげる等、今までにない様子に、馬車の中で何が起きていたのか、ユリウスは語ることはできなかった。

先代辺境伯の姉である伯母は、今年の初めくらいに嫁ぎ先の侯爵家から離縁されて戻ってきた。

王都でもそれなりに社交界で幅を利かせていた伯母だったが、ある日突然、自分の部屋から出てこなくなったらしい。

それだけだったらよかったのだが、世話をするために部屋に入ってきたメイドや侍女に暴行をくわえるようになったという。

あまりに酷い状況に、さすがに侯爵家のほうでもこれ以上は無理となって、辺境伯家へと戻されてしまった。

伯母曰く、侯爵が浮気をしているから、浮気相手を折檻しただけだという。

実際のところは、生真面目な侯爵にはそんなことはまったくなかったのだが、伯母の中ではそれが事実になっているようで、別宅に閉じ込めることになった。

『やっぱり、旦那様もお父様と同じなのね!第二夫人など、許さないっ』

『私はお母様とは違う!』

『なぜ、私が追い出されなければならないのっ!』

そう叫ぶ伯母の姿は、辺境伯からは哀れにしか見えなかった。

そして今度は、領都にある老舗商会の、ミエパリーノ商会がとある村へ向かい、そこで不興を買ったという。

手元にあるケディシア伯爵から伝達の魔道具で急ぎ送られてきた短い手紙には、あまり詳しいことまで書かれていない。

ミエパリーノ商会とは長い付き合いだけに、辺境の村程度で、と思っていたところに、今度は教会から、わざわざ司教がやってきた。

『ミエパリーノ商会の次男が、「神に愛されし者」の住む村で問題行動を起こしたらしい』

その言葉に、辺境伯は頭が真っ白になる。

長男のユリウスも、元はと言えば『神に愛されし者』の村と関わったからだ。

――ケディシア伯爵、なぜ『神に愛されし者』が相手だったと書かないっ!

一瞬、頭を抱え込むレミネン辺境伯だったが、すぐに頭を切り替える。

ここで対応を間違えると、ミエパリーノ商会だけではなく、辺境伯領もまずいことが起こるかもしれない。

顔を真っ青にした辺境伯は、司教から詳しい話を聞くとすぐ、騎士たちをミエパリーノ商会とチャーリー兄弟の村へと兵を派遣したのは言うまでもない。

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