軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第762話 領都に滞在する(4)

初めての「ここから、ここまで」に気をよくした私。

お会計するにあたり、初めは公爵家で持つとリリアさんに言われたけれど、エイデンからの貢物の魔物素材の多くをタブレットの『収納』内で『売却』しまくったおかげで、お金がほぼ減らずに残っている。これを今使わずに、いつ使う。

私が即金でポンとお金を出すと、リリアさんも女性スタッフも目をまん丸にした。

確かに、公爵家の侍女のリリアさんが連れてきたとはいえ、こんな地味な格好の私がこれだけの大金を出すとは思いもしなかっただろう。

そのせいなのか、フォートン商会の女性スタッフが上のフロア(宝飾品とか魔道具とかもっと高そうなのがあるフロア)を勧めたそうだったのだけれど、それほど興味が惹かれなかったのでお断りした。

だって、宝飾品はあの山に住んでいる限り使うイメージがないし、魔道具はうちにはギャジー翁が作る物がある。それ以上の物なんて、ありえないだろう。

それよりも、私もマグノリアさんも、もっと普通に街の店を見て歩きたいのだ。

服を買ったことで、義理は果たしたと思うので、私はリリアさんに他の普通のお店を紹介してもらえるようにお願いした。

「そうそう、こういうところに来たかったのよ」

私とマグノリアさんは、賑やかな市場のようなところに来ていた。

リリアさんは大柄な男性と一緒に、私たちの後を歩いている。どうも男性は護衛としてついてきてくれていたようだ。ここに来るまで私はまったく気付いていなかったけど。

生鮮食品を取り扱っている店が続いている風景は、テレビで見たパリの大きなマルシェみたいだ。ヨーロッパのほうに旅行したことがなかったけれど、きっとこんな感じなんだろう。

あちこちから売り子の声が聞こえる賑やかな市場に、ワクワクしながら歩く私たち。

普段村の食卓にあがるような野菜もあるけれど、こちらの土地特有の物も多く並んでいる。美味しそうな見たことのない果物もあったので、いくつか購入。美味しかったら、うちの村で育ててみるのもいいかもしれない。

店を見て歩く中、ケイドンの街とは違う店を見つけた。魚屋だ。

「へぇ! ずいぶん大きな魚も扱ってるのね!」

「おうよ。うちはフォントン漁港の直営でな」

「フォントン漁港?」

エクスデーロ公爵領は海に面した領地もあって、その港からの直送らしい。それでも一日がかりで届くそうなのだが、傷まないのかと思ったら、フォントン漁港で氷の魔法を使える魔法使いを雇っていて、氷で冷やして輸送しているらしい。

「ほら、見てみぃ」

そしてお店のおじさんが、氷が詰め込まれた大きな木箱を見せてくれた。中には色んな魚やハマグリやサザエみたいな貝が入っている。

「へー、こんな魚がいるんだ」

「真っ赤な魚なんて、初めて見ましたわ」

マグノリアさんも興味津々。獣人の村ではたまにしか魚料理は食べないので(皆、肉が好き)、ここぞとばかりにおじさんに聞きまくっている。

「なんだい、お嬢さんたちは内陸の出かい」

「え、あー、そう、ですね」

出身ではないが、住んでいるのでそう答えておく。

生魚だけではなく、大きな干物も売っていたので、何枚か買うことにした。

「もう少し奥に行くと、屋台が並んでいるところがある。そこにもうちの系列の店が出ていて、焼き魚や焼き貝を売ってるんだ。よかったら、見に行ってくれや」

麻紐でまとめた干物の束を渡しながら、ニコニコ笑顔のおじさんが教えてくれた。

これは、見に行くしかないでしょ。