軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第734話 ピザとエイデン

エクスデーロ前公爵へ返事の手紙を書いてから四日ほどして、エイデンが戻ってきた。

どこに行っていたのかと思ったら、獣王国の中にあるダンジョンに潜っていたらしい。なんだって、そんなところに、と思ったら、そのダンジョンは魔物から金属がドロップするところらしい。

冒険者としての依頼も受けながら、うちのドワーフたちのために色々と拾ってきたそうだ。

ちなみに、エイデンの城のそばのダンジョンでも金属をドロップする魔物はいるらしいが、かなり深い階層になるのだとか。

今回は、若者組の冒険者も同行してたそうなので、攻略しやすい獣王国のダンジョンにしたんだそうだ。

どれだけエイデンのダンジョンの魔物が強いんだろう、と、ちょっとだけ怖くなる。

エイデンがいれば大丈夫だとは思うけど。

「それで、いつ行くんだ?」

お昼時に帰ってきたエイデン。金属ダンジョンの土産を持って帰ってきた。

土産は、 拳大(こぶしだい) の水晶らしき透明な石。料理の途中なので、タブレットで『鑑定』するのは後にした。

今日は、久しぶりに東屋で鉄製の薪ストーブ兼オーブンでピザを焼いていた。

焼き上がったピザは、ヨシヒトさんのところで作ったソゴワ(牛)のチーズに、畑のトマトと、バジル。果樹園に植えてあったオリーブで作った自家製オリーブオイルをかけた、なんちゃってマルゲリータだ。

自分用にとサイズは小さめなのだけれど、エイデンの視線は焼き上がったピザに固定されている。

エイデンのわくわくした顔は、ピザになのか、旅に出ることになのか。

仕方がないので、四分割して、エイデンの前に置く。そのままだと、一枚丸ごと、ぺろりといきそうだからだ。

ストック用に焼く前のピザを皿ごと『収納』しておいて正解だった。

オーブンの中に、もう一枚、ピザを入れる。焼き上がるまで、しばし待たねば。

「エイデンの準備が出来次第かな。私はいつでも出かけられるから」

一応、前公爵のところに持っていく手土産は購入済みで、『収納』にしまってある。

手土産といったら消え物が無難だろうと思って、 あちら(日本) の高級チョコレートの詰め合わせを買ってきたのだ。

自分じゃ絶対買わないヤツだ。

「じゃあ、今すぐ行くか」

「は?」

エイデンの言葉に振り向くと、すでにピザはなくなっている。

口の周りが、チーズとオリーブオイルの油でギトギトしているように見える。

予想していたこととはいえ、もうちょっと味わって食べてほしいと思うのは、私だけだろうか?

「いやいや、いつでもとは言ったけど、今すぐは無理でしょ」

「そうか? ……あ、いや、そうだな。うんうん」

すっとぼけたことを言うエイデンを、ギロリと睨んだら、慌てて視線を逸らす。

私は大きくため息をついて、オーブンの中を見る。

チーズがぐつぐついいだしていて、ピザ生地の端のほうが、少し焼き色がつき始めている。そろそろ出してもいいだろう。

「じゃ、じゃあ、いつ行くのだ?」

「エイデンがいつでもいいんだったら、そうだなぁ、明日……いや、明後日あたりでどう?」

「おう! いいぞ! 古龍の姿になれば、ひとっとびだぞ!」

「エクスデーロ公爵領の場所、わかるの?」

「う? うーん、五月のタブレットの地図を見れば、わかるだろ?」

確かに、この前教会に伺った時に、ピエランジェロ司祭から、コントリア王国の王都の北西にエクスデーロ公爵領があるのは教えてもらえた。

「……いや、せっかくだったら、のんびり旅をしながら行きたいんだけど」

「うん?」

こちら(異世界) に来て、丸三年。

一番遠出をしたのもセバスの出た帝国の森か、エイデン温泉くらい?

あの森に行ったのは旅行とも言えないし、温泉は今では転移で頻繁に行けてしまうからこれも旅というには微妙。ケイドンの街だって日帰りで買い物に行くくらいだ。

せっかくだったら、他の街や村なんかも見るような、のんびりした旅行をしてみたいと思うのだ。

ただし、危険なのは承知しているので、エイデンは必須。

他にも、 こちら(異世界) の常識のわかる人が同行してくれたほうがいい気もしている。

「ふーん。まぁ、俺は五月と一緒だったらいいけどな」

エイデンがニヤリと笑いながら、オーブンから取り出したばかりのピザに手を伸ばしてきたので、ぴしゃりと叩き落としてやった。