軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第707話 守り札の動作確認

ギャジー翁と大地くん、それにピエランジェロ司祭が、それぞれ私の作った守り札を手に、教会を出た。

「なにごとも動作確認は必要だよね」

ニコリと笑って先を歩き出す大地くん。ギャジー翁もピエランジェロ司祭も、楽しそうに話しながら進んで行く。

正直、動作確認と言われても、呪いがどんなふうに見えるのか、わからない。漠然としたイメージは、瘴気のような黒い靄だけど、実際に見たことがないので、なんとも言えない。

それに、三人の周りには大量の精霊たちが集まっていて、守り札よりも強力そうに見えるんだけれど。

公爵家の宿舎に近づくにつれ、訓練中の賑やかな声が聞こえてくる。

チラリと声のするほうを見ると、マークたちの姿が見えた。腕を組んで偉そうに立っているエイデンを見つけて、クスッとなる。

「!」

そのタイミングで、エイデンとバッチリ目が合う。

とたんに猛ダッシュで駆け寄ってきたから、私は立ち止まるしかない。

「どこへ行く?」

「え、えーと、大地くんたちに渡したものの動作確認?」

「どうさかくにん?」

エイデンは先を歩いている三人に目を向け、一瞬、目をみはる。

「ほお、なるほどな……面白そうだから、俺も行く」

「面白そうって……エイデンには何か見えるの?」

「そうだなぁ。とりあえず、三人の手のあたりがビカビカ光っているようには見えるぞ」

ニヤニヤ笑いながらエイデンが言う。

「え゛?」

ギョッとした私は、変な声が出てしまった。

* * * * *

宿舎の土地を抜け、防風林を抜けると、荒れ果てた土地が広がる。

公爵家の馬車が通ってきた跡があるので、なんとか道らしいものがある程度だ。

本来であれば、五月の山周辺は、このように枯れ草や赤茶けた土地が広がるような場所であった。

「さぁ、この林を抜けたところで、どんな現象がおきますかね」

大地は五月の守り札を手に、一歩踏み出す。

「……まぁ、何も起きないよねぇ」

「呪われるようなことをしてきたのかい?」

ギャジー翁が呆れたような声で言う。

「いやぁ、 こっち(異世界) では何もしてないつもりです。むしろ、 あちら(日本) のほうが厄介そうで」

「ほお? その話はまだ聞いておりませんな」

「あはは。それよりもギャジー翁も何も問題がなさそうですが……さて、司祭様の番ですが(精霊たち、手を出すなよ)」

『はーい』

『たのしみすぎる~』

『かぜの、ようチェックよ!』

『まかせとけ~!』

『まけないわよ~!』

精霊たちの賑やかな声に呆れながらも、大地はピエランジェロ司祭に声をかける。

司祭はニコリと笑い、一歩踏み出した。

その瞬間、まるで待ち構えていたかのように大きな黒い塊が突然現われ、ピエランジェロ司祭へと襲い掛かった。

ボンッ

しかし、ピエランジェロ司祭に触れることもなく、爆散した。

それと同時に、小さな黒い靄が勢いよく飛び去っていき、風の精霊たちが楽しそうな声をあげて追いかけていく。

「うわっ」

「!?」

ギョッとしたのは大地とギャジー翁の二人。

当の本人である司祭は、二人の反応のほうに驚いている。

「ほお、さすが五月の守り札だ」

司祭の後ろから、五月とエイデンが現れた。

「え、何? 何かあった?」

「ちゃんと守り札が効力を発揮したってことだ」

「むー。私の目では確認できないのが、悔しい」

――いやいや。あんな、でかい恨みや妬みの塊なんて、見せられないぞ。

エイデンは五月の背中をポンポンと軽く叩いて宥める。

一方の大地とギャジー翁のところには、徐々に精霊たちが結果の報告へと集まってきた。

『んとね。のろってた じゅじゅつし(呪術師) たちは、ばくはつした!』

『おうとのまちのなかや、やしきのなかで、いきなりばくはつしたから、おおさわぎさ』

『 いらいぬし(依頼主) たちは、ぼーっともえちゃった』

『ただやけどだけのもいたぞ?』

『ころんで、つまづいてるやつもいた』

『かみのけがぬけたやつもいた』

「うーん? そんなにいたの? それに反応の違いは、呪いの強さの違いかな」

「そうだのぉ……しばらくサツキ様の土地の中にいたからか、かなり大きな塊になっていたが」

「……司祭様、よく生きてこれたよね」

「司祭もそれなりに強かなのだろうよ」

二人の視線は、五月の守り札を撫でながら笑みを浮かべているピエランジェロ司祭に向けられた。