作品タイトル不明
第706話 教会に向かう私と師弟コンビ
キャサリンのバレッタに興味津々の大地くんとギャジー翁だったけれど、ベタベタと勝手に触られるのは私でも嫌。
なので、彼らにはピエランジェロ司祭用にと用意しておいたものがあると言って、一緒に教会に向かってもらうことにした。
その隙に、キャサリンたちは宿舎のほうへと向かわせたんだけど、護衛のハンナさんが、残念そうな顔をしていたのには、ちょっと笑いそうになった。
村の正門から出ると、すぐに教会がある。
グルターレ商会はすでに村を出て、ケイドンの街に向かってしまったので、村の外、教会の向かい側に並ぶ仮店舗は閉じられて、人影もなく静かだ。
「こんにちは」
教会のドアを開けて中に入るが、誰もいないので、私の声が響く。
しばらくして奥の部屋のドアが開き、ピエランジェロ司祭が顔を出した。
「おや、サツキ様。いらっしゃいませ。本日は……?」
「あ、この前言っていた、守り札が出来たんで持ってきたんですが、お時間大丈夫ですか?」
「おお! それは、それは。ぜひ拝見させていただきます……おや、ギャジー翁もご一緒ですか」
「すみませんね。私も、サツキ様の守り札に興味がありましてね。お邪魔でなければ、ご一緒させていただきたいのですが」
「フフフ、その気持ち、わかりますよ。おや、ダイチくん。マークだったら、ザックスと一緒に出ているが」
「あ、いえ。僕も守り札に興味がありまして」
「さすが、ギャジー翁のお弟子さんだね……では、あちらの部屋に行きましょう」
ニコリと笑ったピエランジェロ司祭の後を追い、応接室のほうへと向かう。
「マークとザックスくんは、どこに出かけたんです?」
ピエランジェロ司祭に問いかけながら、応接室に入って椅子に座る。
「ああ、実はですね」
話を聞くと、どうも公爵家の面々が泊っている宿舎のほうでは、護衛で来ている騎士の方々と一緒に訓練に勤しんでいるらしい。
相手はエイデンだ。
前公爵からの願いを聞いて、相手をしてくれているらしい。
黒いドラゴンの姿に感激した前公爵や騎士たちに、マークたちがエイデンの人型での凄さを語りまくった結果らしい。
……エイデン、チョロい。
「そもそも、平民の子供が、騎士相手に訓練していただくなんてことは、ありえません。孤児となったら尚更です。貴重な経験をさせていただいていますよ」
ピエランジェロ司祭がそう言いながら、微笑んだ。
ほのぼのとした空気の中、それをぶち壊したのは、『待て』が出来なかった大地くん。
「望月さん、お札」
キラキラしている目の圧に押され、苦笑いしながら斜め掛けバッグの中から、紙に包んでおいた守り札を取り出した。
「司祭様からいただいた紙とは違うやり方で、守り札を用意したんです」
紙を開けると、中にはプラ板に『悪霊退散⚝因果応報』と書いてある。大きさは、縦5センチ幅2センチほどのものだ。それを素材違い(透明・半透明・白)の物を3枚ほど並べた。
キャサリンのために作った物とは違い、試作用なので、思いをこめては書いていない。
これで効き目があるかは、正直自信がない。
「ほお、初めて見る文字ですな……それに、これはガラス!?」
ピエランジェロ司祭が透明な守り札を手に取った瞬間、驚いた。
「軽い!?」
「ガラスじゃありません。まぁ、素材は後で説明しますから、まずは効果がありそうかどうか、それが心配で」
私はしげしげと守り札を見ているピエランジェロ司祭を見守る。
「(まさか、漢字とは。これ、絶対、父さんだな)」
「(イナリ様か?)」
「(うん、これ、父さんの国の言葉だから)」
隣に座っている大地くんとギャジー翁は、ぼそぼそ何かを言いながら、それぞれに守り札を手に取って何やら確認しているようだ。