作品タイトル不明
第698話 五月特製お札を作ろう(1)
私は午前中の家の仕事を終わらせると、久しぶりに軽自動車に乗って、少し離れたショッピングモールに向かった。キャサリンのための守り札を自作するための材料の買い出しのためだ。
昨日、ピエランジェロ司祭から購入した守り札は、おみくじみたいに細長い白い紙が折られていて、折りたたんだままだと、人差し指くらいの大きさ。伸ばすと30センチくらいになる。
茶色っぽいインクで、異世界の文字で言葉で埋め尽くされている。タブレットで翻訳したところ、古い言い回しっぽく、悪意や呪いをはじくようなことが書いてあった。イメージとしては、狂言師のセリフ回しが聞こえてきそうな感じ。
守り札の素材については、教会で用意している専用の紙とインクがあるのだそうで、司祭から少しだけ分けてもらった。
しかし、この大きさの物を、キャサリンのロケットペンダントの中に入れるのは無理がある。
それで考えついたことがあったので、素材の買い出しに来たのだ。
ショッピングモールの駐車場に着いて、車から降りると、とんでもなく暑かった。
「なんじゃこりゃ」
思わず、そんな声が出てしまうくらいに暑い。
あちら(異世界) も夏の暑さはあるものの、ここまで体力が削られるような暑さではない。慌ててショッピングモールに入ったら、とんでもなく冷房が効いてて寒いくらいだった。
そんな中、私は手芸用品を売っている店に向かった。
私は考えた。
ピエランジェロ司祭の守り札の大きさでは、ペンダントのロケットの中に入りきれない。小さい紙に書くことも考えた。正直、同じように書くには文字数が多くて、私には無理。
そして、特別な物かと思っていた教会の専用の紙もインクにしても、『鑑定』してみれば、実は普通の物だった。
――要は、文言が正しければ、なんでもいけるんじゃね?
と思った私の頭に浮かんだのは……プラ板。電子レンジで温めると、キューッと小さくなる、アレだ。
どれだけ小さくなるかはわからないけど、それでもロケットの中には入らないだろうから、バレッタを使った髪飾りにできないか、と思ったのだ。
ただ、文言が見える状態だと髪飾りらしくない。だったら、表面に花の飾りを貼り付けたりしたらどうだろう、と思ったのだ。
失敗するのは織り込み済みなので、山ほど手芸の材料を買い込む。余ったら余ったで、何か作って子供たちにあげてもいいかもしれない。
軽自動車の後ろの席には、手芸用品以外にも買い込んだ物が山積み。
食料品もだけれど、特に多いのはお酒関係。果実酒作りのためもそうだけど、酒好きのドワーフたちだけではなく、公爵家の人々用の差し入れというので用意しておこうかと思ったのだ。
一応、グルターレ商会で買いこんだ酒もあるにはあるけど、やっぱり、 こちら(日本) で買った酒は、一味も二味も違うらしい(ドワーフのヘンリックさん談)。
運転しながら、時間を確認する。
――戻る前に、稲荷さんのところに寄れるかな。
稲荷さんも知っているかもしれないけど、ちゃんと大地くんのことも話しておいたほうがいいだろうし、キャサリンの守り札のことも相談しておいたほうがいいかな、と思ったのだ。
私はトンネルに向かう前に、キャンプ場の事務所のほうへと向かうことにした。