作品タイトル不明
第691話 精霊とのおしゃべりタイム(1)
一息ついた後、キャサリンは村の女の子たちと一緒にミサンガ作りに勤しむために寺子屋に行ってしまった。王太子にプレゼント(出来ればお揃い)したいらしい。
私は、まだ東屋でお茶をしている。その相手はエイデンと精霊たちだ。
精霊たちはおしゃべりだ。放っておいても、喋り続けている。
『もうねぇ、なんかぁ、ウザいっていうかぁ』
『そうそう、はんぱねーんだよ』
『しつこいオンナはきらわれるとおもうー』
甲高い声で話し続けているのは、キャサリンのミサンガに宿っている土と光、火の精霊たち。彼らが文句を言っている相手は、キャサリンの学校での生活で絡んでくる生徒のようだ。
どこにでも面倒な人はいるらしい。
三つの光の玉の精霊たちは、村の中は安全だから、と、キャサリンから離れて、うちの山の精霊たちと交流しているのだ。
さっきまでは、ぼそぼそした感じで聞き取れなかったのに、今ではうるさいくらいになっているのは、大きな水の精霊とともにいる、精霊の言葉がわかるハンナがいなくなったのが、大きいらしい。
『だって、あの ひと(精霊) 、つよいんだもん』
『キャサリンをまもってくれるているのは、ありがたいんだけどな』
『サリーのとこ の(精霊) とは、あいしょうがいいみたいだけどねー』
大きなため息をつく三つの光の玉の精霊たち。
うちの山にいる精霊たちに言わせると、この土地に来たことで、彼らももう少し成長するだろうとのこと。
キャサリンの精霊たちがいうには、王都は精霊にとっては居心地が悪く、ほとんど精霊の姿は見られないのだそうだ。
エイデンに言わせると、光の玉の状態でも残っていられたことのほうが、凄いらしい。
『いちばんは、さくらのきのおかげよー』
『そうそう!』
『おやしきのさくらのきー!』
なんでも、キャサリンは山から持ち帰ったサクランボの種を、王都の屋敷の庭に埋めたらしい。さすがに全部は芽吹かなかったようだけど、二カ所だけ、無事に芽吹いたのがあったそうだ。
その芽はまだ小さいけれど、屋敷の庭師がこまめに面倒を見てくれているそうだ。
『たまに、サリーがおてつだいをしているようよ』
『みずのれんちゅうが、うれしそうにはなしてた』
サリーの水の精霊たちは、サリーについていっている。
「お屋敷の庭にだって、普通に木は生えてるんじゃないの?」
『はえてはいるけど、 せいいき(聖域) そだちとは、ちがうから』
「せ、聖域……」
そう言われれば、ユグドラシルも生えていたし、元々、精霊がいた場所だ。神様である稲荷さんから買った山だから、そう言われても当然かもしれない。
「五月、人の多いところには、瘴気も多いんだ」
エイデンからの言葉に、びっくりする。
「え? 瘴気って、あの土地を黒くしたヤツ?」
「ああ。魔物の纏っている瘴気とはまた違うんだがな。人の悪意や憎悪、そういったものが漂っているようだ」
「だったら、ケイドンの街は?」
「田舎の街と王都では、人の数も違うし、悪意の規模が違うだろう」
あー、と思わず納得。
よその街を知らないけれど、私でも田舎感を感じる街ではある。
『でも、さいきん、いやーなかんじがあるのよー』
『だよな』
「え、何々」
精霊たちから不穏な言葉。
『だから、こんなにちいさくなっちゃって』
『もうちょっと、おおきかったんだけどな』
またまた、キャサリン、面倒なことに巻き込まれている模様。