作品タイトル不明
第682話 美少女キャサリン降臨
馬車から駆け寄ってくる美少女、キャサリン。まるで光を纏っているかのように、キラキラした笑顔で、私のほうに向かってくる。
実際、精霊たちが嬉しそうに彼女の周りを飛んでいるから、光っているように見えるのはあながち間違いではない。精霊が見えている人限定だろうけど。
今年で確か12歳のはずなんだけど、思いっきり私に抱きついた彼女の頬が、私の頬に触れた。
「お、大きくなったね」
「ウフフ。お久しぶりです」
去年会った時も、背が伸びていたけれど、私よりも小さかったし、まだ子供っぽかったんだけど、今、目の前に立っている彼女は私とそう変わらない……いや、若干、彼女のほうが背が高い気がする。
緩やかなウェーブの艶々の金髪が肩より伸びて、興奮しているせいか、白い肌に頬が薄く色づいているし、体型もすっかり女性らしく見える。
――もう美少女から、美女になりかけていませんかね?
さすがに田舎に来るだけあって、シンプルな紺色のワンピースだけど、なんだか見覚えがあるような。
「あ、わかりました?」
ニコニコ笑いながら、キャサリンはスカートをつまみながら、くるりと回る。
「前にサツキ様にいただいたワンピースを元に、今の体型に合わせて作ってもらいましたの」
そうだ。キャサリンたちが、立ち枯れの拠点で生活していた時に着ていた、シンプルな紺のワンピースに似ているのだ。
当時は汚れてもいいように、あちら【日本】で買った安いワンピースだった。
でも、そのデザインを気に入ったキャサリンは、お屋敷に戻ってから、似たようなデザインの服を作ってもらったらしい。
違いがあるとすれば、よく見ると、白い襟の端に綺麗なレースが、スカートの裾の部分には、緑と白い糸で草花の美しい刺繍が縫われていること。
ミモレ丈のワンピースのせいもあってか、より大人びて見えるのかもしれない。
ニコニコしていたキャサリンは、私の背後にいたエイデンに目を向けると、スカートをつまんで、ペコリと頭を下げた。これは、いわゆるカーテシーってやつか。初めて見た。
「エイデン様、お久しぶりでございます」
「キャサリン、俺もサツキ同様に、礼儀など気にする必要はない」
「ありがとうございます」
ニコリと嬉しそうな笑みを浮かべるキャサリンに、私たちも笑みを返す。
「今日はサリーは?」
「はい。別の馬車に乗っているはずです」
そう言ってキャサリンが後ろを振り向くと。
「キャサリン、いきなり走り出すんじゃない」
キャサリンを窘める男性の渋い声がした。
声がしたほうに目を向けると、左足を引きずりながら、杖をついて、ゆっくりとこちらに歩いてくる老人の姿があった。
きっと彼がキャサリンのおじいさんだろう。
エイデンほどではないけれど、ゴーゴリさんよりも背の高さで、なかなかガッチリした体型をしているようだ。顔つきは、以前会った、ド定番イケメンなエクスデーロ公爵よりも、かなり強面な感じだ。
「ああ、お祖父様、ごめんなさい」
キャサリンは慌てて老人のほうへと駆け寄り、彼の杖を持っていないほうの腕を支えながら、一緒に私のほうへとやってきた。