作品タイトル不明
第678話 エイデンの家を建てよう
私の隣に立っているエイデンは、超ゴキゲンだ。鼻歌まででる始末。
なぜなら、今、私はエイデンの家を『タテルクン』で建てようとしているから。
あまりのエイデンの落胆の様子に、私が建て直すよ、と言ったらペカーッという音がしそうなくらいの笑顔に変わったのには笑ってしまった。
話を聞くと、前の城は本当に古い物だったらしく、寝るためだけに使っていたそうだ。
それも、寝ていたのは、この城の中の一番広かった謁見の間だそうで、古すぎて絨毯もカーテンも残っていない、石の床に龍の姿で直に寝ていたらしい。
――そんなこと、早く言ってよ!
思わず、そう叫びそうになった私。そこは人との感覚と違うのかもしれないけど……しれないけど! なのだ。
せっかくなので、うちの山のほうでログハウスを新たに建てようかとも言ったのだけど、エイデン曰く、隣の山にあるダンジョンのことを考えると、今の場所のほうがいいらしい。
このダンジョンは、エイデンの漏れ出る魔力の影響を受けて、今でもじりじりと成長しているらしい。どんだけ濃いのか、は考えないことにした(遠い目)。
これでエイデンが違う場所に行ったら、その近くに新たなダンジョンが生まれてしまうかも、なんていうことを言いだすから、今までの場所に新しく作ることにしたのだ。
ちなみに、今あるダンジョン、エイデンは一度、攻略を終えているのだけれど、成長していると言った通り、階層がドンドン深くなっているそうだ。
ただ最近は、村人たちとのダンジョン内での狩りや収穫が楽しいそうで、攻略は進んでいない。
「それじゃあ、どれにする?」
私はタブレットの画面をエイデンに見せる。『タテルクン』の建築可能な建物が、ずらりと一覧に表示されている。
エイデンに、寝るときはドラゴンの姿のほうがいいのか確認すると、そんなことはなくて、人型でも問題はないらしい。
だったら、前の城ほど大きな物でもなくてもいい、ということになった。
それでも、城の残骸を悲しそうな顔で見ていたエイデンを思うと、少しでも城の石を再利用するような形にしたほうがいいかな、とも思う。
ということで見つけたのは、石造りの洋館タイプ。
大きいのは、まさにお城のようなのもあるけど、エイデンが人型で生活する分には、そこまで大きいのはいらないという。ノワールはどうするのか、聞いたら、すっかり忘れていた模様。
いまだに子供の姿なのを伝えると、後でなんとかしてくれることになった。その『なんとか』がどうなるのかが、今から凄く心配。
「これがいいな」
エイデンが選んだのは、三階建ての洋館。エントランスとベランダが大きいタイプ。お城とは言わないまでも、お屋敷って感じ。
材料は『収納』にあるのでいけそうなので、エイデンの望み通りにする。ちなみに、城の残骸は、すでにまとめて『収納』に入れてある。
「それでは、ポチッとな」
ズドンッと現れた洋館に、エイデンは「おおおお!」と歓声をあげると、すぐさま玄関の大きなドアを開けに走っていった。
私も彼の後を追おうとしたのだけれど。
『さつき、さつき~』
風の精霊が声をかけてきた。
「ん? どうした?」
『むらのほうに、エルフたちがむかってるみたいだよ?』
「エルフ?」
『そう、ばしゃがいっぱい~』
「あ、もしかして、カスティロスさんたちかな」
『わかんなーい。でも、にもついっぱいだった~』
それはもう、カスティロスさんたち、グルターレ商会しかないだろう。
「エイデン~!」
「なんだ~!」
二階のベランダから顔を出すエイデンは、嬉しそうな笑顔だ。
「グルターレ商会が来てるみたい。村に戻るよ~」
「何! だったら、俺も!」
そう言って、ぴょーんと飛び降りてきた。
かなりの高さなのに、軽々と飛び降りるエイデンに、大丈夫とわかっていても、ちょっとヒヤッとした私であった。