作品タイトル不明
第651話 王都からの手紙
ログハウスに戻り、リビングのテーブルに手紙を置く。
タブレットでサインを『翻訳』してみる。綺麗な流れるような文字は、英語でいうところの筆記体なのかもしれない。そこには『キャサリン・エクスデーロ』と書いてあるらしいことがわかった。
「ちょっと、これは控えておこう」
せめて、キャサリンの名前くらいは覚えておきたい。
慌ててバッグの中を探して、なんとかボールペンを見つけることができた。色はブルーブラック。
最近、買い出しをする時のメモ用にと100均でグリーン系のブロックメモをキッチンカウンターの端に置いているので、それを手に取り、キャサリンの名前を書き写す。
――ブロック体の文字も、後で司祭様にでも聞いてみよう。
封蝋を剥がして中を見ると、手紙とともに一回り小さな封筒が入っている。この小さいほうが前公爵からのものだろうけど、今はキャサリンからの手紙が優先だ。
紙の質はさすがにコピー用紙ほどの薄さや滑らかさはないものの、だいぶ上質な紙なんだと思う。
私が知っているのはグルターレ商会で売っていた紙で、もっと黒ずんだ、藁半紙みたいな紙。数枚でいいお値段をしていたのを覚えている。
「さて、タブレットで『翻訳』っと」
タブレットの画面には、キャサリンの文字が日本語に変わって、ちょっと感動。
手紙の内容は、ヴィクトルさんから聞いた内容とほぼ同じだった。
幼馴染のお友達(伯爵家のお嬢さんらしい)以外の同い年の貴族のお友達ができたことや、王太子殿下との惚気話とか、サリーは頑張ってるという話だったりとかで、読みながらニヤニヤしてしまった。
そして、本題には学園の夏休みに遊びに行きたいという内容が書かれていた。
夏休みの前半は王家の避暑地に行って、その後に公爵領に立ち寄り、この村に向かいたいとのこと。時期的にはあと一ヶ月後くらいを予定しているようだ。
ちなみに、今回は王太子殿下は不参加。王太子は今年学園を卒業予定なのだそうで、上級学校に進学するために最終の卒業試験の勉強をしなくてはならないらしい。どこも受験勉強は大変だ。
……その代わりに、前公爵がやってくるらしい。
思わず、えっ!? となって、中に入っていたもう一通の手紙に目が行く。
――これはもう、夏休み、孫と遊びに行くよー、っていう手紙よね。
遠い目になりながら、もう一通に手を伸ばす。
封筒のサインは、キャサリンのものに比べると力強い感じ。達筆というのは、こういうのを言うんだろう。
手紙の中身を確認すると、キャサリンたちを助けたことに対する感謝の言葉と、予想通りに、夏休みの訪問に関する内容だった。
――やっぱりかぁ……。
前回は時間がなかったから、取り急ぎで作った宿舎だったけど、今回はそういう訳にもいかないだろう。キャサリンやサリー、前回同行してた人たちは何とかなるかもしれないが、前公爵相手に、あの建物ではマズイ気がする。
せっかくの機会だし、イグノス様から貰った機能(部屋の追加)もあるし、使い切れないほどのKPもある。
「ちょっと家のリニューアルをするのもいいかもね」
そう呟きながら、再びキャサリンの手紙のほうへと目を向けた。