作品タイトル不明
第621話 エイデン温泉(仮)に到着
古龍の姿のエイデンに馬車を抱えてもらって飛ぶこと、約2時間。
私たちは無事にエイデンのいう温泉のある場所にやってきた。
今回の参加者は私の他に、ガズゥ、テオ、マルの他に、孤児院からは年長組のベシーとリンダ、兎獣人のニコラとランドの8人。通常なら6人乗りのところだけれど、子供が多いのでそれほど狭くは感じなかった。
飛んでいる間は、男の子たちは窓の外に夢中になっていて、女の子たちは私と一緒に後方でお茶を飲みながら、おしゃべりをしていた。安定した飛行のおかげで、揺れを感じさせないのは、さすがだった。
「……へぇぇぇ」
硫黄の香りが漂う荒地に、私たちは降り立った。
周辺は育ちの悪そうな木がまばらに立っていて、不毛の土地、って感じだ。北のほうにはかなり標高のありそうな山が見える。噴煙があがっているところを見ると、火山なんだろう。
そして目の前に建っているのは、平屋の切妻屋根? の大きな建物。たぶん、これを建てたのがドワーフたちなのだろう。
そんなに時間があったわけでもないのに、ここまで作るドワーフの力に感心する。
周囲は背の高い石壁で囲まれているようで、中までは見えない。これはエイデンがやったんだろう。
「でけー」
「でけー!」
「……でけー」
ガズゥたち仲良し3人組は、同時に驚きの声をあげている。
「だろう?」
なぜか自慢気に答えているのはエイデン。あんたが作ったわけじゃないでしょ、とツッコミたいところだけれど、子供たちの手前、グッと口をつぐむ。
「ほら、ドアを開けて見ろ」
「え、私?」
エイデンに促されてドアを開けてみると、ちょっとした土間があり、その先に大きな部屋が広がっている。これは、靴を脱いであがるようだ。ヘンリックさんの家は靴のままだったので、これは大地くんの知識が反映されているのだろうか。
私は靴を脱いであがってみると奥に二つのドアが見えた。そのドアには、何やら大きな文字が書かれている。
「あ、もしかして、男湯と女湯に分けてあるの?」
寺子屋に何度か顔を出していることもあって、さすがに、『男』と『女』の文字は私も覚えている。
「当然だ!(五月の裸を男どもに見せるわけがないのだ!)」
「さすがだね。じゃあ、こっちが『女湯』かな」
ドアを開けると、ちゃんと脱衣所もある。何気にロッカーまで用意してあるとは、やるな、エイデン。
脱衣所の先のドアを開けると、そこは。
「露天風呂かい」
広々とした青空に、黒光りした岩を使った床、白濁したお湯。大人だったら10人くらいだったら余裕で入れそうな広さがある。子供たちなら、泳いでしまいそうだ。
ほえぇぇぇ、と感心して見ていると、エイデンが背後に立った。
「どうだ? 大地に聞きながら用意したんだが、どうだ?」
「いいねぇ……あとは身体を洗うところとか、サウナなんかもあったらいいかも」
私はあまり入ったことはないけれど、あちらではサウナ好きな人も多い。ハマる人はハマるだろう。
「なるほど? で、さうな?とはなんだ?」
「あ、えーと」
簡単にサウナの説明をすると、ふーむ、と考え込んでしまった。
上流貴族に入浴の文化があったのだから、サウナに似たようなモノがあってもいいと思うのだけれど、エイデンは知らないようだ。
「あ、あと、足湯があると嬉しいかも」
「あしゆ、とな」
「そう、座りながら足だけ温泉につかるの。身体がポカポカになるのよ」
「ふむ。それだったらすぐに出来そうだな」
「とりあえず、せっかく来たんだから、子供たちと入ってみてもいい?」
「おお、そうだった。待たせたままだったな」
エイデンはニコッと笑って、外へと向かっていった。
――くっ、イケメンスマイルが眩しい!
何かに負けた気がした私なのであった(何かがなんなのかはわからない)。