軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第601話 新しい魔道具『オーブントースター』

山の中の桜並木に、毎日のように子供たちがさくらんぼ狩りにやってきていたけれど、そろそろ落ち着いてきた。その代わりに村のそばの山裾に沿って北に伸びる桜並木のさくらんぼが実り始めていて、村中でさくらんぼ狩りが始まった。

「いやぁ、甘くて美味しい~!」

「ナニコレ、美味しすぎるっ!」

村人たちの中に紛れて、レィティアさんとディアナさんも、さくらんぼを採りまくっている。

「おい、梯子持ってこいっ!」

「ちょ、危ないですって!」

ドワーフたちは、皆で大騒ぎしている。

果物狩り自体、楽しいイベントだし、食べ放題にしているので、皆が喜んでくれているのを見るのも、私も嬉しい。

その私は、ちょうどギャジー翁の家に来たところなんだけど……もしや、あの中にギャジー翁たちも参加してたりするんだろうか。

少し心配しながら玄関をノックすると、しばらくしてヴィッツさんがドアを開けてくれた。

「サツキ様」

「こんにちは。昨日、子供たちが教えてくれたんですけど」

実は昨日のさくらんぼ狩りをしに来たルルーが、ギャジー翁からの伝言を言付かってきてくれたのだ。

「ええ、出来てますよ」

ニッコリと笑うヴィッツさん。

私は家の中に入れてもらうと、ギャジー翁の作業部屋へと案内してもらった。

「師匠、サツキ様がいらっしゃいました」

「おお、いらっしゃったか」

言葉遣いはおじいちゃんなんだけど、見た目は相変わらずイケメンエルフ。銀色の長い髪を一つに縛っている。

しかし、作業中だったのか、格好はなぜだか、だぼっとした感じの紺色のつなぎの作業服。どこで手に入れたんだ。頭に浮かぶのは稲荷さんの顔。

「どうも。あの、ルルーから出来たって聞いたんで来たんですが」

「ええ、ええ。出来ましたよ。『オーブントースター』」

「おおおっ」

実は大地くんがいる間に、『電子レンジ』が難しければ、『オーブントースター』はどうだろう、という話をしていたのだ。

普段、トーストといえば、魔道コンロでの網焼きか、ホットサンドメーカーを使うんだけど、これだと魔道コンロ1台が埋まってしまうのだ。それにオーブンの機能があれば、グラタンや小さいピザも気軽に作れる。

一応、敷地には小さな石窯があるにはあるが、自分一人の食事で、となると面倒に感じてしまって、使うのはもっぱら、村の宴会用にピザを用意する時や、クッキーやパン等を大量に焼く時くらいなのだ。

残念ながら大地くんが帰ってから完成の連絡が来たわけだけれど、それを知ったら、悔しがりそうだ。

さて、肝心の『オーブントースター』。 作業台の端に置かれている銀色の四角い箱がそれらしい。いわゆるオーブンレンジのサイズよりも、若干大きめかもしれない。

扉にはのぞき窓がついていて、その上には取っ手がついている。その取っ手を掴んで引っ張ってみると、扉が下へと下がって中が見える。

「……思ったよりも広い」

食パンが4枚くらい並べて置けそうな大きさに、ちょっと感動。

再び扉を閉じて、今度はその下に並んでいる2つの丸く飛び出た物をチェック。タイマーのダイヤルみたいな物かと思ったら、1つは火力、もう1つはやっぱり時間を設定するものだった。

何やら文字が表記されているんだけれど、残念ながら私には読めず。真面目に文字を勉強していなかったツケがここにきて現われた。

電源代わりの魔石はダイヤルの隣、蓋を開くと、引き出しが現われて、その中に赤い色の魔石が3つほど並んでいた。

「一応、動作確認は済んではいるんですが、実際の調理ではどうなるのかわからないので、サツキ様に実際使って見て頂いた方がよいかと思いまして、お声掛けさせていただいたんです」

二コリと笑みを浮かべるギャジー翁。

そう言われてしまえば、私もちゃんと使ってみたい。

私はタブレットの『収納』の中に何か入っていないか、探しはじめた。