作品タイトル不明
第599話 果物三昧の時期が始まる
青い空に、山の木々の緑が鮮やかに映える。
ログハウスの敷地に植えた桜では、さくらんぼの実が生り始めている。小さな実も多い中、真っ赤になっている実を手に取る。完熟しているのは一粒、一粒が大きい。500円玉くらいありそうで、これをさくらんぼと言っていいんだろうか、と思ってしまう。
「うーん、甘いっ」
一口齧ると、酸味よりも甘味がじゅわーっと広がって、幸せな気分になる。
敷地の中の桜の木は比較的早めに実が生るようで、桜並木のほうはまだ赤くはなっていないようだ。
『わたしにもちょうだい』
足元にいたマリンが立ち上がって、私の足に縋りついてる。
今日は魔王の卵は抱え込まずに、玄関先で日向ぼっこしていたようだ。そろそろ孵ってもいいんじゃない? と思うのだが、まだピクリとも反応しないらしい。
「はいはい、大きいけど食べられる?」
『大丈夫よ』
大きな一粒を彼女に渡すと、ムニャムニャ言いながら食べている。ちょっと可愛い。
再び桜の木に目を向ける。
――赤くなってるヤツは落ちないうちに、さっさと集めないとね。
目につくところに生っているのをドンドン採っていくと、あっという間にビニールのストックバッグ(Lサイズ)はいっぱいになった。上のほうには、まだ赤い実はいくつか残っている。あれは風の精霊にでもお願いすれば採ってくれるかもしれない。
――これ、山の桜並木のも集めたらストックバッグ足らなくなりそう。
敷地の桜の木は、まだまだ赤くなっていない実がいっぱいある。タブレットの『収納』にしまいこんでおくためにも、小分け用の袋はないとダメだろう。
それに、生で食べるだけではなく、ジャムやお酒にしてもいい。
お酒といえば梅もそうだ。まだ小さいけれど、梅の実も生り始めている。去年よりも量が多そうなので、梅酒や梅ジュースもたくさん作れそうだ。
去年作った梅酒や梅ジュースはすでに飲み切っているので空いた瓶は『収納』に入っているはず。
――氷砂糖とホワイトリカーを買っておかないと。
ジャム用の小分けの瓶も足りないかもしれない。ママ軍団にお裾分けしたジャムの空き瓶などは戻してもらったけど、そんなに量はない。
「あ、イチゴ!」
ジャム用の瓶で思い出した。
そういえば、2、3日前くらいに、温室に移動させたイチゴも生っていると、マカレナとブルノが牛乳を持ってきてくれた時に言っていた。
そのまま放置して傷んだらもったいないので、マカレナたちに摘まんでいってもいいよ、と言っておいたけど、どれくらい生っているのか、確認しにいかないとダメだ。
他にも、果樹園のブルーベリーやマルベリー(桑)ももうすぐ時期だし、立ち枯れの拠点ではびわやすもも、杏も実を植えてある。今年は実が生っていると聞いているので、もう少ししたら食べごろになるだろう。
もう一袋のストックバッグを取り出し、手に届くところのさくらんぼを採っていく。
――色々買い出しに行かないとダメだわね。
果物の時期が始まると、村の住人たち総出で果物狩りの時期も始まる。
そう思ったらワクワクしてきた。