作品タイトル不明
第546話 強いエイデン、牧場に向かう五月
護衛の冒険者たちと村の若手冒険者たちの訓練が終わると、今度は護衛たちはエイデンに声をかけてきた。
彼がガズゥたちを相手に練習をしているのを見たことはあるけれど、本格的に戦うところは見たことがなかったので心配だったけれど、まったくの杞憂だった。
「うわっ」
「ほれ、遅いぞ」
「くっ!」
今、相手にしてるのは、熊獣人のマックスさん。先ほどまでは余裕だったマックスさんの顔が、真剣なものに変わってる。手にしているのが練習用の木剣でよかった。マックスさん、血は出ていないものの、すでに何か所もエイデンに叩かれてるのだ。
「やっぱり、エイデン様は凄いですね」
私の隣に立って、汗を拭いながら感嘆の声をあげるのはドゴル。
うんうん、と頷くケインとザックスの目はキラキラ輝いている。
はっきりいって、剣の動きなんて私には見えない。
――素人の私でも凄いって思うんだもんねぇ。
子供たちや冒険者たちの声援が盛り上がりすぎて、他の村人や商売で来ているはずのエルフたちまで集まってきた。 特に村のダンジョンに潜っている中年層の男性たちの目は、子供に戻ったみたいだ。その中にはネドリの姿もある。
「次は俺だっ!」
声をあげたのは護衛の冒険者、虎獣人のキャシディさん。
……獣人たちは基本、戦うのが好きな模様。
剣の訓練で盛り上がっている寺子屋の前の広場から、私は品物が並んでいる荷馬車の方へ戻った。皆がエイデンたちを見に行っているおかげで、人が減ってゆっくり見られる。
残念ながら見慣れた商品が多く、目新しい物は見当たらない。
――こんなもんかなぁ。
一通り見たので、私はゲハさんとヨシヒトさんの姿を探したけれど、見当たらない。すでに牧場のほうに移動したのかもしれない。
私は村の畑の近くに作った雨よけの屋根のある道へと向かう。『収納』にしまっておいたスーパーカブに乗って、牧場のほうへと走らせると、ものの数分で牛たちの後ろ姿と、牛追いをしている青年の後姿が見えた。たぶん、ヨシヒトさんと一緒に来ていた人だろう。
――これ以上近づくと、バイクの音で驚いちゃうか。
私はスーパーカブのエンジンを止めるとすぐに『収納』して、牛の後を追いかける。
前のほうにいたのに私のことに気付いたのか、ゲハさんが牛たちのほうにわざわざやってきてくれた。
「ああ、よかった。後で、お声かけしないとと思っていたんです」
「はぁはぁはぁ、うん、牛たちの寝床、用意しないと、と思ってっ、はぁ……」
今ある牧場にはすでに5頭いて、中でも子牛だった子たちも、すっかり身体が大きくなってしまっている。
それに比べたら小型のソゴワ6頭、牧場の敷地の中に放す余裕はあるけれど、厩舎の中に新たに6頭入れる余裕はない。
それに、ヨシヒトさんたちの住む家も用意しないといけない。
ヨシヒトさん一家は、ヨシヒトさん4人家族と、ヨシヒトさんの弟の3人家族、ヨシヒトさんの妹という構成だそうだ。
「とりあえず、ヨシヒトさんたちに牧場を見てもらってから、彼らの家のことを考えましょう」
「お願いします」
美味しいチーズが手に入るなら、新しい家くらい、ちゃちゃっと作ってしまおう、と思ってしまった。