作品タイトル不明
第545話 子供たちの買い物と、護衛の冒険者たち
グルターレ商会が来ている間は、村中がまるで祭りのようにかなり賑やかだ。
買い物だけではなく、村の商品の買い取りなどもあって、大人たちはエルフの商人たちとのやりとりに燃えている。
特に、うちの山の中にあるダンジョンでとれるドロップ品は珍しいモノがあるらしく、カスティロスさんも目を爛々としながら交渉している。
他にもドワーフたちの作る武器や、金属製品、何気にアビーのアクセサリーなんかも高値で取引されているそうだ。
さて、その間子供たちはどうしてるかというと、寺子屋の前に集まっている。
そこでは子供向けの商品(女の子向けのアクセサリー、玩具の武器)を用意しているエルフがお店を開いているからだ。
子供たちの少ないお小遣いでも買えるようなのを用意しているあたり、さすが商人である。
私も覗き込んで見ているけれど、なんとなく縁日で見るような可愛らしいアクセサリーや武器が並んでいて、ほのぼのする。
「これって、リボンですか?」
「ええ。そうですよ」
ピンクや赤などの華やかな色ではないけれど、薄い桃色や緑、黄色と、いわゆる草木染のような色合いの幅広のリボンが木に巻いている状態で並んでいる。
生地はシルクのような艶々ではないけれど、肌触りは悪くない。
このままだとシンプルすぎるけど、ちょっと刺繍をしたりレースを縫い付けたりしたら、けっこう可愛いモノになりそうな気がする。
私は薄桃色と浅黄色のリボンを、雨の日の手仕事にでもしようと買ってみた。
「サツキ様は、これを買ったの?」
「そうよ」
「えー、じゃあ、わたしもー」
「わたしも、わたしもっ!」
女の子たちのキャッキャウフフという声がする一方で、カンカンカンッと木剣がぶつかる音も聞こえてくる。
寺子屋の前の広場で、護衛の冒険者たち(Bランクパーティ『焔の剣』)が、村の若手の冒険者、ドゴル、ナード、 孤児院の子供たちの中でも 冒険者登録しているマークやケイン、あとザックスが剣術を教えてもらっているのだ。
元々、若手の冒険者たちが村に戻ってきた時になど、子供たち相手に剣術を教えてくれていたのだけれど、普段は子供相手だから、思い切りというわけにもいかない。
今回のような熟練パーティとの練習は、彼らの為になるに違いない。
「ドゴル兄ちゃん頑張れ!」
「がんばれー!」
「そこー!」
まだ武器を振り回すような年ではない男の子たちが、声援を上げる。中でもガズゥが一生懸命に応援しているようだ。
「おっ、お前、俺と似たような名前なんだな」
「!?」
『焔の剣』のリーダー、人族のドゴールさんが嬉しそうに剣を振り回す。一瞬驚いたものの、すぐに体勢を立て直すドゴルくんが、凄い。
そもそも獣人の方が身体能力が高いのだから、その相手が出来ているドゴールさんも、相当凄いんだと思う。
感心して見ていると、いつの間にかエイデンがやってきて私の隣に立っている。
「あら、エイデンも買い物?」
「いや、五月の気配がしたから来てみただけだ」
そう言ってチラリと私の右手のバングルを確認して、何も言わずに口元をもにょっとしているエイデン。ちょっとだけ、可愛いと思った。