作品タイトル不明
第540話 梅の花と、エイデンからのプレゼント
雨よけの屋根は2日かけて村まで繋げることができた。
牧場と村の間は、ゲハさんが台車を引くというので、道幅を広めに設定して屋根を建てた。
ついでに轍で凸凹になった道も『整地』したので、少しはマシになったと思う。あとは石畳に変えられればいいんだけど、石はまた今度、となった。
なぜなら、今、立ち枯れの拠点では梅の花が満開なのだ。
「今年は、見事に咲いてるねぇ」
私はハーブ畑の前にブルーシートを敷いて、孤児院の子供たちとのんびり休憩中。
白い梅の花がたくさん咲いている中、私は子供たちと一緒にハーブのお世話をしているところだ。
「去年も咲いてはいたけど、こんなにたくさんではなかったもんなぁ」
元々、立ち枯れの拠点周辺は、ログハウスのある山の麓、ブラックヴァイパーによって瘴気で汚れた土地になっていた。それを、梅干しの種から育てた梅の木によって浄化してもらったのだ。
今ではすっかり瘴気の『し』の字もなく、最初は瘴気に負けて全滅したハーブもしっかり育って採り放題状態になっている。ブルーシートの端には、みんなで採ったハーブ(主にローズマリー)が山盛りになっている。
――桜並木ほどには、豪華な感じではないけど、風情があっていいわ。
私は緑茶、子供たちは紅茶にハチミツをいれたものを飲んでいる。
「さつきさま、あれが梅シロップになるの?」
9歳のカロルが、1歳のローを背負いながら聞いてくる。
かなり肉付きがよくなったロー。そんな彼が元気にジタバタしているので、下ろしたら? と聞いたのだけれど、カロルには首をふって断られてしまった。
「そうよ。春から夏に変わるころ、緑色の実がなるの。それを使って梅シロップを作るのよ」
「早くならないかなぁ」
「美味しいもんね!」
キャッキャと他の子供たちと一緒に盛り上がる。
――梅シロップだけじゃなく、梅酒もたくさんできそうだし。ああ、梅干しもいい!
頭の中に梅干しが浮かんで、無意識に口の中に涎が溢れてくる。
「あ、エイデン様だ」
「エイデン様~!」
子供たちの声で、村のほうを見ると、にこやかに手を振りながらやってくるエイデンの姿が見えた。
「どうしたの?」
エイデンだったら空からでも飛んできそうなのに、今日はわざわざ村からやってきたのだ。
「五月!」
「う、うん?」
「これ、プレゼントだ!」
何やら立派な木箱を私に差し出すエイデン。
大きさの感じでいうと腕時計でも入っていそう。残念ながら、ここに腕時計はないのは知っている(グルターレ商会情報)。
「えー、なになに~?」
「あけてみせてください!」
子供たちが囃し立てるので、私はよっこいしょと立ち上がり、エイデンからのプレゼントなる木箱を受け取る。
「……私、プレゼントもらういわれはないんだけど」
「俺があげたいだけだから。まぁ、みてみて」
自分でそうは言ったものの、人からプレゼントを貰うっていうのは単純に嬉しい。
「ありがとう」
ちょっと照れながらそういうと、私は木箱を開けてみた。
中にはシルバーの色合いに色んな色の石が埋め込まれたバングルが入っていた。
「え、なんか凄い」
「石は俺が採ってきたヤツ、これをアビーに加工してもらったんだ」
そう言ってバングルを取り出し、私の右の手首にはめた。
――うわ。サイズが勝手に変わった!?
いきなりのサイズ変更に固まる私。
「外したくなったら、自分で取ろうとすれば勝手にサイズが変わる」
エイデンの言葉にならってやってみると、本当にサイズが元に戻った。
私は何度か付けては外しを繰り返し、大きくため息をついた。
――さすが。異世界クオリティだわ。