作品タイトル不明
第539話 ホワイトウルフの赤ん坊
ホワイトウルフの赤ん坊は合計6匹いた。
咥えて持ってきた子2匹と、ウッドデッキで寝ていた子が3匹、もう一匹はホワイトウルフたちの間に埋もれていた。よく無事に生きていたって思ってしまった。
――三つ子の赤ん坊の時より小さい!
ウノハナ・シンジュ・ムクの三匹は、ログハウスの敷地の厩舎で生まれたけれど、同じような時期にノワールも生まれてしまって、厩舎には長くいなかった。おかげで、あまり彼らの赤ん坊時代を味わえなかった。
ちなみに、両親が巨体のせいか、当時の三つ子はすでに豆しばくらいの大きさだった。
それに比べて目の前の子たちは、両手で持てるサイズなのだ。くーくーと鳴いてる様子が可愛すぎて、身悶えする。
「かわいいねぇ」
『かわいいけどさぁ』
『やねはいいの?』
「はっ!」
ホワイトウルフたちに囲まれながら、赤ん坊をなでなでして堪能していた私に、風と水の精霊が声をかけてきた。
可愛すぎて、時間があっという間に過ぎていた模様。
「くっ、離れがたいけどっ」
なんとか立ち上がり、ドッグランの中を見渡す。
――これからも増えていったりするのかな。
今日はたまたま、母ウルフが見せてくれたから赤ん坊のことを知ることができた。当然、これからも生まれてくる子がいるかもしれない。
「これは厩舎を増やしといたほうがいいのかな」
後でビャクヤにでも相談しようと思いながら、ドッグランを出る。
ここからは、毛梳きチームの村人やマカレナたちの往来で踏み固められた道を中心に雨よけの屋根を作っていく。幅は小川のところよりも少し広め。
水浴び場を過ぎ、温室を過ぎ、しばらく歩いて牧場に到着。私のあとを数匹のホワイトウルフたちがついてきている。
「サツキ様!」
「やっほー」
ちょうど外に出ていたブルノが、私に気付いて牧場から出てきた。
「わー、すごい!」
「これで雨の日も少しは楽になるかなー、と思って」
「すごい!すごい!」
猛ダッシュでドッグランの方へ走っていったかと思ったら、すぐにUターンして戻ってくる。そのあとをホワイトウルフたちも追いかけていて、楽しそうだ。
――元気だなぁ。
そう感心していると、牧場の小屋からマカレナが現れた。
「ブルノ、どうしたの……って、サツキ様!?」
「やほやほ~。ゲハさんは?」
マカレナたちとともに牛の面倒をみてくれている獣人のゲハさん。すでに、マカレナたちとは祖父と孫みたいな関係になっている。
「今日は牛乳の日なんで、村にいってます」
以前はそれほど飲まれなかったのに、最近はバターを作ったり、妊婦が増えたせいで台車を使わないと運べないまでになったとか。
「ゲハさん、元気だねぇ」
「余裕で台車を運んでいくんですよ。獣人って凄いですね」
村のほうへ目を向ける。
といっても、ここからは林が広がっているので村は視界に入らない。
――ここまででいいかと思ったけど、村までの道も作ったほうがいいかも。
よーし、と気合が入る私なのであった。
* * * * *
ドッグランの母ウルフたちの会話。
『子供たち、よかったわねぇ』
『サツキ様がここに来てくださったなんて』
実はドッグランの中にいるのは、妊娠しているウルフたちと、その面倒をみている年老いたウルフたちだったりする。
『精霊たちの言葉通りなら、これで、病気知らずで大きくなれるわ』
ホワイトウルフの中でも精霊の声が聞こえる老ウルフの言葉に、周囲のホワイトウルフたちも頷いている。
『そうでなくても、ここでなら、安心して育てられるでしょう』
『そうね』
五月によって建てられた厩舎とドッグランには、悪いモノは近づけない。
――この子たちも、ハク様やユキ様のように立派に育ちますように。
母ウルフは願いをこめながら、ペロリペロリと赤ん坊を舐め続けるのであった。